70 / 79
冒険者の血統
冒険者ギルドの長
しおりを挟む
◇◇◇
またしてもこれか……
今度は何処だ? ローズの家──ではなさそうだな。流れから行けばギルド本部……もしくは、帝国の首都レクスマイアのどちらかか。
無駄に広い部屋だ。
そして無駄に大きいベットだ。──あれ? 裸?
俺は上半身裸の状態だ。そして、ガチャリと扉が開けられる音がして誰かが入って来た。ローズだ。
「おはよう。またこの展開か……って顔してるわね」
「ああ。まさか、とうとう服まで脱がされるとはな……もう、お前に犯された後って感じだな」
「死ね! 何回それ言うのよ、面白くないから!」
ローズは顔を真っ赤にしている。やはり、こういう冗談は通じないようだ。なかなか可愛い所があるじゃないか。
だが彼女がいるなら、帝国に捕まった可能性は排除された。と、いう事は────
「ここは、ギルド本部か?」
「そうよ。ここはギルド本部館の【クラウンの間】 あなたは、クラウンの血統者だと概ね認められたわ。潜在魔力を調べる為に、あなたの服を脱がせてもらったのよ」
「ローズ、おまえ……やっぱり脱がしたんじゃねーか」
「違うわよ! 私じゃなくてギルドの神官よ。 まぁ、兎に角。あなたの中にある魔力は証明されたわ。これで一先ずは安心よ」
会話の途中で再び扉が開けられて、一人の男が入って来た。
ローズと同じ宝石の様な蒼い瞳と黒髪。男なのは見れば分かるが、その美しさは目を見張るものがある。
そして、その顔に似合わない太い声が俺に向けて発せられた。
「目覚めたようですね。シュウ・セイラル──いや。シュウ・ヴェロスと呼ぼうか?」
「セイラルでいい……まだ、自分でも受け入れられないんだ」
男はクスッと笑う。何が可笑しいのか知らないが、次の瞬間には真顔に戻り、俺の横にいたローズを見据えて、少し叱る様に声をかけた。
「ローズ。お前は何故ここにいる!? 早く隊に戻れ」
「はい……」
ローズの様子がやけに萎らしい。普段からそうならば、本当に美しいだけの『華』であろうに。何処か憂いを感じるというか。少し──可哀想にも見えた。
そのローズが静かに退室すると男は改めて俺の方を向き、笑顔で語りかけてきた。
「客人の前ですまなかった。彼女は、あれでもギルド隊を指揮する立場なのだ。こんな所で油を売ってる場合では無いはずなのだがね」
「ああ。俺は別に気にしないよ」
ローズよりは上の立場なのは言動から理解出来たが、聞けばこの男の名前は『ヘリオス・ウィルヘイム』ヴェロス冒険者ギルドのギルド長だった。つまり、現在ヴェロスの街を統治している者という事になる。
ヘリオスは俺を帝国から守る為に、当分はギルドにかくまうと言った。そして、俺にかけられた封印の解除方法を全力で調べるとも約束してきた。
随分と話が早いが正直な所、俺は別に力の解放なんて望んでいないのだが────それよりも親父達がどうなったのかを訊ねると、やはり帝都レクスマイアに送られたという話だ。
帝国の幹部はクラウンの血統者である俺を、血眼で探していると言う。今のままではレクスマイアに近付く事も出来ない。
親父達を助ける為には魔力を解放して、クラウン・ヴェロスの血縁である事を大々的に全国民に示す事で、国民全体を味方につける事が一番の近道だとヘリオスは言う。
不本意ではあるが、結局俺はある程度の権力を得る必要がありそうだ。ギルドは元々、それを望んでいる感じなのか────
「ギルドは俺をどうしたいんだ?」
「ギルドは……と、いうよりは。私には、あなたを導く義務があるのです。ウィルヘイム家には代々言い伝えがあってね。クラウン・ヴェロスの血縁者が現れた時には、それを正しく導き協力する……というのが家命でしてね」
何処かで聞きた事がある話だ……と思ったら、『ウィルヘイム家』とはローズの家じゃないか。
事実。ヘリオスはローズの兄だと言う。数年前に彼らの父が病で亡くなり、以降は長男の彼がギルド長をやっているようだ。随分と若いと思ったら、まだ二五歳だと言われて驚いた。
