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冒険者の血統
帝国からのお誘い
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「彼がクラウンの血統を持つ者か?」
帝国軍の中の一人。身なりの良い老人がヘリオスに訊ねた。
「ええ、間違いなく。しかもクラウン本人の息子なのです、ジュペルグ侯爵。クラウンはプシュケスフィアで最近まで生きていたという話ですからね」
ヘリオスの言葉に、ジュペルグと呼ばれる老人は驚いた顔を見せた後。満足した様に頷いた。
「でかしたぞ、ヘリオス────さて。シュウ・セイラル。そなたは帝国が責任を持って保護する。勿論、爵位も授けると皇帝陛下が仰っておる」
「随分と俺の出世は早いな。そのままポンポンと皇帝にまで登り詰めてしまったりしてな」
なんて冗談を言いながらも、考えてみれば結構、条件は悪くないのではないか? と、思う。
勿論。何らかの裏があるのは分かっているが。ジュペルグという男はなかなか強者のようで、そんな俺の冗談にも全く動じない体で返してくる。
「さて。それは、君の今後の働き次第だよ。もっとも君の仲間の命がかかっているのだから、断る事は出来ないだろうがね。なあに、裕福な暮らしは約束されているのだ。君の未来は上々だよ」
やはり人質にされているのか。だが、この態度を見てると、俺が下手な事をしなければ親父達も大丈夫そうだ。
これだけの待遇を受けるのだから、帝国はよほど俺が必要なのだろう。それならば親父達を解放する機会もありそうだ。
「ギルド長! これはどういう事ですか!?」ローズがヘリオスに叫ぶ。
彼女は何か腑に落ちないようだ。まぁ。確かに、帝国には渡さないという話だったはずなのだから当然だが。
「ローズ。一度狙われている彼にとっても、帝国にとっても最善の選択を選んだまでだよ。彼の封印の解放も、帝国に任せた方が知恵も多かろう」
そこそこヘリオスの言う事も間違ってはいないが、一体帝国は俺に何をさせようとしているのか?
後、ヴェロスはどうなるのだろうか……
どちらにしても、今の俺には決定権が無さそうだ。
「では、シュウ殿。我々と一緒にレクスマイアに来てくれるかね?」と、手を差し伸べるジュペルグ。
彼が良い奴には到底見えないが、俺は「まあ。行くしかなさそうだしな」と答え、その手を取った。
ローズを見ると納得がいかない顔をしている。俺との試合が途中になったから腹を立てている────わけでは、ないだろうが。
彼女は何か知ってるのだろうか? 別に同じ国なのだからヴェロスでも、ギルドでもさほど違いは無さそうだが……
帝国とか、俺は本当無関心だったから相手側の考えが読めない。
アンナだったら何か帝国の事も知ってたのかな? ふと、彼女の事が思い起こされ、俺は沸き上がる怒りと共に一つ思い出した。
そういえば、アンナ達を殺した奴は帝国の奴じゃないか。確か、事件の後に失踪したとローズに聞いたが────
レクスマイアに行くなら、奴の事も調べられるかもしれない。仲間の仇は必ずとる!
そして俺は貴族用の豪華な馬車でレクスマイアへと向かう事になった。
御者はペコリと頭を下げてドアを開けてくれるし。その馬車の中には高級そうなワインがある。
これ、勝手に飲めばいいの? いやいや、これって案外悪くないんじゃないか? 俺、本当に伯爵になるんだろうか……
馬車でレクスマイアまでは、おおよそ一日。
この馬車は俺の専用みたいだし、座り心地の良い椅子は快適で、ワインも飲み放題。まだ十六歳の俺には美味しいかどうかは別にして、暇だった事もあり結構飲んでしまい。
レクスマイアに到着した頃には酔って寝てしまっていた。
「シュウ・セイラル様──シュウ様? 屋敷に到着いたしました」
俺の目の前に美人なお姉さんがいた。
格好からしてメイドか何かだろう。俺の身体を揺すって、寝ていた俺を起こしていたようだ。
「────誰?」
「私は本日より、シュウ様の身の回りの世話をさせていただきます『プディング』と申します。よろしくお願いいたします」
なんと……従者まで付くのか。
そして目の前には大きな屋敷。ここに住むのか? 何か夢を見ている様な気分なんだが。
プディングと名乗った従者の話では、取り敢えず屋敷には俺一人と彼女しかいないらしい。
明日の朝、皇帝に会いに行く事になるらしく。今日は屋敷でゆっくりしていればよいと言われたが全く落ち着かない。
時刻はまだ昼頃だし、色々と調べたい事もある。帝都を少し歩く事にした。
外に出ると言っただけで「お供を呼ぶ」とか、「馬車を用意する」とか色々と言われ、全て断るのに一苦労した。
下手に誰かと行動を共には出来ない。兎に角、調べる事は帝国の牢屋の場所──ほぼほぼ城の方だろうとは思うが。
そして、レティマという男の事だ。
どうもジュペルグはレティマとは繋がっていないと感じた。ヘリオスと結託している時点で、わざわざギルドを攻撃してまで俺を狙う必要は無かっただろうから、そう感じたに過ぎないのだが。
