「生きる」〜七日目の決意

奇跡

　

　そして次の日の朝だった。爺ちゃんは病室の床に散らばっている鶴をかき集めた。爺ちゃんは残りの百四十八羽の鶴を
たたった一つの手で作り上げた。千羽鶴が完成した。
　しばらくすると病室にある人が入ってきた。それは爺ちゃんの弟とお父さんのお姉さんだった。二人は拓也にあげるつもりをしていた、誕生日プレゼントを持ってきた。爺ちゃんは入院してる事は言っていたが、亡くなった事はまだ言っていなかった。爺ちゃんは僕が生き返ると信じていたからだ。
　爺ちゃんは手を握り締めていた。しばらくすると僕の指が動いた。それに爺ちゃんと叔父さんとお姉さんは驚いて立ち上がった。爺ちゃんは慌ててナースコールを押した。
　医者はそれを錯覚だと言っていた。亡くなった人に良くある事みたいだった。でも爺ちゃんは僕が生き返ることを信じている。僕はその期待に応えてあげたかった。
　しばらくすると僕は何かが見えた、それは病室の天井だった。僕は目が開いたのだ。僕は蘇生した。みんなは寝ていた。小声で「爺ちゃん」と呼ぶと爺ちゃんが「拓也」と寝言で言った。叔父さんは目を覚ました。僕と目があった。
　叔父さんは僕が蘇生していた事に腰を抜かして、慌てて「拓也は生きてるぞ」と言いながら再びナースコールを押した。みんなは泣いて僕に抱きついてきた。動きがなかった蝉は「カサカサカサ」と音を立ててカゴの中で動き回った。
　医者が来て、医者は「心臓が止まって亡くなった方に低確率で起こることです。」と医者はいった。再びドナーを待つ事にした。僕は八日目を生きていた。奇跡のようだ。
　僕はドナーをずっと待ち続けた。