魔法主義世界に魔力無しで転生した俺は、無能とバカにされつつも無能の『フリ』して無双する

エンドレス

文字の大きさ
上 下
21 / 79

王都での三日間は濃い

しおりを挟む
 ガーゴイルの軍団は魔将カリザリスが死んだ途端、撤退を始めた。多くの犠牲者を出したが、ゲームではサラン王国自体が既に半分壊滅していたのだ。
 それを考えるとかなり健闘したと言える。
 暫くは亡くなった人達を埋葬したり、ガーゴイルの死体を始末したりで忙しい日々が続いた。

 俺達も関わったからには無視出来ない。なんやかんやで三日程をこの街で過ごしていた。
 そんな三日目の朝。漸く落ち着きを取り戻した俺達は、玉座の間にて国王に謁見を許された。

「――――つまりは、そなた達のお陰だ。見た通りバタバタしており何のもてなしも出来ておらぬが、儂に出来る事ならば何なりと申せ。若き勇者よ」
「それでは王宮の抜け道を使わせて下さい。僕達は魔力の泉が目的だったのですが、出来れば時間はかけたくありませんし」

 周りの者達がざわついた。
 王宮の抜け道とは、玉座の下からこの城の地下にある魔力の泉までの最短ルートの事で、その事を知ってるのは一部の王国関係者だけだからだろう。

 ゲームでは城が既に半壊しており、秘密の抜け道は【泉の迷宮】からの帰りでしか使えない。迷宮側から瓦礫を退かさないと玉座の所に抜けられないからだ。
 で――――その泉の迷宮の正規のルートだが。
 城下町の外から地下に潜り、迷宮を攻略して進む必要ある。本来なら冒険者は、そこからしか泉には向かえないのだ。
 その帰り道で玉座の下に抜ける道は見付けられるのだが……それでは帰りが楽になるだけだ。

 それを最初から、玉座の下のルートでワープさせろって要求を俺は出した。
 意外と国王は何も問う事なく快く受け入れてくれた。これで、この第三の魔力の泉は五分で終わるヌルゲーになった。

「他には何も要らぬのか?魔力の泉等はルシアン殿ならば本来苦労する事でもなかろう。裏道を使わせるだけでは褒美にもならんというものじゃ」
「うーん……そうですね。今は特に……」
「アレを下さい!」

 ルカが突然玉座の後ろを指差して叫ぶ。
 そこにあるのは大きな、大きな国旗だ。

(うげっ!マジかこいつ!)

 俺は咄嗟に小声でルカに注意する。

『お前!なに考えてるんだ。国を欲しがるとか!バカなのか?』
『誰がそんな事言ったのよ!アレよ!剣よ!』

 どうやら国旗ではなく、国旗の更に上に飾られている青い剣の事を言ってるようだ。どちらにしても国を司る物だと思うが。

「ほう。何故アレに目をつけたのだ?」
「アレって、魔鉱石で作られてますよね?」
「そなた。まさか魔力が見えるのか?」
「少しだけですが……」

(なにぃ!初耳だぞ!それってお前!)

 この世界には稀に存在する。
 魔力を可視出来る者が。
 本来は見えない物なのだが、俺はその存在を最も警戒していたのだ。何故なら、俺に魔力が無い事を確実に知る方法だからだ。

「なるほど。残念だが、それだけは無理だ。アレは我が国の王に代々伝わる神聖なる。譲る事は出来ぬ」

 剣とは言わず『モノ』と表現する時点で、いかに剣の存在価値が薄いのかを思い知らされる。
 確かにあの剣を貰えたら、俺には相当喜ばしいのだが。でも、ルカは俺の事を考えて言ってくれたのだと、少し嬉しくもあった。

「だが、そなたの欲しいモノは分かった。ここから北へ少し行った所にドワーフの街があり、腕の良い職人がおる。その者に頼めば同じモノも作れよう。何せコレも大昔のドワーフが作ったと伝えられるモノだからな」
「でも、肝心の材料が……」
「魔鉱石ならある。純度の高い物だ。それを授けよう」

 ――――――――――

 国王との謁見は終わった。
 それから一時間後。レイバンの案内で、誰も居なくなった玉座の間に案内され。秘密の抜け道を使わせてもらえる事になった。

 なんたる簡単な事か。
 ここの地下迷宮はなかなか大変な事で有名だったが、ゲームならばチートとも言える行為により、アッサリと三つ目の泉はルカとベネットの体へと浸透していった。

 そして。再び玉座の間へ戻った所、サラン国のお姫様らしきドレス姿の女性がそこに待っていたのだ。
 その横には、従者らしき者が凄く重そうに魔鉱石を抱えていた。

「勇者様。こちらを国王陛下より預かっております。どうかお使いくださいませ。そして、この度は本当にありがとうございました。私からも心よりの感謝を申し上げます」
「あ……いえ。こ、こちらこそ感謝申し上げます」

 一体、何を感謝申し上げたのか。
 突然目の前にシンデレラが現れたので俺はテンパッた。そのまま苦笑いで、従者が一生懸命持つ魔鉱石を片手でヒョイと持ち上げると、従者とシンデレラが驚きの顔を見せる。
 だが、とりあえずその場を早く離れたくて、ペコペコと頭を下げながら俺は逃げるように玉座の間を出た。

「ちょっとルシアン。しっかりしてよ」
「ルシアン様は、とても強いけど。偉くはなれませんね」
「うるさいな……それよりルカ。お前、魔力見れたのか」

 もし本当なら、俺はとっくに見破られていた事になる。

「うん。少しだけどね」
「じゃあ俺が魔力無いの知ってたのか?」
「うん……」

 ルカは言う。十歳の時から知っていたのだと。
 俺が隠し続けるから言えなかったようだ。俺はずっとルカに気を遣わせていたのだ。

「だから言ったじゃん。私はルシアンを無能だなんて思わないって。
 だって、魔力がないのに魔法使いのを続けるんだよ?
 そんな事、無能な人に出来ない。
 ずっとバカみたいに演技し続ける。それは才能なんだよ。
 使えもしない魔法名叫んで杖を振る?私には出来ないよ。そんな事続けたら精神的に病んじゃうもの。
 そんな辛い思いするなら、幼馴染みとかに相談して楽になろうとするもの。だからルシアンは凄いよ!」
 
 とりあえずルカは、俺に積年の恨みを持っている事がわかった。どうやら隠し続けたのは間違いだったようだ。
 隣でベネットが笑いを堪えているのが伝わる。その表情がとっとこハ○太郎みたいだからだ。

 顔から火が出るとはこの事か。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…

小桃
ファンタジー
 商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。 1.最強になれる種族 2.無限収納 3.変幻自在 4.並列思考 5.スキルコピー  5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

処理中です...