「って事は。数百年前にクラウンがヴェロスを託した仲間ってのは……」
「如何にも。我々ウィルヘイム家の先祖は、曾て冒険者王クラウンと共に、シュテルマインを魔物から取り返した六人の仲間の一人『ピーター・ウィルヘイム』なのですよ」
「へえ。じゃあやっぱりローズも名家の人間だったんだな」
結局、最初に思った通り。親の七光りだったわけだ。
しかしヘリオスは間髪入れず答えた────
「いや……妹は正直、我が家には相応しくない」ヘリオスは呆れた様に数回首を横に振り、話を続ける。
「恥ずかしい事に、彼女はウィルヘイム家の落ちこぼれでね。子供の時は神官に光の適正を示されて期待されていたんだが。結局、時が経って見れば魔法の才能は無く。代々家に続く剣術もダメで。
今でこそギルド隊の隊長をやらせているが。それも最初は、肩書きだけでも家名を汚さない為の偽装だったのですよ。妹は、肩書きに負けない為に努力したようだが。まあ……どんなに努力しても、あの程度なのです……」
光の適正は普通、生まれつき授かる事は無いと聞く。
それが本当ならローズは聖女なのではないのか? しかし。どうもその話とは裏腹に、ローズの評価は相当に低いようだ。
なるほど──退室する時のあの態度は、兄に頭が上がらない為だったわけか。
この家族にも色々問題がありそうだ。
またしてもこれか……
今度は何処だ? ローズの家──ではなさそうだな。流れから行けばギルド本部……もしくは、帝国の首都レクスマイアのどちらかか。
無駄に広い部屋だ。
そして無駄に大きいベットだ。──あれ? 裸?
俺は上半身裸の状態だ。そして、ガチャリと扉が開けられる音がして誰かが入って来た。ローズだ。
「おはよう。またこの展開か……って顔してるわね」
「ああ。まさか、とうとう服まで脱がされるとはな……もう、お前に犯された後って感じだな」
「死ね! 何回それ言うのよ、面白くないから!」
ローズは顔を真っ赤にしている。やはり、こういう冗談は通じないようだ。なかなか可愛い所があるじゃないか。
だが彼女がいるなら、帝国に捕まった可能性は排除された。と、いう事は────
「ここは、ギルド本部か?」
「そうよ。ここはギルド本部館の【クラウンの間】 あなたは、クラウンの血統者だと概ね認められたわ。潜在魔力を調べる為に、あなたの服を脱がせてもらったのよ」
「ローズ、おまえ……やっぱり脱がしたんじゃねーか」
「違うわよ! 私じゃなくてギルドの神官よ。 まぁ、兎に角。あなたの中にある魔力は証明されたわ。これで一先ずは安心よ」
会話の途中で再び扉が開けられて、一人の男が入って来た。
ローズと同じ宝石の様な蒼い瞳と黒髪。男なのは見れば分かるが、その美しさは目を見張るものがある。
そして、その顔に似合わない太い声が俺に向けて発せられた。
「目覚めたようですね。シュウ・セイラル──いや。シュウ・ヴェロスと呼ぼうか?」
「セイラルでいい……まだ、自分でも受け入れられないんだ」
男はクスッと笑う。何が可笑しいのか知らないが、次の瞬間には真顔に戻り、俺の横にいたローズを見据えて、少し叱る様に声をかけた。
「ローズ。お前は何故ここにいる!? 早く隊に戻れ」
「はい……」
ローズの様子がやけに萎らしい。普段からそうならば、本当に美しいだけの『華』であろうに。何処か憂いを感じるというか。少し──可哀想にも見えた。
そのローズが静かに退室すると男は改めて俺の方を向き、笑顔で語りかけてきた。
「客人の前ですまなかった。彼女は、あれでもギルド隊を指揮する立場なのだ。こんな所で油を売ってる場合では無いはずなのだがね」
「ああ。俺は別に気にしないよ」
ローズよりは上の立場なのは言動から理解出来たが、聞けばこの男の名前は『ヘリオス・ウィルヘイム』ヴェロス冒険者ギルドのギルド長だった。つまり、現在ヴェロスの街を統治している者という事になる。
