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その剣術、運命をも斬り裂く
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魔王軍、四魔将。
それは魔王軍の中で権力を持つ四人の将軍。
まぁ、そのまんまなのだが。何となくこういう強キャラが敵にいないと盛り上がらないだろうとの事で設定された。
所謂、ボスキャラだ。
この世界の基本は魔法使い。そして魔法使いが近接攻撃に弱いというのは、もはやセオリーである。
なんだかんだで、セオリー通りは売れるのだ……
それはさておき。
上記の理由から【マジックイーター】では、主人公達に立ちはだかる強キャラは必然的に近距離攻撃が多い。
四魔将が一人『カリザリス』も勿論である。
その姿は、当時流行ってたキ○肉マンという漫画に出てくる、バッファ○ーマンというキャラにクリソツでパクリだと騒がれた。
作った当時は、そんなに流行ると思わなかったから適当にやっていたのだが。売れるようになってくると版権とか、そういうのが途端に煩くなって来て面倒だった記憶がある。
そういうのもあって、自分で管理する事を投げ出したという一面もあるのだが。
とにかく、カリザリスは格闘系のキャラで物理攻撃のみのスタイル。
鉄の様に鍛えられた強靭な肉体を持ち、その拳の一振は百人をなぎ倒す!という設定だったはず。
ちなみにプロレス技は使わない。
しかも、四魔将の中では一番下の扱い。
だが、異常な体力の多さは『一番面倒』等とプレイヤー達に嫌われ、カリザリスとの最後のイベントバトルはゲームの鬼門とまで言われていた。
それ以前にも度々イベントで名前が出るのだが。彼の卑劣で残酷な性格はゲームの枠を出て、掲示板サイトなどで叩かれまくっていた程だ。ある意味可哀想な奴だった。
そんな性格にした俺も叩かれたのだが。
終いにはベネディクトリーヌもおじいさんも救えないので、あのイベントはクソイベと認定されている。
そのカリザリスが目の前で暴れている事に俺は驚いた。
しかし、この王都での戦いは本来主人公は立ち会わないのだ。つまり、ここにカリザリスが居たかなんて事は、分からなくて当然なのかもしれない。
「くそぉ!この化物がぁ!」
直ぐ横を走り抜けて行った者の怒号で俺は我に返った。
それはレイバンだ。
俺の鼻先に僅かに甘い大人の女性の香りを残して、魔族の将軍目掛けて駆けていた。幾つかの魔法攻撃を繰り出しながら……。
そして、その全てがカリザリスに命中した。しかし、奴は少しよろめいたくらいだ。
それどころか次の瞬間。一気に詰め寄ったカリザリスの重いパンチがレイバンの腹部をピンポイントに捉えた。
彼女は国道のど真ん中でポイ捨てされた空き缶の様に、何度も不規則に地面の上をバウンドしながら吹き飛び……動かなくなった。
直ぐにベネットがレイバンの元に向かい回復魔法を施す。
ルカは、カリザリスの注意を自分へと逸らすかの様に風魔法を放った。
現段階のルカの魔法など、魔将を務める奴に掠り傷すら与えるはずもなく。男は身動き一つせずに、目だけをギョロリとルカに向けた。
(まずい!ルカが狙われる!)
そう思った途端。俺の身体は何かに突き動かされるように飛び出していた。思えばウェレル大空洞でもそうだった。
突然信じられない程の力が湧いて来て、時間がユックリ流れるが如く俺の身体が加速するのだ。
俺は剣をカリザリスに振り下ろした。
慌てて奴は間一髪交わしたが、左腕だけは切断した。恐ろしく固い腕に刃が通る瞬間は、俺の手が痺れたくらいだ。
今は、その断面から骨と肉が見え、大量の緑色の血が流れている。
(見た目人間だけど、血は緑なんだなぁ)
等と、そこまで細かく設定しなかった事実に驚かされる。だが俺は正直これはチャンスだと思った。
今の俺は剣で堂々と戦える。これならカリザリス相手でも遅れは取らないだろう。そしてここで奴を殺っておけば、例のクソイベを将来的には無くせる。
つまりは、ベネットの死を回避できるのだ!
