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第二章 乙女ゲームの舞台、それはルミワ魔法学園!!
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「オッケーオッケー、記入漏れもないし、これで受理しとくよ」
「ありがとう、リュウちゃん」
「どーいたしまして♡」
リュウちゃんはそう言って、あざと可愛くウインクした。うん、かわいい! いやー、リュウちゃんは中身女の子だから普段はオネエっぽく見えるけど、見た目はかわいい系美少年だしね。眼福眼福。
あ、そうそう。レイン様は私と一緒にいるよ。暗示をかけなおしたから、人前に出ても大丈夫みたい。
・・・・・・そうだ、忘れてた。
「ねえ、リュウちゃん。その書類、科長さんに渡さなくちゃいけないんだよね?」
「うん」
「科長さんってどこにいるの?」
「ん? ここにいるよ?」
「え?」
「もしかして気づいてなかったの? 僕だよ、錬金術科の科長」
「「え゛」」
・・・・・・え、マジですか。リューちゃんが、錬金術科の科長!? この人が? 大丈夫か、錬金術科。リューちゃんが科長って・・・・・・そんなに人手不足なのかな。
リューちゃんは、その愛らしい見た目とちょっとおバカっぽい明るい性格についつい目が行きがちだが、実は、かなり有能だ。頭の回転も速いし、物事を先読みする癖があるので最悪の事態を避けて常に最善手を選択できる。人を率いるのに必要なカリスマ力もあるし、リーダーシップもある。ただし・・・・・・それはあくまでも能力のみで見た時のこと。彼の本質はまさに『遊戯に夢中になっている子供』というのが正しい。良く言えば、どんなことでも楽しく取り組める前向きな人。一般的には、無邪気だけど残酷な面も持つ恐ろしい人。
結構ひどいことを言うけれど・・・・・・リューちゃんに科長は向いていない。科長を支えるためにいる、側近的な立ち位置が一番適任だ。リューちゃんも「僕って、王様とか、そういうリーダー的な役って向いてないんだよね・・・・・・。だって、僕、縁の下の力持ちっていうか・・・・・・ぶっちゃけ影の支配者タイプだから」って、自分で言ってたし。いったい、どうしたんだ・・・・・・。
「えっとね・・・・・・僕もいやだって言ったんだよ? 3年生じゃないし、僕はリーダー向きじゃないって。むしろ副科長なら大歓迎☆って言ったんだよ? でも前科長が『できる、君ならできる。少なくともこいつらを科長にするよりお前を科長にしたほうがましだ。いいか、消去法だ。消去法で科長になれそうなのがお前しかいなかったんだよコンチクショウ!!』って言われてさ・・・・・・みんなも納得しちゃったんだよね」
「へ、へぇ~」
なるほど、やばいな。そんなに人をまとめられる人がいなかったのか・・・・・・。
「・・・・・・うちの科は、大体の人が研究に没頭しちゃうから、周りのことを把握できていないことが多いんだよね~」
あ、そっちの問題か。・・・・・・確かに、状況把握能力は必要だし。そう考えると、レイン様はよく周りのことを見ていたな~。私がピンチになった時には駆けつけてくれたし。
「まあ、そういうわけで僕が科長なんだよ」
「そっか~、リューちゃん、頑張ってね」
「うん、頑張るよ~!」
そう言ってへらへらと笑うリューちゃんは、ちょっと、疲れているように見えた。
++++++++++
私とレイン様は錬金術科の校舎を出て、行く当てもなく彷徨っていた。違う、学園の探検をしてるんだよ!! 決して、彷徨っているわけじゃないんだよ!! ホントだよ!!
