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誘われる冒険……だが断る!
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ルカの家、プレーン家は代々司祭の家だ。
彼女はその家の一人娘。職業は大魔法使いで司祭でこそないが、適正は水と風の二つを持っている一級の魔法使い。
一方でセシルの家、パーティー家は代々宮廷魔術師の家。
そしてセシルは次男。彼の兄は賢者だが彼の職業は大神官だった。勿論セシルも一級の魔法使い。
大体想像つく話だが、ルカの父親はセシルを婿入れしたいのだ。セシル側は、いつでも受け入れるつもりだったようだが、ルカは断り続けていたらしい。
しかし、訓練生になる前。ルカは父親と約束したようだ。
「――――それで、私が学院を主席で卒業したら相手は自分で決めるって約束だったのよ。でもギリギリでセシルに負けちゃった」
「で……?何でそれが俺と冒険に行く話になるんだ?」
「光の魔法を覚えたいってお父様に頼んだ。それで、プレーン家は絶対に私が自分で引き継ぎたいって昨日話したのよ」
「で……?何でそれが俺と冒険に行く話になるんだ?」
「誰と行くんだ?って話になってさ……」
光の魔法は超上位魔法。
ゲームの時は魔力ランクを十以上にしないと光の魔法取得のクエストは受けられなかった。
そしてその為には最低でも、十回は大きな魔力上昇の恩恵を受ける必要がある。
一年前の滝の試練で既にルカのランクは二に上がっているが、最低でも後八箇所は魔力の泉を探さなきゃいけない。
「修行だけじゃムリよね?」
「ムリだな。頑張って魔力は上がってもランクは上がらないからな……でも、何で俺なんだ?」
「ルシアンがドラゴン倒した話はお父様に前言ってるから」
俺はルカの父親には好かれていない。
ルカと仲良く遊んでいたのは五歳までで、五歳の神事でルカの父親が俺の適正と職業を診断してからは俺との付き合いを良く思わなくなった。理由は言うまでもない。
俺が無能な平民だと分かったからだ。
だがルカはそれでも俺に付きまとっていた。
その度に彼女は家を抜け出したり、コソコソと隠れて俺の所に来るようになった為、俺は余計に嫌われたのだ。
変な男に騙され大事な娘が不良になってしまった感覚なのだろうと思う。
「お前、嘘ついてるだろ」
ルカは目を合わせないし、何も言わない。嘘をついてる証拠だ。あの親父が俺との冒険を許すはずがないのだから。
「光の魔法は諦めろ。そんな簡単なもんじゃねーぞ」
「じゃあ手伝ってくれないの?」
「俺にお前の命は預かれないよ。それに黙って家を出て来るつもりか?余計に……っておい!」
「もういい!一人で行くから」
ルカは走り去って行った。
(お前の親父にこれ以上嫌われたくないんだよ……)
正直、ルカに対して俺はいつからか『好き』という感情が少し芽生えていた。前世では女っ気のない人生だったし、この世界に来てからルカだけが仲良くしてくれていたのもある。
だからこそ距離をとっていたのだ。だが、セシルとルカが一緒になるのはもっとイヤだ。
仕方ないので何か別の方法を一緒に考えてやろうと思い、俺はルカの後を追った。
――――――――――
ルカを探して城下町をウロウロしたが彼女の姿は見付からない。まさか本気で一人で行ったりはしないだろうが、少し気になり出した。
と、そこでタイムリーな人物セシルと、ばったり会う。
「やぁ、ルシアン。お前は今後何をするつもりなんだ?平民らしく畑でも耕すのか?」
(こいつ、平民の農作業スキルを舐めてるな)
ゲームの時は平民職の奴がバザーで出す『質の良い野菜』や『質の良い果物』がないと上位の食料……つまり、良い回復系アイテムは作れなかったのだから。
「あぁ。そうだな。平民らしく畑も悪くないね。それより、ルカ見なかったか?」
