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その者。魔王軍、四魔将
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レイチェルの剣術を見た感じでは、さすがに長い年月を鍛練してきただけの事はあった。
だが、その程度だ。決してハイドの迷宮を切り抜けられるようなレベルとは言えない。やはりこの世界の人間では、剣は使い物にならないのか。
俺の身体が特別、この世界のシステムとは異端であるのは確実だ。
(しかし、レイチェルは何か、剣以外にも優れているモノがあるのだろうか?)
考えても分からないが、俺達が宿屋に戻る頃にはルカとベネットが既に待ちくたびれていた。
ルカはどこか不機嫌だし、ベネットはそんなルカの気持ちを代弁するように文句を言う。
「遅いですよ!御飯の時間には戻ってくださいね」
「あぁ、悪い。彼女の剣術を見てたんだ」
「ルシアン様はデレデレし過ぎです!」
そんなつもりは微塵も無かったのだが、何か当たられたような感じで、少しベネットにも尻込みしてしまう。
(これ、ハーレムってより。俺が女達の奴隷なんじゃないか?)
レイチェルは大人の余裕なのかニコニコとしている。
彼女の年齢をここでネタにすれば、一気に場の空気を変えられる自信はあるのだが。
さすがに理由を考えると、ネタにするのは違うだろうと思える内容なのでここはとりあえず控えた。
すると、ベネットが突然その話題を出す。
「そういえば。伯爵様は今、おいくつなのですか?」
「――――私は……」
「俺と同じだってよ。あと、伯爵様って呼び方もやめようぜ。もう伯爵じゃないって言ってただろ?何か堅苦しいしな」
「そっか!そうですね。レイチェル様って呼びますね!」
「様はいらねぇと思うけど。ベネットに言ってもそこはムリだな。アハハ」
俺の一言でベネットが笑い。ルカも『確かに!』っと笑って相槌を打ってくれた。
レイチェルも笑った。
何故俺がレイチェルを庇ったのかは正直分からなかった。
彼女は案外、本当に気にしていないかも知れないが、俺だったら気にすると思ったからかも。
とにかく雰囲気は良くなり、そのまま本日は終わりを向かえそうだ。宿は、俺が一人部屋。女三人は三人で一部屋。
思えば最初は、ルカと一緒な部屋に寝る事になるかも……なんて期待もあったのを思い出すが。
今となっては百パーセントあり得ない話になってしまった。
明日は七番目の泉を求めて、とりあえず王都を目指す。
シナリオ的には、もうすぐ滅びる予定の王国だとは思うが。
そこさえ行ってしまえば残りの四番、五番、と戻って。そのままベネットのおじいさんの所まで戻ればムダが無いはずだ。
ゲーム製作者ならではの最高効率スケジュールだ。
明日からはまた暫く歩かなきゃ行けない。
今日は早めに寝る事にした。
――――――――――
ふと、気配を感じて目を覚ました。
辺りの静けさと空気感から、まだ朝では無い気がする。半分寝惚けていた俺は次の瞬間、自分の身体に起きている異変に驚きすぎて一瞬声も出なかった。
寝ている俺を押さえ付ける様にレイチェルが跨がっていた。
その姿はドレスでは無く、高級そうなネグリジェ。彼女のたわわな乳房が大きく開いた胸元の隙間から溢れ落ちそうだった。
そして彼女のお尻が、俺の下半身に乗っている事に気付いてしまった。
俺は純情な十六歳の少年ではない。
