魔法主義世界に魔力無しで転生した俺は、無能とバカにされつつも無能の『フリ』して無双する

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レイチェルが熟女すぎた話

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 単純にこの世界で剣術の稽古(しかも二人で)なんかやっていたらバカにされる。
 レイチェルは気にしないのか?そう思うと、何だか今までの俺がスゴく小さい人間に思えてくるのだ。

「先生?どうします?人目につかない所……イキます?」
「え、えぇ!ちょっとレイチェル。近いって!」

 俺の身体に彼女の身体が密着してきて、さっきまで小さく思えていた自分が大きくなっていく…………別の所が。
 身体で払えとは一言も言ってない。レイチェルは大きく勘違いしていた。

「あのさ。そういう事じゃなくて、レイチェルは恥ずかしくないのか?」
「恥ずかしいですわ……こんな所で裸になるな……」
「ちがーう!そうじゃなくて」
「――――?」
「剣術なんて、人に見られたらバカにされる技術だろ。だからレイチェルは、人前で剣を持ち歩かないんじゃないのか?」

 レイチェルは不思議そうに首を傾げた。

 彼女は剣を持ち歩いていなかった。
 正確には彼女の剣は、魔法によって小型化されている。
 物を小さく縮小したり元に戻したり。行商人とかでたまに使う者がいる便利魔法だ。
  今も彼女の豊かな胸元には、ルビーで造られた剣が二つぶら下がっていた。

 もう一つあったらしいが、スカルドラゴンに折られたと言っていた。魔法による小型化は便利。
 だが弱点として、魔法で復元して使うので咄嗟に使えない。
 戦闘中に折れたり、急に襲われたら、何本剣を持ってても復元するまでに攻撃されてしまう。

「私は邪魔で重いから実寸で持たないだけですわ。それに剣術が恥ずかしい?今の時代の人はそんな考えを持っていますの?」
「今の……って。そんなのずっと昔から……」

 途中まで言って俺は思い出す。
 貴族の話の時にレイチェルは答えた。伯爵だったのはの話だと。
 大昔とは一般的にどれくらいだろうか。単純に百年……もっと前か。しかも彼女は伯爵家の家系とかでは無く、自身が伯爵だったと話していたのだ。

(あれ?じゃあ彼女は、伯爵だった大昔から生きてるって事?)

「聞いてなかったけど、レイチェルって何歳?」
「覚えてませんわ。大体、四百年は生きてますもの」
「…………。」
「あら。やはり驚きますわよね」

 開いた口が暫し塞がらなかった。
 その年齢から考えると彼女は人では無い。長寿の種族と言うとドワーフとか……いや、あり得ない。
 彼女はそこまで身長が低くないし、そもそもドワーフなら三百年がやっとで、四百年は生きられないのだ。
 ではエルフか。
 確かにエルフなら四百年は生きる。しかし、容姿はさすがに老ける筈。そもそも、エルフの特徴である尖った耳が彼女には無い。

 他は――――
 考えたくは無いが、アンデットの可能性だった。
 いや、それはもはや生きていない。

「フフフ。私は人間ですわよ?」

 悩む俺にレイチェルは笑顔で答える。しかし――――

「人間って。この世界がいくら魔法世界でも、人の寿命はせいぜい百年くらいだろ?」
「可能ですわよ。プシュケスフィアで封印されし者なら」

 あまりに唐突に、メインクエストに絡むような言葉が飛び出してきて俺は驚いた。
【プシュケスフィア】それは禁断とされた魔法。
 その効果は『生ある者の魂を水晶玉に封じ込める』

 プシュケスフィアで魂を水晶玉に封じ込められた物の肉体は、永遠に老いない。
 しかし、その水晶を破壊された時。魂は解放され、肉体は滅びる。

 聞けば都合の良い不老不死の魔法に感じられるが、その本質は単なる魂の牢獄だ。
 肉体は、歳をとらないが死なないわけでは無い。しかも肉体が破壊された場合でも、水晶玉が砕かれなければ魂は死なない。いや……
 以後、魂は水晶玉の中で永遠の痛みと、苦しみを味わう事になる。

 嘗て、この世界を支配した魔王がいた。
 その魔王は、死せど死せど新たな肉体を獲て甦る、魂の再起能力を持つ者だった。
 そこでゼクルート王国の名高い大賢者が、プシュケスフィアを使い、魔王の魂を水晶玉に閉じ込めたのだ。
 魔王は、死んでも新たな肉体へと移る事が出来なくなり。そして遂に魔王の肉体は討たれた。

 魔王の魂は水晶玉の中。逃げられず、永遠の苦しみと共にそこで生き続ける事となったのだ。
 その水晶玉が、いつからか【再起の宝玉】等と呼ばれ。ゼクルート王国の地下に長い長い年月の間、封印されていたのだ。

 ゲーム、【マジックイーター】のメインクエストではゼクルートにある魔王の魂を封じた再起の宝玉が奪い取られる。そして、宝玉が割られ魔王は復活した。
 プレイヤー達は魔王を再び封印する為の魔法、プシュケスフィアを身に付ける為。魔力の泉を巡り力をつける……というのが大筋の話だった。

(魔王以外にもプシュケスフィアを受けた者がいたのか。そういえばいたかも?何年も前の事だから覚えてないな……)

 プシュケスフィアは別に魔王を封印する為に作られた魔法では無い。昔は使える者も何人かいたという設定。
 彼女はその設定の犠牲者とも言えるわけだ。少し罪悪感。

「レイチェル。君は……」
「気にしないでくださいな。私は、この世界で足掻き生きてきたのですわ」
「じゃあ、君の水晶玉は?」
「それは…………いや、分かりませんの。でも別にいいのです。危うく死んで苦しみ続ける所でしたが。先生が助けてくださいましたし」

 レイチェルが少し戸惑ったように見えた。
 本当は自分の宝玉の在りかを知っているのだろうか……とも、俺は考えた。
 まぁ、何かを背負って生きているのは間違いないだろう。

「湿っぽいのは嫌いですのよ、先生。さぁ、時間がありませんわ。人の居ない所へ行きましょう」
「そうだな!よし、始めよう!」
「やっぱりセックスしたいのですのね、先生。フフフ」
「だから、違うって!」

 これが大人の……いや、熟女のエロジョークか。と、俺は急にレイチェルに対して尻込みしてしまう。
 
(あの年齢なら、きっと酸いも甘いも分かってるんだろなぁ……。完全に手玉に転がされそうだわ)

 そして俺はレイチェルと日が暮れるまで稽古をした。
 もちろん、剣術のだ。
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