「グウゥ!キサマ。イマ、ナニヲシタ!」
「腕を斬っただけだが?悪いが、お前にはここで退場してもらわないとダメなんだ」
都合良くカリザリスと出会えた。それでいて今の俺は剣。負ける気がしないのだ。
(やっぱアレか?飛竜の上で空気読んだからか?)
魔法剣の存在を知れた。
カリザリスとここで出会えた。
後はここで奴を倒せれば最高に良い結果だ。全てがルカに真実を話した事による恩恵と考えるにはアレだが。俺の特性とはそういう無茶苦茶なご都合主義を引き起こす力なのは確か。
「ワレハ、マオウグン、ヨンマショウ。カリザリス、ナリ!」
「うん。知ってる」
「ナンダト!?」
「お喋りはここまでだ……」
片言の言葉にも面倒くさくなり、俺は剣をカリザリスの首元目掛け横に振り払った。それを奴は身を捩ってかわす。だが、最初の一振は避けられるのが分かっていた。
直ぐに見えない程の速度で本命の一撃が奴の横っ腹に返る。
驚きで口を大きく開けたカリザリス。
その身体に剣が斬れ込んだ瞬間、もの凄い抵抗力を感じる。さすがに筋肉の厚みが違う。
だが――――
「これでクソイベは終了だぁ!」
剣はカリザリスの腹の筋肉の中を真横に移動していく。
それは一瞬の事だろうが妙に長く思える。その途中、あまりの負荷に俺の剣がバキンと折れた。
しかし直後。奴の身体も二つに折れた。
辺りに緑色の血液が噴き上がり、大きく口と目を開けたままカリザリスは地面に倒れた。
何かを殺した時。魔法と剣で大きな違いが一つあった。
それは死に方であり、魔法ではそうそう肉体を切断する事はないが、剣の場合。それは酷い光景となる。
多くの者がその死に様を見て口に手をあてる。
(これが、数字が無くなって消滅するだけのゲームと現実の違いだな。気持ち良いもんじゃねぇわ)
俺は子供の頃から剣で魔物を狩り、その死に様を目にしてきた。それでも俺には剣しかないのだ。
それで誰かを守れるなら俺は容赦しない。
それは魔王軍の中で権力を持つ四人の将軍。
まぁ、そのまんまなのだが。何となくこういう強キャラが敵にいないと盛り上がらないだろうとの事で設定された。
所謂、ボスキャラだ。
この世界の基本は魔法使い。そして魔法使いが近接攻撃に弱いというのは、もはやセオリーである。
なんだかんだで、セオリー通りは売れるのだ……
それはさておき。
上記の理由から【マジックイーター】では、主人公達に立ちはだかる強キャラは必然的に近距離攻撃が多い。
四魔将が一人『カリザリス』も勿論である。
その姿は、当時流行ってたキ○肉マンという漫画に出てくる、バッファ○ーマンというキャラにクリソツでパクリだと騒がれた。
作った当時は、そんなに流行ると思わなかったから適当にやっていたのだが。売れるようになってくると版権とか、そういうのが途端に煩くなって来て面倒だった記憶がある。
そういうのもあって、自分で管理する事を投げ出したという一面もあるのだが。
とにかく、カリザリスは格闘系のキャラで物理攻撃のみのスタイル。
鉄の様に鍛えられた強靭な肉体を持ち、その拳の一振は百人をなぎ倒す!という設定だったはず。
ちなみにプロレス技は使わない。
しかも、四魔将の中では一番下の扱い。
だが、異常な体力の多さは『一番面倒』等とプレイヤー達に嫌われ、カリザリスとの最後のイベントバトルはゲームの鬼門とまで言われていた。
それ以前にも度々イベントで名前が出るのだが。彼の卑劣で残酷な性格はゲームの枠を出て、掲示板サイトなどで叩かれまくっていた程だ。ある意味可哀想な奴だった。
そんな性格にした俺も叩かれたのだが。
終いにはベネディクトリーヌもおじいさんも救えないので、あのイベントはクソイベと認定されている。
そのカリザリスが目の前で暴れている事に俺は驚いた。
しかし、この王都での戦いは本来主人公は立ち会わないのだ。つまり、ここにカリザリスが居たかなんて事は、分からなくて当然なのかもしれない。
「くそぉ!この化物がぁ!」
直ぐ横を走り抜けて行った者の怒号で俺は我に返った。
それはレイバンだ。
俺の鼻先に僅かに甘い大人の女性の香りを残して、魔族の将軍目掛けて駆けていた。幾つかの魔法攻撃を繰り出しながら……。
そして、その全てがカリザリスに命中した。しかし、奴は少しよろめいたくらいだ。
それどころか次の瞬間。一気に詰め寄ったカリザリスの重いパンチがレイバンの腹部をピンポイントに捉えた。
彼女は国道のど真ん中でポイ捨てされた空き缶の様に、何度も不規則に地面の上をバウンドしながら吹き飛び……動かなくなった。
直ぐにベネットがレイバンの元に向かい回復魔法を施す。
ルカは、カリザリスの注意を自分へと逸らすかの様に風魔法を放った。
現段階のルカの魔法など、魔将を務める奴に掠り傷すら与えるはずもなく。男は身動き一つせずに、目だけをギョロリとルカに向けた。
(まずい!ルカが狙われる!)