ヘリオスは俺を帝国から守る為に、当分はギルドにかくまうと言った。そして、俺にかけられた封印の解除方法を全力で調べるとも約束してきた。
随分と話が早いが正直な所、俺は別に力の解放なんて望んでいないのだが────それよりも親父達がどうなったのかを訊ねると、やはり帝都レクスマイアに送られたという話だ。
帝国の幹部はクラウンの血統者である俺を、血眼で探していると言う。今のままではレクスマイアに近付く事も出来ない。
親父達を助ける為には魔力を解放して、クラウン・ヴェロスの血縁である事を大々的に全国民に示す事で、国民全体を味方につける事が一番の近道だとヘリオスは言う。
不本意ではあるが、結局俺はある程度の権力を得る必要がありそうだ。ギルドは元々、それを望んでいる感じなのか────
「ギルドは俺をどうしたいんだ?」
「ギルドは……と、いうよりは。私には、あなたを導く義務があるのです。ウィルヘイム家には代々言い伝えがあってね。クラウン・ヴェロスの血縁者が現れた時には、それを正しく導き協力する……というのが家命でしてね」
何処かで聞きた事がある話だ……と思ったら、『ウィルヘイム家』とはローズの家じゃないか。
事実。ヘリオスはローズの兄だと言う。数年前に彼らの父が病で亡くなり、以降は長男の彼がギルド長をやっているようだ。随分と若いと思ったら、まだ二五歳だと言われて驚いた。
「って事は。数百年前にクラウンがヴェロスを託した仲間ってのは……」
「如何にも。我々ウィルヘイム家の先祖は、曾て冒険者王クラウンと共に、シュテルマインを魔物から取り返した六人の仲間の一人『ピーター・ウィルヘイム』なのですよ」
「へえ。じゃあやっぱりローズも名家の人間だったんだな」
結局、最初に思った通り。親の七光りだったわけだ。
しかしヘリオスは間髪入れず答えた────
「いや……妹は正直、我が家には相応しくない」ヘリオスは呆れた様に数回首を横に振り、話を続ける。
「恥ずかしい事に、彼女はウィルヘイム家の落ちこぼれでね。子供の時は神官に光の適正を示されて期待されていたんだが。結局、時が経って見れば魔法の才能は無く。代々家に続く剣術もダメで。
今でこそギルド隊の隊長をやらせているが。それも最初は、肩書きだけでも家名を汚さない為の偽装だったのですよ。妹は、肩書きに負けない為に努力したようだが。まあ……どんなに努力しても、あの程度なのです……」
光の適正は普通、生まれつき授かる事は無いと聞く。
それが本当ならローズは聖女なのではないのか? しかし。どうもその話とは裏腹に、ローズの評価は相当に低いようだ。
なるほど──退室する時のあの態度は、兄に頭が上がらない為だったわけか。
この家族にも色々問題がありそうだ。
0
お気に入りに追加
63
あなたにおすすめの小説
前世は最強の宝の持ち腐れ!?二度目の人生は創造神が書き換えた神級スキルで気ままに冒険者します!!
yoshikazu
ファンタジー
主人公クレイは幼い頃に両親を盗賊に殺され物心付いた時には孤児院にいた。このライリー孤児院は子供達に客の依頼仕事をさせ手間賃を稼ぐ商売を生業にしていた。しかしクレイは仕事も遅く何をやっても上手く出来なかった。そしてある日の夜、無実の罪で雪が積もる極寒の夜へと放り出されてしまう。そしてクレイは極寒の中一人寂しく路地裏で生涯を閉じた。
だがクレイの中には創造神アルフェリアが創造した神の称号とスキルが眠っていた。しかし創造神アルフェリアの手違いで神のスキルが使いたくても使えなかったのだ。
創造神アルフェリアはクレイの魂を呼び寄せお詫びに神の称号とスキルを書き換える。それは経験したスキルを自分のものに出来るものであった。
そしてクレイは元居た世界に転生しゼノアとして二度目の人生を始める。ここから前世での惨めな人生を振り払うように神級スキルを引っ提げて冒険者として突き進む少年ゼノアの物語が始まる。
追放、転生、完璧王子は反逆者!!!