「彼女なら中央の露店広場で見たが……何か用なのか?まぁいい……気軽に近付くなよ。彼女は僕の婚約者になるのだから」
(くそ。なんかムカつくな……やっぱりコイツにはルカを渡したくねぇわ)
俺は中央広場へ向かった。
広場に拡がる露店の数々は冒険者達もよく集まる。ゲームの時は生産系プレイヤーで埋め尽くされていたのを思い出す。
どうも、ルカは本気で冒険するつもりなのかもしれない。
人の多い中央広場でルカを探していると足元にスッと一瞬影が落ちた。この世界には雲が無い。あると言えば晴天か雨か雪。
雨や雪も雲が発生するのでは無く、空全体が灰色に染まって降ってくる。つまり、理由無く影が出来る事はない。
何かが太陽と俺との間に入り込まない限り――――
「キャー」「何だよあれ!」「何か飛んでるぞ!」
突然辺りが騒がしくなる。
空を見ると逆光で何か分からないが人の様なシルエットが三つ程移動していた。少しずつ目が慣れてきた頃、誰かが叫んだ。
「人だ!変な人だぞ!」
『変な人』と聞いて、思わず俺は笑いを堪えた。だがその正体を俺は知っている。あれはガーゴイルだ。
ガーゴイルとは本来、鬼とかに羽が生えた様な奇妙な生き物。ファンタジー系のゲームやアニメでは比較的定番の魔物だが、ここでは少し違う。
その姿はピエロの様な滑稽な顔をした素っ裸の人間で、羽では無くグライダーの様な物を身に付け、風魔法で空を飛ぶ【魔王軍】の兵士的存在。
(なんであんなデザインにしたんだろうな、俺……)
普通のガーゴイルにすれば良かったのだが、何か普通じゃない感を出したくて裸にしてみたのを思い出す。
性別は男。下半身の男の部分を丸出しにして『公然猥褻罪』待ったなしの空飛ぶ変態。
あの頃の俺は病んでいたのかもしれない。
ガーゴイルは剣を持っていて、それでのみ攻撃して来る設定だ。それなりの魔法使いならば近寄られる事も無く始末出来るので、雑魚敵に近い。
それより。ガーゴイルが来たと言う事は【マジックイーター】でいう所の『メインストーリー』の始まりを意味していた。
彼女はその家の一人娘。職業は大魔法使いで司祭でこそないが、適正は水と風の二つを持っている一級の魔法使い。
一方でセシルの家、パーティー家は代々宮廷魔術師の家。
そしてセシルは次男。彼の兄は賢者だが彼の職業は大神官だった。勿論セシルも一級の魔法使い。
大体想像つく話だが、ルカの父親はセシルを婿入れしたいのだ。セシル側は、いつでも受け入れるつもりだったようだが、ルカは断り続けていたらしい。
しかし、訓練生になる前。ルカは父親と約束したようだ。
「――――それで、私が学院を主席で卒業したら相手は自分で決めるって約束だったのよ。でもギリギリでセシルに負けちゃった」
「で……?何でそれが俺と冒険に行く話になるんだ?」
「光の魔法を覚えたいってお父様に頼んだ。それで、プレーン家は絶対に私が自分で引き継ぎたいって昨日話したのよ」
「で……?何でそれが俺と冒険に行く話になるんだ?」
「誰と行くんだ?って話になってさ……」
光の魔法は超上位魔法。
ゲームの時は魔力ランクを十以上にしないと光の魔法取得のクエストは受けられなかった。
そしてその為には最低でも、十回は大きな魔力上昇の恩恵を受ける必要がある。
一年前の滝の試練で既にルカのランクは二に上がっているが、最低でも後八箇所は魔力の泉を探さなきゃいけない。
「修行だけじゃムリよね?」
「ムリだな。頑張って魔力は上がってもランクは上がらないからな……でも、何で俺なんだ?」
「ルシアンがドラゴン倒した話はお父様に前言ってるから」
俺はルカの父親には好かれていない。
ルカと仲良く遊んでいたのは五歳までで、五歳の神事でルカの父親が俺の適正と職業を診断してからは俺との付き合いを良く思わなくなった。理由は言うまでもない。
俺が無能な平民だと分かったからだ。
だがルカはそれでも俺に付きまとっていた。