学科申請が終わったら、あとはすることがないからね・・・・・・。せっかく時間があるんだからってことで学園の探索&秘密基地探しをすることになりました。人が来そうにないところを回ってみてるんだけど・・・・・・時々、聞こえてくるんだ。人々の悲鳴と、「とったどーーーー!!」と叫ぶ人の声が、複数。
・・・・・・間違っている。何かが間違っているよ。
あれ? 乙女ゲームって、こんな始まりだったっけ? 学科選択はボタン一つで決めてたからね・・・・・・。ええっと、確か・・・・・・。
『ヒロイン:わぁ、ここがルミワ魔法学園! すっごく大きい校舎だなあ』
『ヒロイン:いけない!! 見惚れている場合じゃなかったわ!! 早くしなくちゃ入学式に送れちゃう!!』
『・・・・・・』
『ヒロイン:ふう、入学式にちゃんと出れてよかったあ。あと少しで遅刻しちゃうところだった・・・・・・』
『ヒロイン:それより、この後どうしようかな?』
『選択してください。 天気がいいから、学園の周りを散歩してみようかな?//学園の中を探検してみようかな?冒険みたいでわくわくするな!!//少し疲れちゃった。寮に帰って休もうかな』
『ヒロイン:学園の中を探検してみようかな?冒険みたいでわくわくするな!!』
『ヒロイン:わぁ、すっごく広いなあ』
『ヒロイン:(時々どこかから悲鳴が聞こえてくる気がするけれど・・・・・・気のせいかな?)』
『ヒロイン:まあ、いっか。それよりも〇〇学科の校舎どこにあるんだろう?』
ヒロイーーーーーン!! 駄目だよ、そこはスルーしちゃダメ!!
・・・・・・まさかの、遭遇しなかったパターンだったか。ということは、ヒロインは新入生狩りにあわずにこの学園を散策したということだよね?どれだけ運がいいんだろう、ヒロイン。
そんなことを考えていると、ちょうど中庭のよく見える廊下に足を踏み入れた。ガラス張りになったいるので庭の様子がよく見える。ふと庭を見ると・・・・・・ヒロインであるアリス・ヒロイック嬢が集団リンチに合っていた。
・・・・・・はっ!! 呆然としている場合じゃない、助けなければ!! ん?いや、違うな・・・・・・集団リンチじゃなくて、勧誘という名の新入生狩りだ。周りの人たちも2、3年の先輩方だし、「ほかの科に、取られるわけにはいかねえんだよ!!」とか「お前らのとこには渡さん、こいつはうちの科に入るんだーーー!!」とか叫んでるし。アリス嬢は自分の結界魔法で何とかしのいでいるっポイ。これは・・・・・・うん、助けようかな。
「あの、レイン様」
「ん?」
「あの子助けたいんだけど・・・いいかな?」
「え? う~ん・・・・・・だめ」
まさかのだめ発言!! え、なんでだめなの!?
「何故!!」
「だって、あのこ、エリシアの元婚約者を奪った子なんでしょ?」
「まあ、そうだね」
アリス嬢がバカ王子を引き取ってくれたので、私は婚約破棄できたんだよね。私的には、すごく感謝してます。
「逆に聞くけど、エリシアはなんであの子を助けたいの?」
「ん?・・・・・・私、あの子に何の危害も加えられてないんだよね~」
「え? そうなの?」
「うん。むしろ、あの子が来る前のほうがひどかったというか・・・・・・」
今、思い返してもひどかった。私があのバカ王子の婚約者になってから、私はずっと、ずっと、ずぅっっっっっと、あいつのパシリとして動いていたんだから。
ある時は強制的に紅茶を入れさせられて、紅茶を入れたら「お前の紅茶、マジまずい」と罵られ。ある時は「これ。やっとけよ」と授業の課題を押し付けられ。ある時は「お前、ただでさえ色気がないんだから、もっと露出の高いもん着て来いよ」とケチ付けられ。他にもいろいろ、エトセトラエトセトラ・・・・・・。
しかし、アリス嬢が来てからはすごく平和になった。
まず、王子がぼーっとすることが多くなった。声をかければ気づくんだけど、放置していればいつまでもぼーっとしているのだ。そのおかげで、私は自由な時間を得た。次に、王子が私に話しかけなくなった。私は王子から解放された。王子が私に一切接触しなくなったとき、私はすごくうれしかった。ついに、あのあほから解放されたと。
そんなことをレイン様に伝えると、レイン様は渋々ながら納得してくれた。
「わかったよ・・・・・・でも、近づいちゃだめだよ。彼らに近づくと、君がけがをしてしまうかもしれないからね?」
「うん」
レイン様、私の心配をしてくれるなんて・・・・・・優しい!! はっ、今はヒロインのことを助けなければ!! う~ん、私が助けたってわからないほうがいいよね? ・・・・・・あ、そうだ!!
私はアイテムボックスから、ある物を取り出した。
「ありがとう、リュウちゃん」
「どーいたしまして♡」
リュウちゃんはそう言って、あざと可愛くウインクした。うん、かわいい! いやー、リュウちゃんは中身女の子だから普段はオネエっぽく見えるけど、見た目はかわいい系美少年だしね。眼福眼福。
あ、そうそう。レイン様は私と一緒にいるよ。暗示をかけなおしたから、人前に出ても大丈夫みたい。
・・・・・・そうだ、忘れてた。
「ねえ、リュウちゃん。その書類、科長さんに渡さなくちゃいけないんだよね?」
「うん」
「科長さんってどこにいるの?」
「ん? ここにいるよ?」
「え?」
「もしかして気づいてなかったの? 僕だよ、錬金術科の科長」
「「え゛」」
・・・・・・え、マジですか。リューちゃんが、錬金術科の科長!? この人が? 大丈夫か、錬金術科。リューちゃんが科長って・・・・・・そんなに人手不足なのかな。
リューちゃんは、その愛らしい見た目とちょっとおバカっぽい明るい性格についつい目が行きがちだが、実は、かなり有能だ。頭の回転も速いし、物事を先読みする癖があるので最悪の事態を避けて常に最善手を選択できる。人を率いるのに必要なカリスマ力もあるし、リーダーシップもある。ただし・・・・・・それはあくまでも能力のみで見た時のこと。彼の本質はまさに『遊戯に夢中になっている子供』というのが正しい。良く言えば、どんなことでも楽しく取り組める前向きな人。一般的には、無邪気だけど残酷な面も持つ恐ろしい人。
結構ひどいことを言うけれど・・・・・・リューちゃんに科長は向いていない。科長を支えるためにいる、側近的な立ち位置が一番適任だ。リューちゃんも「僕って、王様とか、そういうリーダー的な役って向いてないんだよね・・・・・・。だって、僕、縁の下の力持ちっていうか・・・・・・ぶっちゃけ影の支配者タイプだから」って、自分で言ってたし。いったい、どうしたんだ・・・・・・。
「えっとね・・・・・・僕もいやだって言ったんだよ? 3年生じゃないし、僕はリーダー向きじゃないって。むしろ副科長なら大歓迎☆って言ったんだよ? でも前科長が『できる、君ならできる。少なくともこいつらを科長にするよりお前を科長にしたほうがましだ。いいか、消去法だ。消去法で科長になれそうなのがお前しかいなかったんだよコンチクショウ!!』って言われてさ・・・・・・みんなも納得しちゃったんだよね」
「へ、へぇ~」
なるほど、やばいな。そんなに人をまとめられる人がいなかったのか・・・・・・。
「・・・・・・うちの科は、大体の人が研究に没頭しちゃうから、周りのことを把握できていないことが多いんだよね~」
あ、そっちの問題か。・・・・・・確かに、状況把握能力は必要だし。そう考えると、レイン様はよく周りのことを見ていたな~。私がピンチになった時には駆けつけてくれたし。
「まあ、そういうわけで僕が科長なんだよ」
「そっか~、リューちゃん、頑張ってね」
「うん、頑張るよ~!」
そう言ってへらへらと笑うリューちゃんは、ちょっと、疲れているように見えた。
++++++++++
私とレイン様は錬金術科の校舎を出て、行く当てもなく彷徨っていた。違う、学園の探検をしてるんだよ!! 決して、彷徨っているわけじゃないんだよ!! ホントだよ!!
学科申請が終わったら、あとはすることがないからね・・・・・・。せっかく時間があるんだからってことで学園の探索&秘密基地探しをすることになりました。人が来そうにないところを回ってみてるんだけど・・・・・・時々、聞こえてくるんだ。人々の悲鳴と、「とったどーーーー!!」と叫ぶ人の声が、複数。
・・・・・・間違っている。何かが間違っているよ。
あれ? 乙女ゲームって、こんな始まりだったっけ? 学科選択はボタン一つで決めてたからね・・・・・・。ええっと、確か・・・・・・。
『ヒロイン:わぁ、ここがルミワ魔法学園! すっごく大きい校舎だなあ』
『ヒロイン:いけない!! 見惚れている場合じゃなかったわ!! 早くしなくちゃ入学式に送れちゃう!!』
『・・・・・・』
『ヒロイン:ふう、入学式にちゃんと出れてよかったあ。あと少しで遅刻しちゃうところだった・・・・・・』
『ヒロイン:それより、この後どうしようかな?』
『選択してください。 天気がいいから、学園の周りを散歩してみようかな?//学園の中を探検してみようかな?冒険みたいでわくわくするな!!//少し疲れちゃった。寮に帰って休もうかな』
『ヒロイン:学園の中を探検してみようかな?冒険みたいでわくわくするな!!』
『ヒロイン:わぁ、すっごく広いなあ』
『ヒロイン:(時々どこかから悲鳴が聞こえてくる気がするけれど・・・・・・気のせいかな?)』
『ヒロイン:まあ、いっか。それよりも〇〇学科の校舎どこにあるんだろう?』
ヒロイーーーーーン!! 駄目だよ、そこはスルーしちゃダメ!!
・・・・・・まさかの、遭遇しなかったパターンだったか。ということは、ヒロインは新入生狩りにあわずにこの学園を散策したということだよね?どれだけ運がいいんだろう、ヒロイン。
そんなことを考えていると、ちょうど中庭のよく見える廊下に足を踏み入れた。ガラス張りになったいるので庭の様子がよく見える。ふと庭を見ると・・・・・・ヒロインであるアリス・ヒロイック嬢が集団リンチに合っていた。
・・・・・・はっ!! 呆然としている場合じゃない、助けなければ!! ん?いや、違うな・・・・・・集団リンチじゃなくて、勧誘という名の新入生狩りだ。周りの人たちも2、3年の先輩方だし、「ほかの科に、取られるわけにはいかねえんだよ!!」とか「お前らのとこには渡さん、こいつはうちの科に入るんだーーー!!」とか叫んでるし。アリス嬢は自分の結界魔法で何とかしのいでいるっポイ。これは・・・・・・うん、助けようかな。
「あの、レイン様」
「ん?」
「あの子助けたいんだけど・・・いいかな?」
「え? う~ん・・・・・・だめ」
まさかのだめ発言!! え、なんでだめなの!?
「何故!!」
「だって、あのこ、エリシアの元婚約者を奪った子なんでしょ?」
「まあ、そうだね」
アリス嬢がバカ王子を引き取ってくれたので、私は婚約破棄できたんだよね。私的には、すごく感謝してます。
「逆に聞くけど、エリシアはなんであの子を助けたいの?」
「ん?・・・・・・私、あの子に何の危害も加えられてないんだよね~」
「え? そうなの?」
「うん。むしろ、あの子が来る前のほうがひどかったというか・・・・・・」
今、思い返してもひどかった。私があのバカ王子の婚約者になってから、私はずっと、ずっと、ずぅっっっっっと、あいつのパシリとして動いていたんだから。
ある時は強制的に紅茶を入れさせられて、紅茶を入れたら「お前の紅茶、マジまずい」と罵られ。ある時は「これ。やっとけよ」と授業の課題を押し付けられ。ある時は「お前、ただでさえ色気がないんだから、もっと露出の高いもん着て来いよ」とケチ付けられ。他にもいろいろ、エトセトラエトセトラ・・・・・・。
しかし、アリス嬢が来てからはすごく平和になった。
まず、王子がぼーっとすることが多くなった。声をかければ気づくんだけど、放置していればいつまでもぼーっとしているのだ。そのおかげで、私は自由な時間を得た。次に、王子が私に話しかけなくなった。私は王子から解放された。王子が私に一切接触しなくなったとき、私はすごくうれしかった。ついに、あのあほから解放されたと。
そんなことをレイン様に伝えると、レイン様は渋々ながら納得してくれた。
「わかったよ・・・・・・でも、近づいちゃだめだよ。彼らに近づくと、君がけがをしてしまうかもしれないからね?」
「うん」
レイン様、私の心配をしてくれるなんて・・・・・・優しい!! はっ、今はヒロインのことを助けなければ!! う~ん、私が助けたってわからないほうがいいよね? ・・・・・・あ、そうだ!!
私はアイテムボックスから、ある物を取り出した。
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