既に前世ではオッサンだったわけだし、そういう状況になったら容赦なく反応してしまうものだ。
「起こしちゃいましたわね。先生。あら?コッチの方も……」
「ちょ……れ、レイチェル……さん?」
思わず敬語になってしまう俺。だって相手は超絶歳上だと知ってしまったし。しかもこの状況。
色んな意味でマウントを取られてるわけで。
「先生?昼間のアレ……したくありませんの?」
「アレって……」
「私……先生が欲しいの。きっと、気持ち良いですわ」
(こんな嬉しい……いや、けしからん展開は夢だ!きっと夢に違いない!このままでは不味い)
レイチェルが俺の顔に柔らかな胸を押し当ててきて、俺はもう我慢の限界だった。
男なら……いや、オッサンなら間違いなくこんな事されたら誘惑に負ける。負けて当然。
だが――――ルカの顔が脳裏によぎった。
そういえば、ルカとセシルの婚約を阻止するのに俺もこの冒険に協力したのだった。
この世界の幼馴染みであり、密かに恋心を抱いていたりもあって途端に俺は冷静になった。
レイチェルの両腕を掴んで俺は彼女を引き離した。
「ごめん!やっぱり、これは不味いよ」
そして俺は気付いた。
彼女の胸元のネックレスのルビーの剣。それが一つしか無い事に。
俺が掴んだ左手には、紅く透明度のあるルビーの剣が握られている。いつから復元が完了していたのかは知らない。
だが、確実にその剣は俺に向けられる予定のモノだとは分かる。
彼女の腕を握っていなかったら、今頃俺はどうなっていたのだろう。だが、それだけではない気がした。
もっと早く俺を殺れた筈だ。何かしら彼女にも理性とか、躊躇いがあったのか。
「失敗しちゃいましたわね……」
「ど、どうして?こんな……」
「私は魔王側の人間なのですわ。そして、カリザリスを殺したのは先生ですわよね?」
魔王と言われて思い出す。
魔王軍、四魔将の一人。剣撃のレイチェル。
四魔将の剣使い。そして、ゲーム内唯一の召喚魔法使いで、次々と厄介な魔物を召喚しては去っていき、なかなか本体と戦えないウザイ奴。
しかし――――キャラデザが違う。
こんな可愛い女の子じゃなくて、もっと寸胴で全身甲冑姿で例えるならば、魔◯村のアーサーみたいな感じだった筈だ。
何故こんなエロエロ誘惑キャラになったのか。
実は鎧を脱いだらこんな感じでした!みたいなノリだろうかと戸惑う。
完全に別人使ってるだろ系の、ダイエット食品のビフォーアフターみたいな変わり様だ。
そして俺は殺されかけてるのか。
それとも逆レイプ状態なのか、どっちなのだろうかと考えていた。
だが、その程度だ。決してハイドの迷宮を切り抜けられるようなレベルとは言えない。やはりこの世界の人間では、剣は使い物にならないのか。
俺の身体が特別、この世界のシステムとは異端であるのは確実だ。
(しかし、レイチェルは何か、剣以外にも優れているモノがあるのだろうか?)
考えても分からないが、俺達が宿屋に戻る頃にはルカとベネットが既に待ちくたびれていた。
ルカはどこか不機嫌だし、ベネットはそんなルカの気持ちを代弁するように文句を言う。
「遅いですよ!御飯の時間には戻ってくださいね」
「あぁ、悪い。彼女の剣術を見てたんだ」
「ルシアン様はデレデレし過ぎです!」
そんなつもりは微塵も無かったのだが、何か当たられたような感じで、少しベネットにも尻込みしてしまう。
(これ、ハーレムってより。俺が女達の奴隷なんじゃないか?)