その度に彼女は家を抜け出したり、コソコソと隠れて俺の所に来るようになった為、俺は余計に嫌われたのだ。
変な男に騙され大事な娘が不良になってしまった感覚なのだろうと思う。
「お前、嘘ついてるだろ」
ルカは目を合わせないし、何も言わない。嘘をついてる証拠だ。あの親父が俺との冒険を許すはずがないのだから。
「光の魔法は諦めろ。そんな簡単なもんじゃねーぞ」
「じゃあ手伝ってくれないの?」
「俺にお前の命は預かれないよ。それに黙って家を出て来るつもりか?余計に……っておい!」
「もういい!一人で行くから」
ルカは走り去って行った。
(お前の親父にこれ以上嫌われたくないんだよ……)
正直、ルカに対して俺はいつからか『好き』という感情が少し芽生えていた。前世では女っ気のない人生だったし、この世界に来てからルカだけが仲良くしてくれていたのもある。
だからこそ距離をとっていたのだ。だが、セシルとルカが一緒になるのはもっとイヤだ。
仕方ないので何か別の方法を一緒に考えてやろうと思い、俺はルカの後を追った。
――――――――――
ルカを探して城下町をウロウロしたが彼女の姿は見付からない。まさか本気で一人で行ったりはしないだろうが、少し気になり出した。
と、そこでタイムリーな人物セシルと、ばったり会う。
「やぁ、ルシアン。お前は今後何をするつもりなんだ?平民らしく畑でも耕すのか?」
(こいつ、平民の農作業スキルを舐めてるな)
ゲームの時は平民職の奴がバザーで出す『質の良い野菜』や『質の良い果物』がないと上位の食料……つまり、良い回復系アイテムは作れなかったのだから。
「あぁ。そうだな。平民らしく畑も悪くないね。それより、ルカ見なかったか?」
「彼女なら中央の露店広場で見たが……何か用なのか?まぁいい……気軽に近付くなよ。彼女は僕の婚約者になるのだから」
(くそ。なんかムカつくな……やっぱりコイツにはルカを渡したくねぇわ)
俺は中央広場へ向かった。
広場に拡がる露店の数々は冒険者達もよく集まる。ゲームの時は生産系プレイヤーで埋め尽くされていたのを思い出す。
どうも、ルカは本気で冒険するつもりなのかもしれない。
人の多い中央広場でルカを探していると足元にスッと一瞬影が落ちた。この世界には雲が無い。あると言えば晴天か雨か雪。
雨や雪も雲が発生するのでは無く、空全体が灰色に染まって降ってくる。つまり、理由無く影が出来る事はない。
何かが太陽と俺との間に入り込まない限り――――
「キャー」「何だよあれ!」「何か飛んでるぞ!」
突然辺りが騒がしくなる。
空を見ると逆光で何か分からないが人の様なシルエットが三つ程移動していた。少しずつ目が慣れてきた頃、誰かが叫んだ。
「人だ!変な人だぞ!」
『変な人』と聞いて、思わず俺は笑いを堪えた。だがその正体を俺は知っている。あれはガーゴイルだ。
ガーゴイルとは本来、鬼とかに羽が生えた様な奇妙な生き物。ファンタジー系のゲームやアニメでは比較的定番の魔物だが、ここでは少し違う。
その姿はピエロの様な滑稽な顔をした素っ裸の人間で、羽では無くグライダーの様な物を身に付け、風魔法で空を飛ぶ【魔王軍】の兵士的存在。
(なんであんなデザインにしたんだろうな、俺……)
普通のガーゴイルにすれば良かったのだが、何か普通じゃない感を出したくて裸にしてみたのを思い出す。
性別は男。下半身の男の部分を丸出しにして『公然猥褻罪』待ったなしの空飛ぶ変態。
あの頃の俺は病んでいたのかもしれない。
ガーゴイルは剣を持っていて、それでのみ攻撃して来る設定だ。それなりの魔法使いならば近寄られる事も無く始末出来るので、雑魚敵に近い。
それより。ガーゴイルが来たと言う事は【マジックイーター】でいう所の『メインストーリー』の始まりを意味していた。
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