ぱふもふ
ファンタジー
「王令である。第四王子エラクレス・ネリーキアは国王陛下より与えられし任地に早急に趣くべし。一週間後には王都を発つように!」
ある異世界のある時代のある日、中堅国家ネリーキア王国で第四王子エラクレスはそのような王令を受けて王都を去った。一見彼は封土を与えられた様に見えなくもないが、実際には兄弟や義母達の政治工作によって追放されたのだ。そして一応封土に着いたわけだが……
「全く……ひでえ所だ…。逆にこの土地を見つけた事を褒めてやりたいくらいだぜ。」
封土はネリーキア王国でも1、2位を争う程に酷い土地だった。
「まあ、完璧である俺には関係ないが。」
しかしエラクレスは全く絶望することなく領地経営という名の無双を始める。それもそのはず。なぜなら彼は女神の導きで地球から転生し、その時に常軌を逸する魔力と魔法を与えられたのだから!!!エラクレスはその圧倒的な力で一体何をどうするのだろうか?!
この作品は主人公がとにかくチートで御都合主義です。作者は未熟者であるためわかりにくい部分もあるかもしれませんが、それでもよろしければ読んでください!!!
女神様から同情された結果こうなった
回復師
ファンタジー
どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。
だいたい死ぬ悲運の王女は絶対に幸せになりたい!〜努力とチートでどんな運命だって変えてみせます〜
十和とわ
ファンタジー
悲運の王女アミレス・ヘル・フォーロイトは、必ず十五歳で死ぬ。
目が覚めたら──私は、そんなバッドエンド確定の、乙女ゲームの悪役王女に転生していた。
ヒロインを全ルートで殺そうとするわ、身内に捨てられ殺されるわ、何故かほぼ全ルートで死ぬわ、な殺伐としたキャラクター。
それがアミレスなのだが……もちろん私は死にたくないし、絶対に幸せになりたい。
だからやってみせるぞ、バッドエンド回避!死亡フラグを全て叩き折って、ハッピーエンドを迎えるんだ!
……ところで、皆の様子が明らかに変な気がするんだけど。気のせいだよね……?
登場人物もれなく全員倫理観が欠如してしまった世界で、無自覚に色んな人達の人生を狂わせた結果、老若男女人外問わず異常に愛されるようになった転生王女様が、自分なりの幸せを見つけるまでの物語です。
〇主人公が異常なので、恋愛面はとにかくま〜ったり進みます。
〇基本的には隔日更新です。
〇なろう・カクヨム・ベリーズカフェでも連載中です。
〇略称は「しぬしあ」です。
氷の貴婦人
羊
恋愛
ソフィは幸せな結婚を目の前に控えていた。弾んでいた心を打ち砕かれたのは、結婚相手のアトレーと姉がベッドに居る姿を見た時だった。
呆然としたまま結婚式の日を迎え、その日から彼女の心は壊れていく。
感情が麻痺してしまい、すべてがかすみ越しの出来事に思える。そして、あんなに好きだったアトレーを見ると吐き気をもよおすようになった。
毒の強めなお話で、大人向けテイストです。
拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~
ぽん
ファンタジー
⭐︎コミカライズ化決定⭐︎
2024年8月6日より配信開始
コミカライズならではを是非お楽しみ下さい。
⭐︎書籍化決定⭐︎
第1巻:2023年12月〜
第2巻:2024年5月〜
番外編を新たに投稿しております。
そちらの方でも書籍化の情報をお伝えしています。
書籍化に伴い[106話]まで引き下げ、レンタル版と差し替えさせて頂きます。ご了承下さい。
改稿を入れて読みやすくなっております。
可愛い表紙と挿絵はTAPI岡先生が担当して下さいました。
書籍版『拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜』を是非ご覧下さい♪
==================
1人ぼっちだった相沢庵は住んでいた村の為に猟師として生きていた。
いつもと同じ山、いつもと同じ仕事。それなのにこの日は違った。
山で出会った真っ白な狼を助けて命を落とした男が、神に愛され転移先の世界で狼と自由に生きるお話。
初めての投稿です。書きたい事がまとまりません。よく見る異世界ものを書きたいと始めました。異世界に行くまでが長いです。
気長なお付き合いを願います。
よろしくお願いします。
※念の為R15をつけました
※本作品は2020年12月3日に完結しておりますが、2021年4月14日より誤字脱字の直し作業をしております。
作品としての変更はございませんが、修正がございます。
ご了承ください。
※修正作業をしておりましたが2021年5月13日に終了致しました。
依然として誤字脱字が存在する場合がございますが、ご愛嬌とお許しいただければ幸いです。
神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~
雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる