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クリエイター【颯斗・ユリアス・サカタ】のその後
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「サカタさんは現在三十八歳ですよね?ご結婚とかは考えていないのですか?」
「今は毎日ゲームの更新に追われていますので。一人でいるのが当たり前なんですよ。誰かとのんびり過ごしたいとは思いますけどね。ゲームを楽しみにしてる人達に悪くてなかなか……ね」
「そうですよね。私も休日はサカタさんの【マジックイーター】にドップリなんですよ!あはは。私はまだ全然更新を気にする程、先には進めていないですけどね。トッププレーヤーの方からしたら、やはり更新が待ち遠しいでしょうね」
この雑誌の対談から一年後。
俺、【颯斗・ユリアス・サカタ】こと坂田隼人はソフトウェア制作から脱退した。
自作ゲームのアップロードが主流になったのは既に五十年も前で、俺は二十七の時に自作ゲーム【マジックイーター】をフリーゲームサイトに投稿した。
そのゲームはYouTuberなどに紹介され、瞬く間にダウンロードとユーザー数が増えて。一年で日本の個人ゲーム配信サイトのランキングトップになったのだ。
驚く程の収入が入ってくるようになったが、俺は【マジックイーター】を有名ゲームメーカーに売却した。
正直これ以上面白いゲームを作れる気がしなかったし、やっぱり俺は遊ぶ側でいたかったのだ。
一生遊べる売却金額でゲームと豪遊の日々を過ごしていた俺だが、ある日不幸が起きた。
ながらスマホで赤信号の交差点に飛び出そうとしたチャリンコJKを止めようとした俺は、あろう事か自身がその自転車に突撃され車道に倒れた。
それから僅か二秒だ。
二秒後に俺の視界には車のタイヤが見えていた。おそらく頭蓋骨ごと潰され即死だったに違いない。
だが、そんな情けない死に方をしたのは今から十五年前。前世での話だ。
今の俺は、とある世界のとある王宮内にある大広間にて、とある試験を受けていた。
「次!ルシアン・ルーグ。前に来なさい」
「はーい。ぉねがいしゃーっす!」
「先ずは透視魔法からです。左から順に中の球の色を答えなさい」
「ふぁーい!赤、青、黄、薄い黄色、最後は何も入ってません!」
(何だ?何で先生はそんなに俺を見つめる?……何か下手したか?)
「…………残念。しかも全部バツ。ある意味さすがね、ルシアン」
「あざーっす!」
「はい。次……ルカ・プレーン」
全問不正解の俺が先生に一礼して、その場を離れると周りの魔法使いがクスクスと笑った。
『さすが無能のルシアン』『平民だし仕方ねーよ』
俺。疎外感。
そりゃあそうだ。何故ならこの世界では透視魔法なんて初級中の初級。それが全部外れるなんて絶対にあり得ないのだ。
(仕方ねぇじゃねーか。俺は魔法使えねーんだから)
だからこそ先生の後ろにいた同じ訓練生のセシルに合図してもらった通りに答えたのだ。
(ちっ。アイツ……やっぱり嘘つきやがったな。笑ってやがる。まぁ分かってはいたけどよ)
小さい事を気にする俺ではない。
セシルは自分の派閥には本当の答えを教えているが、俺みたいな無能はバカにする対象にしか見ていないからだ。
ところが――――
「はい。次……セシル・パーティー。あなたは失格」
「はい!……はい!?ちょっと先生!何で僕が?」
「あなた、何人かに不正をしてたでしょ?私を誤魔化せると思ったの?はい、失格。不正をしたのはあなた以外ではマルク、ランバ、ガネット……あなた達も失格よ」
セシルの悔しそうな顔がたまらない。
この試験は、ある特別クエストに参加出来るかどうかの一次試験だ。二十九名中、上位二十五名と決まっている。つまり四人は落ちる。
あの四人が落ちた事で全問不正解の俺でも見事一次試験通過となった。
(プププ……ざまぁ!おかげで助かったぜ)
本来なら俺がここで脱落していたはずだ。何故なら俺は魔力が無いので魔法が使えない。
この世界には魔法を使えない者など存在しないにも関わらずだ。
多くの人は【魔法使い】とか【神官】とか何らかの職業があるが最悪、底辺職業の【平民】だろうと魔法は使える。
――――だが。俺はガチで魔法が使えない【平民】だったのだ。ようするにクズだ。
だが、大人しくクズをやっていたのでは両親に今以上に迷惑がかかる。
「ルシアン。良かったね!」
「何だよルカ。どうせ二次で落ちるさ」
「そんな弱きにならないの」
(ルカの奴。くっついてくるなよな……)
ルカ・プレーンは俺の幼馴染。この世界で無能である俺の唯一の味方でもあるが、何せ纏わり付いてくる。
正直迷惑だ……いや、本心は違う……だが、俺は彼女を避けていた。
何故なら俺みたいな無能と仲良くしている事が彼女のマイナスになっているからだ。
ルカは家柄も良く、亜麻色の髪が美しい高貴で才能ある魔法使いだ。彼女の職業は【大魔法使い】
幼馴染だからって俺を気に掛けてくれるのは嬉しいが、そのせいで彼女の立場を危うくしてしまうのも確かだった。
(不良とゲーセンで楽しそうに遊ぶ生徒会長を見たら、誰でも疑惑を持つだろうしな)
そもそも俺がこんな不遇な状態に生まれ変わってしまった事がダメなのだが。
だが、俺にも打開策はある。魔法を使えない俺だが、全く使えないと知っている者は両親くらいではないだろうか。
それなりに俺は、人様に迷惑をかけないように演じる義務があると思っている。無能ならば無能なりに努力をしてきたのだ。
「次は中庭で二次試験ですよ。早く外に出なさい」
「今は毎日ゲームの更新に追われていますので。一人でいるのが当たり前なんですよ。誰かとのんびり過ごしたいとは思いますけどね。ゲームを楽しみにしてる人達に悪くてなかなか……ね」
「そうですよね。私も休日はサカタさんの【マジックイーター】にドップリなんですよ!あはは。私はまだ全然更新を気にする程、先には進めていないですけどね。トッププレーヤーの方からしたら、やはり更新が待ち遠しいでしょうね」
この雑誌の対談から一年後。
俺、【颯斗・ユリアス・サカタ】こと坂田隼人はソフトウェア制作から脱退した。
自作ゲームのアップロードが主流になったのは既に五十年も前で、俺は二十七の時に自作ゲーム【マジックイーター】をフリーゲームサイトに投稿した。
そのゲームはYouTuberなどに紹介され、瞬く間にダウンロードとユーザー数が増えて。一年で日本の個人ゲーム配信サイトのランキングトップになったのだ。
驚く程の収入が入ってくるようになったが、俺は【マジックイーター】を有名ゲームメーカーに売却した。
正直これ以上面白いゲームを作れる気がしなかったし、やっぱり俺は遊ぶ側でいたかったのだ。
一生遊べる売却金額でゲームと豪遊の日々を過ごしていた俺だが、ある日不幸が起きた。
ながらスマホで赤信号の交差点に飛び出そうとしたチャリンコJKを止めようとした俺は、あろう事か自身がその自転車に突撃され車道に倒れた。
それから僅か二秒だ。
二秒後に俺の視界には車のタイヤが見えていた。おそらく頭蓋骨ごと潰され即死だったに違いない。
だが、そんな情けない死に方をしたのは今から十五年前。前世での話だ。
今の俺は、とある世界のとある王宮内にある大広間にて、とある試験を受けていた。
「次!ルシアン・ルーグ。前に来なさい」
「はーい。ぉねがいしゃーっす!」
「先ずは透視魔法からです。左から順に中の球の色を答えなさい」
「ふぁーい!赤、青、黄、薄い黄色、最後は何も入ってません!」
(何だ?何で先生はそんなに俺を見つめる?……何か下手したか?)
「…………残念。しかも全部バツ。ある意味さすがね、ルシアン」
「あざーっす!」
「はい。次……ルカ・プレーン」
全問不正解の俺が先生に一礼して、その場を離れると周りの魔法使いがクスクスと笑った。
『さすが無能のルシアン』『平民だし仕方ねーよ』
俺。疎外感。
そりゃあそうだ。何故ならこの世界では透視魔法なんて初級中の初級。それが全部外れるなんて絶対にあり得ないのだ。
(仕方ねぇじゃねーか。俺は魔法使えねーんだから)
だからこそ先生の後ろにいた同じ訓練生のセシルに合図してもらった通りに答えたのだ。
(ちっ。アイツ……やっぱり嘘つきやがったな。笑ってやがる。まぁ分かってはいたけどよ)
小さい事を気にする俺ではない。
セシルは自分の派閥には本当の答えを教えているが、俺みたいな無能はバカにする対象にしか見ていないからだ。
ところが――――
「はい。次……セシル・パーティー。あなたは失格」
「はい!……はい!?ちょっと先生!何で僕が?」
「あなた、何人かに不正をしてたでしょ?私を誤魔化せると思ったの?はい、失格。不正をしたのはあなた以外ではマルク、ランバ、ガネット……あなた達も失格よ」
セシルの悔しそうな顔がたまらない。
この試験は、ある特別クエストに参加出来るかどうかの一次試験だ。二十九名中、上位二十五名と決まっている。つまり四人は落ちる。
あの四人が落ちた事で全問不正解の俺でも見事一次試験通過となった。
(プププ……ざまぁ!おかげで助かったぜ)
本来なら俺がここで脱落していたはずだ。何故なら俺は魔力が無いので魔法が使えない。
この世界には魔法を使えない者など存在しないにも関わらずだ。
多くの人は【魔法使い】とか【神官】とか何らかの職業があるが最悪、底辺職業の【平民】だろうと魔法は使える。
――――だが。俺はガチで魔法が使えない【平民】だったのだ。ようするにクズだ。
だが、大人しくクズをやっていたのでは両親に今以上に迷惑がかかる。
「ルシアン。良かったね!」
「何だよルカ。どうせ二次で落ちるさ」
「そんな弱きにならないの」
(ルカの奴。くっついてくるなよな……)
ルカ・プレーンは俺の幼馴染。この世界で無能である俺の唯一の味方でもあるが、何せ纏わり付いてくる。
正直迷惑だ……いや、本心は違う……だが、俺は彼女を避けていた。
何故なら俺みたいな無能と仲良くしている事が彼女のマイナスになっているからだ。
ルカは家柄も良く、亜麻色の髪が美しい高貴で才能ある魔法使いだ。彼女の職業は【大魔法使い】
幼馴染だからって俺を気に掛けてくれるのは嬉しいが、そのせいで彼女の立場を危うくしてしまうのも確かだった。
(不良とゲーセンで楽しそうに遊ぶ生徒会長を見たら、誰でも疑惑を持つだろうしな)
そもそも俺がこんな不遇な状態に生まれ変わってしまった事がダメなのだが。
だが、俺にも打開策はある。魔法を使えない俺だが、全く使えないと知っている者は両親くらいではないだろうか。
それなりに俺は、人様に迷惑をかけないように演じる義務があると思っている。無能ならば無能なりに努力をしてきたのだ。
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