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冒険者の血統
冒険者の王国
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大陸暦・一三二〇年────当時まだ【アールヘイズ帝国】が【アルス王国】という一つの王国であった頃。中央大陸においてアルス王国は最大の軍事国家と呼ばれており。その王都【シュテルマイン】は、まさにその象徴とも呼べる巨大な城郭都市でした。
しかし、そのシュテルマインは、三〇万匹を越える魔物達の攻撃を受けたのです。
これは【シュテルマイン大強襲】と呼ばれ、レジテン全土の歴史で最大の災害として今も語り継がれています。
アルス王国の兵士達は必死で城を守り、その戦いは三日三晩続いたと言われますが。王国の騎士も宮廷魔法使い達も、魔物の圧倒的な数の暴力により──なす統べなく次々と力尽きて倒れ。王城アルへレスの炎上と共に、シュテルマインは陥落したのです。
当時の国王【ジョフレイ・ランバレル】は、陥落前にシュテルマインを脱出。アルス王国第二位の大きさを誇る都市【レクス】へと避難し、王国の崩壊だけは何とか免れました。
それから一ヶ月後────
王国に放棄され魔物の巣窟となったシュテルマインに、仲間と共に戻って来たのは長い間シュテルマインを拠点としていたS級冒険者【クラウン・ヴェロス】でした。
彼は人並み外れた魔力を持っており、その規格外の強さは世界中に轟いていました。
そんな彼──クラウンと六人の仲間達。そして、彼らに協力した数百人の冒険者達は、シュテルマインに住み着いた魔物達と戦い。見事にそれらを掃討したのです。
その功績を称えられクラウンはアルス国王ジョフレイから、シュテルマイン周辺の領地と伯爵位を授かりました。
そして多くの者達に支持され、彼はシュテルマインの存在した地に新たな街を築いたのです。それが現在の冒険者の街【ヴェロス王国】。
ヴェロスが『王国』と呼ばれたのは、人々がクラウンを称え彼の事を【冒険者の王】と呼んだからです。彼の造り上げた街はアルス王国の街でありながらも、冒険者の王が統治するという事から【ヴェロス王国】と呼ばれるようになり。
クラウンは名前通り王冠を手にしたわけです。
その後ヴェロスは世界で唯一、冒険者ギルドが統治する都市として、すっかり冒険者達の聖地となり。更には世界各地の冒険者が集う事で様々な物が集まる都市として、各国の商人達も頻繁に行き交うようになりました。
その頃からアルス王国は近隣諸国と合併を始め、アールヘイズ帝国が築きあげられていた事もあり。ヴェロスは急速に発展を遂げていきました。
こうしてヴェロスは、誕生から四〇〇年以上が過ぎた現在。アールヘイズ帝国首都【レクスマイア】(旧レクスの街)に次ぐ巨大都市となり、嘗てのシュテルマインを彷彿とさせる帝国の要となったのです────
アンナは、ヴェロスの歴史を語り終えると【レジテン世界史】と書かれた、その分厚い本をぱたりと閉じた。
彼女は読み聞かせが上手だ。お陰でたいそう眠くなった。
そんな中、俺は一つの疑問を抱く。
「でもさあ……何でヴェロスは今ではギルド統治なんだ? 冒険者王クラウンが統治してたなら、その後の子供とかが統治するもんじゃないの?」
クラウンは伯爵だったのだから、その後も領地は伯爵家が統治するのが普通であろう。
俺の質問を受け、アンナは膨れっ面で答える。
「人に聞いておいて眠そうにしないでよね! ──ってか、まあ……うん。それは、クラウンは元々身寄りが無い孤児で。後に結婚はしたけど、子孫も残せなかったのよ……本当は一人だけ子供がいたらしいけれど、幼くして亡くなったって話よ」
「ふーん……英雄なんだから、女には困らないだろうに。一人しか作らなかったのか。初代英雄にして末代とは、何とも悲惨な話だよな」
「シュウは考えが卑猥なのよ! クラウンは、シュウみたいな女誑しじゃなかった……って事よ」アンナは頬を赤らめてそっぽ向いた。
「ひでぇ言い方だな、おい。──ところでアンナ? お前はヴェロスに行った事あるのか?」
「あるわよ。小さい時に一度だけね……とても大きくて、大きすぎて……それしか覚えてないわね」と、彼女は遠い目をした。
俺は彼女を子供の頃から知っているが、ファーストネームしか知らない。彼女──アンナが元々何をしていたのかも、親の話すらも聞いた事はないのだ。
まあ。詮索しない関係だ……俺達は。
「それより……」とアンナは言う。
「シュウ。どうするの? この仕事……ヴェロス行きの商人を狙う仕事でしょ?」
「ヴェロスに出入りする商人なんて、当然護衛も連れてるだろうしな」
