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幼馴染みには通用しないのだが?

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 ◇◇◇

 ――――魔王軍本拠地、ヴィルゼフ・ヨハネの迷宮――――

「ガーゴイルは予定通り全滅……」
「それで?ベル。肝心のは離脱出来たのか?」

「問題ありません閣下。二体は爆死だったので一緒に燃えてしまいましたが、一体は胴体を切断された時点で離脱しました」
「そうか。必ず見付け出せ。あの地で間違いないはずなのだ」

「心得ております。それで宝玉は本当に必要無かったので?そちらもメカで偵察しますか?」
「必要ない。既に魔王様は動いておられるはず。王国の奴らはガーゴイルが来た事で混乱してるだろうがな」

「だからわざとガーゴイルを?」
「宝玉を狙うという事は未だ魔王様の復活が成されていない証。今後、奴等は死に物狂いで城の守りを固めるはずだ」

「足留めという事ですか……なるほど。だが、通常より弱いガーゴイルを使った事に対して、魔法士の一人がやや勘付いていたかもしれません」
「かまわん。確実性の無い答えからは愚策しか生まれぬ。勘づくような奴ならば余計に無駄な動きは出来ん」

「仰る通りですな。後一つだけ気になる事が」
「なんだ?」

「ガーゴイルの一体を切った魔法が妙です。低級風魔法の名を叫んでいたようなのですが。威力が上級魔法並でした」
「低級と考えていると寝首を掻かれるぞ。魔力が高ければ低級魔法でも別物になる。それとも新たな魔法だとでも?」

「それは何とも言いませんが。それを使ったのが王国の魔法士ではなく、普通の民のようでした」
「ほう……。たまたま居合わせた民がそんな魔力を持っていたのか。一応王国の者全員、注意して観察しろ。王国全体の戦力が増してきているのかもしれんからな」

「かしこまりました、閣下」
「早く魔王様と合流しなければな……」


 ◇◇◇


 冒険を許可された俺とルカは、翌日には王都を出た。
 プレーン家の馬車に乗せて貰うのは国境まで。ここから先は徒歩で、とりあえず近くの村を目指す。
 今日はそこで一泊して翌朝になったら、次の泉に近いウェレルの街へ向かって移動する予定だ。

「――――でも、何でお父様を説得したの?」
「それが筋ってもんだろ」
「付いて来てくれるなら、何も言わずに来ればいいのに」
「お前は親を何だと思ってるんだ?」
「ルシアンはたまにお父様みたいな事言うのね。同い年だと思えないわ」

 それは俺の年齢が見た目よりずっと上だからだろう。
 ルカは思った以上にイケイケな性格みたいだ。小さい頃から俺と付き合ってるうちに不良になってしまったのなら申し訳ない。

「大体、お前は良いのかよ?男と二人で旅するんだぞ?」
「別にいいよ。幼馴染みじゃん」
「そうだけど。これから毎日一緒の部屋に泊まる事になるんだぞ?」
「な、何で?別々の部屋でも良くない?ルシアンがそうしたいなら、私は別にいいけど……」

 ルカは急に黙りこくってしまった。
 完全に下手打った感じか。そもそも何故一緒の部屋だと思ったのかが自分でも分からないのだが。
 ゲームとかだと宿屋で二つ部屋借りたりはしないし。それが普通なのだと思ってしまったのだろう。

(ヤバイ、気まずくなった。これから一緒に旅するのに楽しくないのはしんどいな)

 こんな時でも使えるのが俺の特性【空気を読む】だ。
 どうでも良い事に神の恩恵を多用するものではないと思うが、ここは空気を読んでサラッとプラスに変える事にした。

「バカ、冗談だよ!トラベルジョークって奴だよ。俺だってお前と一緒の部屋なんてゴメンだよ。アハハ」
「そっか……。そうなんだ」

 一層気まずくなった。
 その後、俺とルカは小一時間以上も一言も喋らないという重く辛い時間が続いていた。

(あれ?空気読んだのに余計悪くなってね?トラベルジョークって言葉が意味不明すぎて、神様に理解出来なかったのかなぁ)

 何か話題がないか考えながら歩くが、こういう時に限って何も浮かばないものだ。思えば前世でも俺はコミュニケーション能力が低かった。
 前世の記憶が残っていると性格もそうそう変わらないものなのだ。
 そんな悩みを抱えながら歩いていたら、いつの間にか村の目の前まで来ていた。

『ようこそカプリコ村へ』と看板に書かれている。ルカに話題を振ろうと笑いながらジョークをかます。

「カプリコ村だってよ。美味しそうな名前だな。アハハ」
「おいしそう?何で?」
「え?……いや、何となく」

 カプリコ村が美味しそうという発想は何処から来たのか。多分前世の記憶から来たのかもしれないが、ルカは全く笑わない。重い空気は続く。

(俺、神様に見放されたのか?)


「お願いします!どうか、どうか!」
「足手まといはいらねーわ。悪いけど俺達、急いでるし」
「回復の水魔法なら使えます!」
「だから、いらねーって。しつこいぞ!」

 何やら村の中央で揉め事のようだ。
 ショートカットが似合う赤い髪の少し幼い感じの女の子。その女の子が四人組の男に付きまとっているようだ。
 女の子が複数にナンパされてるパターンなら分かるが、逆のパターンだった。
 男達の口調も荒くなっている。
 女の子は今にも蹴飛ばされてもおかしくない。これ以上はやめるように言ってあげようと俺は女の子に近付いた。

「あれ?無能じゃん」
「本当だ。無能がこんな所で何してんだよ」

 女の子に絡まれていた(多分違うが……)男達のうちの二人が俺に気付き声をかけてきた。俺もその男達を見て気付いた。

(なんだよ。学院のOBじゃねーか)

 四人組のうち二人は、俺が魔術訓練学院に入ったばかりの時にいた先輩だ。
 学院には年齢制限とか後も先も無いので、正確には先輩とかって概念は必要ないのだが。
 何となく俺より先に卒業した人間を先輩と呼ぶ習慣は抜けない。
 
「あ。どうも……先輩、お久しぶりです」
「なんだお前冒険者になったのか?畑でもやるんじゃなかったのか?」

 こんな所でも、俺はバカにされる対象でしかないわけだ。
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