魔法主義世界に魔力無しで転生した俺は、無能とバカにされつつも無能の『フリ』して無双する

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レブン王国の伯爵

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「ちょっと!街で噂にはなってたけど、これって本当にやられちゃったって事!?」
「何か大型の魔物が暴れたような感じですね!」
「あ、あぁ……そうだな。レブンまで襲われるとはな……」

 俺達が着いた頃にはレブン王国の王都は完全に落ちていた。
 街の人達の話を聞くと大きな骨のドラゴンが暴れたのだと言う。知っているのだが。

 城は壊滅。街は半壊。
 多くの住民はレブンの土地を離れて行ったようだ。国王はじめ、姫や王子など。王族の者達は、さすがに城を脱出し避難したのだ。
 その城は見るも無惨に崩壊している。

(これじゃあ、レブンみたいな小さな王国は、建て直しが効かないかもしれない)

 レブン王都【ヒルスリキア】
 ここに来た理由は二つ。一つは第七の泉へ行く拠点になっている事。もう一つは、バッテリーの回収。
 バッテリーとは勿論、電池の事なのだが。そもそも動力を魔法に頼る世界で、バッテリーとは余りにチグハグなアイテムだが。
 とにかくある場所に行く為に必要な物だ。

「ルシアン。バッテリーってどんな物なの?」
「細い筒上の物で、大きさは小指くらいだな」
「随分小さいのですね。それを何個でしたっけ?」
「そうだな。四個いる。多分この街の人達なら何人か持ってる人がいるはずだから。壊された家屋とかも探してくれ」
「あら。皆様はバッテリーを知りませんの?」

 レイチェルにとっては馴染みがあるかもしれない。
 何せここヒルスリキアは彼女の故郷なのだから。レイチェルに故郷を攻撃させる魔王軍がいかに悪かを物語らせる。
 悪とはそういうモノだ。と、当時の俺は思って作っていた。

 俺は一軒の家屋に入った。
 既に破壊されており誰もそこには住んでいない。そして、壊れたタンスなどや壺の中を漁る。
 ゲームとかだと、普通に生活している家屋にプレイヤーが土足で上がり込み。挨拶もせずにタンスを開けたり、壺を割って中身を持ち出す場面が当たり前だが。

 あれは教育上どうなのかと思ってしまう。なんせ窃盗罪や器物破損罪にあたる行為だ。とか言いながらそれを今、普通にやっている。
 勿論、ここは既に破壊されて放置された場所ではあるのだが。それでも前世の世界だと違法だろう。
 そして俺は一つ、バッテリーを見つけた。
 寝室のタンスの上から三番目に入っていたのだが、こういう所がゲームとは違い現実的で、罪悪感が湧くところだ。
 まぁ。現実では無く、現実なのだが。

「見付けましたわよ。先生」
「見付けたよ、ルシアン!」
「ルシアン様!これですか?」

 それぞれが見付けて来てくれたので、アッサリ四つ集まった。まるで泥棒一家だが、これは必要な事なので仕方ない。

「ねぇルシアン。これでレイチェルの魔力は戻るの?」
「いや、まだだ。これは鍵みたいな物だし」
「レイチェル様の為に頑張りましょう!」
「ほんと、申し訳ありませんわね」

 そもそも、ルカ達にはレイチェルの事を何一つ正しく話していない。魔王軍の魔将だなんて言える筈もないし。
 レイチェルは現在、魔力の殆んどを呪いにより失った事にした。
 失った魔力を取り返す為、彼女は魔力を回復出来るという玉を探して旅をしている……という設定だ。

 再起の宝玉は世界的に余りに有名なので、その名前は使えない。
 故に、咄嗟に出たドラゴンボールとしておいた。
 願いを叶える玉だし。まぁ間違えてはいないだろう。七つ集める必要が無いだけだ。

 とにかく、バッテリーが四つ揃った所で俺はヒルスリキアの街外れにあるとある古い屋敷を目指した。
 そこはひっそりとした場所であり、元々被害はなかったのだ。その地下には、とある入り口がある。

 ゲームでも四魔将レイチェルは再起の宝玉に囚われており、本体を倒しても、苦しみもがく怨念となった魂が実体化して何度も襲ってくるというイベントがあった。
 そのイベントはレイチェルの再起の宝玉を破壊する事で、クリア出来るのだが。
 四連続のボス戦闘があって、多くのプレイヤーを苦しめる。

 そして、その舞台となったのがここ。ストレングス邸。嘗てのレイチェルの実家でもあった。
 なぜ、ここにレイチェルの再起の宝玉があるのか。
 それは、彼女の母親であり大魔法使いだった『ウェルシア』が、禁断魔法プシュケスフィアを自分に使用し、長年に渡りレイチェルの宝玉を探し続けた結果だったのだ。

 いつか娘が魂の自由を望んだ時。それを叶えられるようにとウェルシアはこの場に彼女の宝玉を残した。
 召喚魔法を持つ者として産んだ故に、娘が魔王軍への道を進んでしまった事の親なりの苦悩。そんなレイチェルへの想いと謝罪が添えられた手紙を残して。
 ウェルシアの割れた宝玉と、割れていないレイチェルの宝玉がこの地下に眠っているのを俺は知っている。

 ゲームでは勿論、レイチェルと一緒に来る事はないのだ。
 つまり、彼女はここに来て辛い真実を知る事になる。自分の母親が自分の為にプシュケスフィアを使い、数百年を宝玉探しに捧げたという事実を知ってしまう。
 ゲームでは知る事のない真実を、レイチェルが知る事で。どの様な影響を及ぼすかは分からない。
 だが、これはゲームの世界とは違う。
 彼女にとって良い結果になる事を願うまでだ。
 
「ここは……」
「そう。ここはレイチェルの屋敷だよね?」
「え!?そうなの、ルシアン!」
「ルシアン様。どうしてそんなの知ってるんですか?」
「あ!あー。それは……彼女の名前を聞いた時に。何か聞いた事あるな~って思ってさ。有名な伯爵だし」

 危うく怪しまれる所だったが、何とか乗り切った。

(あぶねー!そういや、この前、朝イチでレイチェルの話を皆にした時もルカのやつにツッコミ入れられたんだよな!発言には気を付けねーと)

 『朝までレイチェルは自分達と三人で寝てたのに、なぜルシアン突然そんな話言い出すの?』っと言われたのだった。 
 まさか夜中に俺の部屋に来たとも言えず。
 まるで浮気してる男みたいな状態になっている。
 彼女を何人も転がしてる、世のスケコマシ達をある意味でスゴいと尊敬してしまった。
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