レイチェルは大人の余裕なのかニコニコとしている。
彼女の年齢をここでネタにすれば、一気に場の空気を変えられる自信はあるのだが。
さすがに理由を考えると、ネタにするのは違うだろうと思える内容なのでここはとりあえず控えた。
すると、ベネットが突然その話題を出す。
「そういえば。伯爵様は今、おいくつなのですか?」
「――――私は……」
「俺と同じだってよ。あと、伯爵様って呼び方もやめようぜ。もう伯爵じゃないって言ってただろ?何か堅苦しいしな」
「そっか!そうですね。レイチェル様って呼びますね!」
「様はいらねぇと思うけど。ベネットに言ってもそこはムリだな。アハハ」
俺の一言でベネットが笑い。ルカも『確かに!』っと笑って相槌を打ってくれた。
レイチェルも笑った。
何故俺がレイチェルを庇ったのかは正直分からなかった。
彼女は案外、本当に気にしていないかも知れないが、俺だったら気にすると思ったからかも。
とにかく雰囲気は良くなり、そのまま本日は終わりを向かえそうだ。宿は、俺が一人部屋。女三人は三人で一部屋。
思えば最初は、ルカと一緒な部屋に寝る事になるかも……なんて期待もあったのを思い出すが。
今となっては百パーセントあり得ない話になってしまった。
明日は七番目の泉を求めて、とりあえず王都を目指す。
シナリオ的には、もうすぐ滅びる予定の王国だとは思うが。
そこさえ行ってしまえば残りの四番、五番、と戻って。そのままベネットのおじいさんの所まで戻ればムダが無いはずだ。
ゲーム製作者ならではの最高効率スケジュールだ。
明日からはまた暫く歩かなきゃ行けない。
今日は早めに寝る事にした。
――――――――――
ふと、気配を感じて目を覚ました。
辺りの静けさと空気感から、まだ朝では無い気がする。半分寝惚けていた俺は次の瞬間、自分の身体に起きている異変に驚きすぎて一瞬声も出なかった。
寝ている俺を押さえ付ける様にレイチェルが跨がっていた。
その姿はドレスでは無く、高級そうなネグリジェ。彼女のたわわな乳房が大きく開いた胸元の隙間から溢れ落ちそうだった。
そして彼女のお尻が、俺の下半身に乗っている事に気付いてしまった。
俺は純情な十六歳の少年ではない。
既に前世ではオッサンだったわけだし、そういう状況になったら容赦なく反応してしまうものだ。
「起こしちゃいましたわね。先生。あら?コッチの方も……」
「ちょ……れ、レイチェル……さん?」
思わず敬語になってしまう俺。だって相手は超絶歳上だと知ってしまったし。しかもこの状況。
色んな意味でマウントを取られてるわけで。
「先生?昼間のアレ……したくありませんの?」
「アレって……」
「私……先生が欲しいの。きっと、気持ち良いですわ」
(こんな嬉しい……いや、けしからん展開は夢だ!きっと夢に違いない!このままでは不味い)
レイチェルが俺の顔に柔らかな胸を押し当ててきて、俺はもう我慢の限界だった。
男なら……いや、オッサンなら間違いなくこんな事されたら誘惑に負ける。負けて当然。
だが――――ルカの顔が脳裏によぎった。
そういえば、ルカとセシルの婚約を阻止するのに俺もこの冒険に協力したのだった。
この世界の幼馴染みであり、密かに恋心を抱いていたりもあって途端に俺は冷静になった。
レイチェルの両腕を掴んで俺は彼女を引き離した。
「ごめん!やっぱり、これは不味いよ」
そして俺は気付いた。
彼女の胸元のネックレスのルビーの剣。それが一つしか無い事に。
俺が掴んだ左手には、紅く透明度のあるルビーの剣が握られている。いつから復元が完了していたのかは知らない。
だが、確実にその剣は俺に向けられる予定のモノだとは分かる。
彼女の腕を握っていなかったら、今頃俺はどうなっていたのだろう。だが、それだけではない気がした。
もっと早く俺を殺れた筈だ。何かしら彼女にも理性とか、躊躇いがあったのか。
「失敗しちゃいましたわね……」
「ど、どうして?こんな……」
「私は魔王側の人間なのですわ。そして、カリザリスを殺したのは先生ですわよね?」
魔王と言われて思い出す。
魔王軍、四魔将の一人。剣撃のレイチェル。
四魔将の剣使い。そして、ゲーム内唯一の召喚魔法使いで、次々と厄介な魔物を召喚しては去っていき、なかなか本体と戦えないウザイ奴。
しかし――――キャラデザが違う。
こんな可愛い女の子じゃなくて、もっと寸胴で全身甲冑姿で例えるならば、魔◯村のアーサーみたいな感じだった筈だ。
何故こんなエロエロ誘惑キャラになったのか。
実は鎧を脱いだらこんな感じでした!みたいなノリだろうかと戸惑う。
完全に別人使ってるだろ系の、ダイエット食品のビフォーアフターみたいな変わり様だ。
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