そう思った途端。俺の身体は何かに突き動かされるように飛び出していた。思えばウェレル大空洞でもそうだった。
突然信じられない程の力が湧いて来て、時間がユックリ流れるが如く俺の身体が加速するのだ。
俺は剣をカリザリスに振り下ろした。
慌てて奴は間一髪交わしたが、左腕だけは切断した。恐ろしく固い腕に刃が通る瞬間は、俺の手が痺れたくらいだ。
今は、その断面から骨と肉が見え、大量の緑色の血が流れている。
(見た目人間だけど、血は緑なんだなぁ)
等と、そこまで細かく設定しなかった事実に驚かされる。だが俺は正直これはチャンスだと思った。
今の俺は剣で堂々と戦える。これならカリザリス相手でも遅れは取らないだろう。そしてここで奴を殺っておけば、例のクソイベを将来的には無くせる。
つまりは、ベネットの死を回避できるのだ!
「グウゥ!キサマ。イマ、ナニヲシタ!」
「腕を斬っただけだが?悪いが、お前にはここで退場してもらわないとダメなんだ」
都合良くカリザリスと出会えた。それでいて今の俺は剣。負ける気がしないのだ。
(やっぱアレか?飛竜の上で空気読んだからか?)
魔法剣の存在を知れた。
カリザリスとここで出会えた。
後はここで奴を倒せれば最高に良い結果だ。全てがルカに真実を話した事による恩恵と考えるにはアレだが。俺の特性とはそういう無茶苦茶なご都合主義を引き起こす力なのは確か。
「ワレハ、マオウグン、ヨンマショウ。カリザリス、ナリ!」
「うん。知ってる」
「ナンダト!?」
「お喋りはここまでだ……」
片言の言葉にも面倒くさくなり、俺は剣をカリザリスの首元目掛け横に振り払った。それを奴は身を捩ってかわす。だが、最初の一振は避けられるのが分かっていた。
直ぐに見えない程の速度で本命の一撃が奴の横っ腹に返る。
驚きで口を大きく開けたカリザリス。
その身体に剣が斬れ込んだ瞬間、もの凄い抵抗力を感じる。さすがに筋肉の厚みが違う。
だが――――
「これでクソイベは終了だぁ!」
剣はカリザリスの腹の筋肉の中を真横に移動していく。
それは一瞬の事だろうが妙に長く思える。その途中、あまりの負荷に俺の剣がバキンと折れた。
しかし直後。奴の身体も二つに折れた。
辺りに緑色の血液が噴き上がり、大きく口と目を開けたままカリザリスは地面に倒れた。
何かを殺した時。魔法と剣で大きな違いが一つあった。
それは死に方であり、魔法ではそうそう肉体を切断する事はないが、剣の場合。それは酷い光景となる。
多くの者がその死に様を見て口に手をあてる。
(これが、数字が無くなって消滅するだけのゲームと現実の違いだな。気持ち良いもんじゃねぇわ)
俺は子供の頃から剣で魔物を狩り、その死に様を目にしてきた。それでも俺には剣しかないのだ。
それで誰かを守れるなら俺は容赦しない。
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