上 下
31 / 79

未来チックでもう色々とヤバイ

しおりを挟む
 俺は館の地下へと下りて行き、一つの四角い箱の前に立つ。
 箱とは言うがそれは前世では見慣れた物。
 小さなモニターの付いたインターホンの親機みたいな物だ。そこには何も映し出されていないが、別に魔力を注ぐとかそういったシステムでは無い。
 これに、先ほど集めたバッテリーを横の蓋を開けて入れる。すると『ピッ』と音が鳴り画面が映る。

 これにはルカ、ベネットが驚く。
 と、いうかレイチェルも驚く。彼女もこれについては知らなかったようだ。
 その箱にある幾つかのボタンを何回か押す。それは暗証番号であり、レイチェルの誕生日だ。
 暗証番号としては一番設定してはいけない甘いセキュリティパターンだが、別にこの屋敷の者しか使わないので関係ないのか。

 ゴゴンっと音がして壁が動く。更に皆が驚く。

「ちょ、何よこれ!どうなってるの?」
「隠し扉ってやつだな」
「本当に先生は何者ですの?」

 何も言わずに俺は奥に進む。この先には敵がいるのだ。それもなかなかに問題ある敵が。

「私の家の地下にこんな所がありましたのね」
「気を付けろよ。ただで奥までは進めないぞ」
「ルシアンって本当になんなの?」
「昔からこういう所には何か出るのが定番だろ?」
「何基準で物事考えてるのよ」

 これ以上質問されても困ると思っていると、丁度目の前にルカも思わず口を止めるような奇妙なモノが鎮座している。
 それは、動きこそ全く無いが人を型どったロボット。しかし、頭の代わりに四角いモニターの様な物がついている。
 この世界の者達には奇っ怪な物に見えている事だろう。
 俺からしたら、SF映画に出てきそうな警備ロボ。
 
 そのロボのモニターに突然、目の様な物が映り。赤く光る。
 起動したようだ。

『シンニュウシャ、ハイジョ』

(うーん。なんか世界観崩壊してるよな。一気に魔法の世界っぽくなくなったわ。今に戦車とか出てきそう)

 俺は剣を抜いてロボに斬りつけた。
 しかし、ガキンって感じの音がして弾かれる。それはドラゴンの皮膚よりも硬い。
 そして、何も考えてなかった事を後悔する。
 この世界は魔法攻撃が当たり前。考えてみれば鉄の塊相手に刃物ってのは無謀の極みだ。

 ルカの炎魔法が少し効いている感じだ。ベネットの水魔法も何となく若干効いている……というよりは嫌われている。
 やはり機械だから濡れるのが嫌なのだろう。
 このロボは幸いミサイルを射ってくるとか、そこまで不合理な攻撃はしてこないのだが、それにしても剣使いには手強い。

「ルカ!雷魔法使えるか?」
「使った事ないよ!」
「大丈夫。やれば出来る!今のお前は泉の水を四回も飲んでるからな。頑張れ」

 機械には雷は鉄板。
 ルカがきっと何とかしてくれるのを信じて、ひたすらロボを牽制する。するとルカは、なんだかんだ期待通りに雷魔法をロボに落とした。
 かなり効いている感じ。だがその動きが止まらないどころか、ロボは突然、ルカに向けてパンチを繰り出す。

「え!え!えーーー!」
「避けろルカ!」

 そのパンチはルカからかなり距離があったのだが、ルカは驚いていた。それはそうだろう。ロボの腕が取れて、ルカに向かって飛んで行くのだから。

(ろ、ロケットパンチ!あの伝説のロケットパンチが何故!?そんな機能付けてねーけど?)

 決して速くはないが当たれば痛そうだ。魔法世界はどこにいったのか。もはやSFに近い展開だった。
 近くにいたレイチェルがルビーの剣でその腕を叩き落とした。物凄い金属音が響き、腕は確かに地面に落ちたが、彼女のルビーの剣が欠けたようだ。

 ルカは再び雷魔法を繰り出したので、それがロボに到達する前に俺はその雷魔法を剣で受けた。
 それにより俺の剣が電撃を帯びた魔法剣となる。俺はその剣を掲げロボに飛び込んだ。

「先生!そいつに剣は無理ですわ!」

 そんなレイチェルの忠告を無視して、雷属性を持った剣でロボの首もと目掛け剣を走らせた。今度は溶けるようにロボの首を切断していった。まさにライトセイバーの如く。
 コロコロとモニター型の頭が落ちる。やがてブツッとモニターの電源が落ちて動かなくなった。

「うそ……。あんな硬いのどうやって斬ったのよ。ルシアンって、たまに冗談みたいな事するよね?」
「まぁ。冗談だとでも思ってくれ。それより、もう一回剣に雷魔法かけてくれ」
「いいけど、あんなのがまだいるのかな?アレ何なのよ。見た事ないけど!」
「動く鉄だ。気にするな」

 そう行って俺はルカに再度、雷魔法をかけ直してもらい進む。
 その後も二体同じロボがいたが、要領が分かった俺は黄色いライトセイバーを振り回し首を落としていった。

「何かルシアン様のお陰で、私の出る幕がありませんね」
「気にしない、気にしない。私も雷魔法使っただけだし。それも敵じゃなくて剣に」
「本当に先生は素晴らしいですわ」

 後ろの女子達が、俺を褒め称えている。
 何となく俺つえー主人公の気持ち良さを堪能出来て、剣術やってて良かったと心から思った。
 それよりも、とっととこのバカらしいSFを終わらせたかったのもあるが。

 そして行き止まりの一つの扉に辿り着く。
 開けようか少し躊躇した。この先にはレイチェルの母の手紙とレイチェルの再起の宝玉がある筈だ。
 彼女には辛い現実になる。そして、彼女が宝玉をどうするかは俺には何も言えない。

「どういたしました?先生」
「あ、いや。何でもない……多分、この奥にレイチェルの求める物がある筈だ。開けるぞ」

 レイチェルはやはり何処かまだ半信半疑な感じだが、俺は意を決して扉を開けた。そこは随分と近代的な部屋。
 幾つかのモニターが並び、エネルギー研究用の機械が置かれているという、この世界には剰りに不釣り合いな空間。

 そして、奥にテーブルがあり。その上にそれはあった。再起の宝玉と呼ばれる、魂を封じたであろう水晶玉が二つ。

 その一つは、ゲームと同じく割れている。
 しかし、問題がある。それは、もう一つの水晶も割れていた事だ。
しおりを挟む

処理中です...