「そう。だから、今までみたいに簡単にはいかないかも」
「まあな。でも──報酬もデカイし、ご指名だしな」
アンナは呆れた様な溜め息を俺に向けて吐く。
俺がそう答える事など予想していた様に……
しかし、そのシュテルマインは、三〇万匹を越える魔物達の攻撃を受けたのです。
これは【シュテルマイン大強襲】と呼ばれ、レジテン全土の歴史で最大の災害として今も語り継がれています。
アルス王国の兵士達は必死で城を守り、その戦いは三日三晩続いたと言われますが。王国の騎士も宮廷魔法使い達も、魔物の圧倒的な数の暴力により──なす統べなく次々と力尽きて倒れ。王城アルへレスの炎上と共に、シュテルマインは陥落したのです。
当時の国王【ジョフレイ・ランバレル】は、陥落前にシュテルマインを脱出。アルス王国第二位の大きさを誇る都市【レクス】へと避難し、王国の崩壊だけは何とか免れました。
それから一ヶ月後────
王国に放棄され魔物の巣窟となったシュテルマインに、仲間と共に戻って来たのは長い間シュテルマインを拠点としていたS級冒険者【クラウン・ヴェロス】でした。
彼は人並み外れた魔力を持っており、その規格外の強さは世界中に轟いていました。
そんな彼──クラウンと六人の仲間達。そして、彼らに協力した数百人の冒険者達は、シュテルマインに住み着いた魔物達と戦い。見事にそれらを掃討したのです。
その功績を称えられクラウンはアルス国王ジョフレイから、シュテルマイン周辺の領地と伯爵位を授かりました。
そして多くの者達に支持され、彼はシュテルマインの存在した地に新たな街を築いたのです。それが現在の冒険者の街【ヴェロス王国】。
ヴェロスが『王国』と呼ばれたのは、人々がクラウンを称え彼の事を【冒険者の王】と呼んだからです。彼の造り上げた街はアルス王国の街でありながらも、冒険者の王が統治するという事から【ヴェロス王国】と呼ばれるようになり。
クラウンは名前通り王冠を手にしたわけです。
その後ヴェロスは世界で唯一、冒険者ギルドが統治する都市として、すっかり冒険者達の聖地となり。更には世界各地の冒険者が集う事で様々な物が集まる都市として、各国の商人達も頻繁に行き交うようになりました。
その頃からアルス王国は近隣諸国と合併を始め、アールヘイズ帝国が築きあげられていた事もあり。ヴェロスは急速に発展を遂げていきました。
こうしてヴェロスは、誕生から四〇〇年以上が過ぎた現在。アールヘイズ帝国首都【レクスマイア】(旧レクスの街)に次ぐ巨大都市となり、嘗てのシュテルマインを彷彿とさせる帝国の要となったのです────
アンナは、ヴェロスの歴史を語り終えると【レジテン世界史】と書かれた、その分厚い本をぱたりと閉じた。
彼女は読み聞かせが上手だ。お陰でたいそう眠くなった。
そんな中、俺は一つの疑問を抱く。
「でもさあ……何でヴェロスは今ではギルド統治なんだ? 冒険者王クラウンが統治してたなら、その後の子供とかが統治するもんじゃないの?」
クラウンは伯爵だったのだから、その後も領地は伯爵家が統治するのが普通であろう。
俺の質問を受け、アンナは膨れっ面で答える。
「人に聞いておいて眠そうにしないでよね! ──ってか、まあ……うん。それは、クラウンは元々身寄りが無い孤児で。後に結婚はしたけど、子孫も残せなかったのよ……本当は一人だけ子供がいたらしいけれど、幼くして亡くなったって話よ」
「ふーん……英雄なんだから、女には困らないだろうに。一人しか作らなかったのか。初代英雄にして末代とは、何とも悲惨な話だよな」
「シュウは考えが卑猥なのよ! クラウンは、シュウみたいな女誑しじゃなかった……って事よ」アンナは頬を赤らめてそっぽ向いた。
「ひでぇ言い方だな、おい。──ところでアンナ? お前はヴェロスに行った事あるのか?」
「あるわよ。小さい時に一度だけね……とても大きくて、大きすぎて……それしか覚えてないわね」と、彼女は遠い目をした。
俺は彼女を子供の頃から知っているが、ファーストネームしか知らない。彼女──アンナが元々何をしていたのかも、親の話すらも聞いた事はないのだ。
まあ。詮索しない関係だ……俺達は。
「それより……」とアンナは言う。
「シュウ。どうするの? この仕事……ヴェロス行きの商人を狙う仕事でしょ?」
「ヴェロスに出入りする商人なんて、当然護衛も連れてるだろうしな」
「そう。だから、今までみたいに簡単にはいかないかも」
「まあな。でも──報酬もデカイし、ご指名だしな」
アンナは呆れた様な溜め息を俺に向けて吐く。
俺がそう答える事など予想していた様に……
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