どうやら俺を欲している奴は複数いるようだ。
帝国軍の中の一人。身なりの良い老人がヘリオスに訊ねた。
「ええ、間違いなく。しかもクラウン本人の息子なのです、ジュペルグ侯爵。クラウンはプシュケスフィアで最近まで生きていたという話ですからね」
ヘリオスの言葉に、ジュペルグと呼ばれる老人は驚いた顔を見せた後。満足した様に頷いた。
「でかしたぞ、ヘリオス────さて。シュウ・セイラル。そなたは帝国が責任を持って保護する。勿論、爵位も授けると皇帝陛下が仰っておる」
「随分と俺の出世は早いな。そのままポンポンと皇帝にまで登り詰めてしまったりしてな」
なんて冗談を言いながらも、考えてみれば結構、条件は悪くないのではないか? と、思う。
勿論。何らかの裏があるのは分かっているが。ジュペルグという男はなかなか強者のようで、そんな俺の冗談にも全く動じない体で返してくる。
「さて。それは、君の今後の働き次第だよ。もっとも君の仲間の命がかかっているのだから、断る事は出来ないだろうがね。なあに、裕福な暮らしは約束されているのだ。君の未来は上々だよ」
やはり人質にされているのか。だが、この態度を見てると、俺が下手な事をしなければ親父達も大丈夫そうだ。
これだけの待遇を受けるのだから、帝国はよほど俺が必要なのだろう。それならば親父達を解放する機会もありそうだ。
「ギルド長! これはどういう事ですか!?」ローズがヘリオスに叫ぶ。
彼女は何か腑に落ちないようだ。まぁ。確かに、帝国には渡さないという話だったはずなのだから当然だが。
「ローズ。一度狙われている彼にとっても、帝国にとっても最善の選択を選んだまでだよ。彼の封印の解放も、帝国に任せた方が知恵も多かろう」
そこそこヘリオスの言う事も間違ってはいないが、一体帝国は俺に何をさせようとしているのか?
後、ヴェロスはどうなるのだろうか……
どちらにしても、今の俺には決定権が無さそうだ。
「では、シュウ殿。我々と一緒にレクスマイアに来てくれるかね?」と、手を差し伸べるジュペルグ。
彼が良い奴には到底見えないが、俺は「まあ。行くしかなさそうだしな」と答え、その手を取った。
ローズを見ると納得がいかない顔をしている。俺との試合が途中になったから腹を立てている────わけでは、ないだろうが。
彼女は何か知ってるのだろうか? 別に同じ国なのだからヴェロスでも、ギルドでもさほど違いは無さそうだが……
帝国とか、俺は本当無関心だったから相手側の考えが読めない。
アンナだったら何か帝国の事も知ってたのかな? ふと、彼女の事が思い起こされ、俺は沸き上がる怒りと共に一つ思い出した。
そういえば、アンナ達を殺した奴は帝国の奴じゃないか。確か、事件の後に失踪したとローズに聞いたが────
レクスマイアに行くなら、奴の事も調べられるかもしれない。仲間の仇は必ずとる!
そして俺は貴族用の豪華な馬車でレクスマイアへと向かう事になった。
御者はペコリと頭を下げてドアを開けてくれるし。その馬車の中には高級そうなワインがある。
これ、勝手に飲めばいいの? いやいや、これって案外悪くないんじゃないか? 俺、本当に伯爵になるんだろうか……
馬車でレクスマイアまでは、おおよそ一日。
この馬車は俺の専用みたいだし、座り心地の良い椅子は快適で、ワインも飲み放題。まだ十六歳の俺には美味しいかどうかは別にして、暇だった事もあり結構飲んでしまい。
レクスマイアに到着した頃には酔って寝てしまっていた。
「シュウ・セイラル様──シュウ様? 屋敷に到着いたしました」
俺の目の前に美人なお姉さんがいた。
格好からしてメイドか何かだろう。俺の身体を揺すって、寝ていた俺を起こしていたようだ。
「────誰?」
「私は本日より、シュウ様の身の回りの世話をさせていただきます『プディング』と申します。よろしくお願いいたします」
なんと……従者まで付くのか。
そして目の前には大きな屋敷。ここに住むのか? 何か夢を見ている様な気分なんだが。
プディングと名乗った従者の話では、取り敢えず屋敷には俺一人と彼女しかいないらしい。
明日の朝、皇帝に会いに行く事になるらしく。今日は屋敷でゆっくりしていればよいと言われたが全く落ち着かない。
時刻はまだ昼頃だし、色々と調べたい事もある。帝都を少し歩く事にした。
外に出ると言っただけで「お供を呼ぶ」とか、「馬車を用意する」とか色々と言われ、全て断るのに一苦労した。
下手に誰かと行動を共には出来ない。兎に角、調べる事は帝国の牢屋の場所──ほぼほぼ城の方だろうとは思うが。
そして、レティマという男の事だ。
どうもジュペルグはレティマとは繋がっていないと感じた。ヘリオスと結託している時点で、わざわざギルドを攻撃してまで俺を狙う必要は無かっただろうから、そう感じたに過ぎないのだが。
どうやら俺を欲している奴は複数いるようだ。
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