ウィザードエデンズ

源真

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第一巻

0-1「術師になったきっかけ」

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 俺は三ヶ月前に高校一年生を迎えた。それも入試には余裕で受かったのだ。何せ必死になって勉強をした甲斐があったと言うものである。

 俺の名前は煌条桜真だ。どこにでもいそうなごく普通と言える十五歳である。

「ふーん? それって結構すごじゃん。さすが桜真だよね?」

 そうやって俺の名前を呼んだのは幼馴染みの春瀬舞花と言う女子だ。彼女とは気が合う仲で、いつもこうしてお昼休みはお喋りをする。こう見えても舞花は男子からモテる体質をしており、俺も彼女には注目していた。舞花の成績は俺に勝るものではなかったが、それでも彼女のことを好きになってしまっている。これは恋と言う奴だ。

「そっか。今日は放課後にでも遊びに来いよ? そしたら歓迎するからさ」

「分かった! それじゃあ約束ね!」

 そんな感じで俺は舞花と遊ぶ約束をした。それも彼女はそのお誘いに拒むことなくオーケーする。それを踏まえると、俺でも彼女の心を掴むことが出来ると信じていた。いつか告白しようと内心で思いながらも、昼休みの終わるチャイムが鳴ると同時に彼女と別れる。

 そして放課後になった。俺はそこで災難な事故に遭う。

「危ない!」

「え? うわぁ⁉︎」

 俺は咄嗟に突っ込んで来たトラックに掌を向けると、そこで触れた瞬間にそのまま身体が押し出されるようにして吹っ飛ぶ。

「ぐぁっ⁉︎」

 すると、すぐにトラックの運転手が出て来て、吹っ飛んだ俺の下に駆け付けるのであった。そして安否確認をすると、突っ込んだことに対して謝罪をされる。それを俺はあっさり許すと、隣にいた舞花が驚いて泣き出した。そして俺に抱き付くと、心配した気持ちが溢れたのか知らないが、彼女は夢中になって絡み付いて来る。

「ど、どうしたんだ!」

「うぇーん! 大丈夫で良かったぁ!」

(どうやら本気で心配してくれたみたいだな? それにら良かったぜ。こうして舞花から抱き付かれるのも悪くないし)

 そうやって舞花が俺から離れると、それで自分としては寂しい気もした。しかし、これも舞花の意思によるものだ。仕方なかったのである。

 そして俺の下に警察が来てすぐに取り締まってくれた。トラックはどうやら居眠り運転が原因だと判断される。そこで被害を受けた俺に不思議な箇所を聞いて来た。

「もしかして術式って知ってる?」

「え? 術式ですか? いいえ、知りませんけど、どうかしましたか?」

「いや、何でもない。君にもそれが備わっているなら運が良いと思ってね? 知らないなら別に構わないんだ。それでは失礼する」

 それだけ口にすると、警察官はその場から去って行った。それが何を意味するのかは知らないが、それでも俺は気に留めることもしないで帰る。特に身体のどこかに傷が出来た訳でもないので、それほどら気にしなかったのが事実だ。それにトラックの運転手は逮捕されてしまったが、それはそれは俺にとってどうでも良いことだった。

 そしてその後に起きたことだ。最近になって不思議な現象が立て続けに生じるのであった。

 初めは気にしていたのだ。触れただけのドアに穴が空く現象が起きてから、少しずつそれらの減少の発生率が増えたのである。しかし、その原因が分からないままだった。

「急にどうした? 何で色んなものが壊れるんだ?」

「分からない。けど、触れていただけなのは確かだ。それなのに何故か壊れてしまうんだよ」

「そうか。別に疑っている訳じゃないんだけど、警察官にも言われていたことがあったんだ。それもこの間の暴走トラックの件で起きたことが今回と何らかの関わりがあるとみた。だから、もしもの時は病院で診てもらうのが良いと警察官から言われていたんだ。それがこの現状には必要だと判断したよ」

「分かった。それなら行くよ」

 そんな感じで俺は病院に行くことになった。そこで診察してもらった結果がまさか一大事になるとは思っても見なかったことに繋がる。

「え? 何で魔術師に来てもらうんですか?」

「それは我々にも解明できない事実が彼にはあるからです。なので、私がお勧めする魔術師を招いて見てもらってください」

「マジか。それって少し信じられないけど、一応試してみるか」

 そうやって俺の診断結果によって魔術師を呼ぶことになった。それが両親と別れを告げるきっかけになるとは思いもしなかったことだ。しかし、俺の新たな人生の幕開けに繋がっていることだとは俺も考える余地はなかった。

「やぁ? 君が桜真くんだね? それとご両親ですね? 僕が例の魔術師になります。よろしく」

「どうも」

「それでは早速見ていきましょう。僕ならきっと力になります」

(すごい格好の人だな? どこのお坊さんだ?)

 彼が着ているのは普通の服とは思えなかった。しかし、そんなことはどうでも良いのだ。それよりも俺は自分の身に何が起きているのかが知りたかったのである。

「まずは掌を見せてください。きっとそこに鍵があるでしょう」

「手ですか? はい」

 そうやって俺は彼に手を差し出した。すると、彼はすぐに何かが分かったようで、それを話し始める。

「これは術式が発現する直前に至っていますね? それが掌から感じる魔力で分かります。これは僕の欲しい人材となるでしょう。それでは両親に存在する価値はないので死んでもらいます」

「はぁ?」

 すると、そこで俺の両親は彼の手によって不快に思える出来事になった。

 どーん!

 その時、両親の上半身が吹っ飛んだ。それも血が噴き出す勢いを付けている。それを見た瞬間に目の前の人物は笑い出した。

「あははっ。まんまと騙されたな。僕の狙い通りだよ」

「な……? 何で?」

 俺は信じられなかった。それは両親が目の前で不思議と上半身を吹っ飛ばされたところを見て思う。そう言った死を迎えて恐怖を抱いた。そして今度は彼が俺を見ると、そこで本来の目的を知る。

「君は僕に付いて来たまえ。今のように殺されたくなければな」

「う、嘘だ……!」

 俺の身体は震え始めた。目の前で両親が殺されているのに怖がらない理由なんてない。しかし、そこで彼は不敵な笑みを浮かべながら、俺を従わせようと掌を向けた。

「どうする? 来る?」

「は、はい……」

 ちょっと自信はなさげだったけど俺は頷く。しかし、そこで思いもよらない出来事が起きた。

「そんなことさせるかよぉ!」

 どかーん!

「な、何だ⁉︎」

 すると、壁と一緒に魔術師が吹っ飛んだ。それも凄い威力の光が放たれたように見える。

「危なかった。まさかお前から現れるとはな」

「いやぁ。到着が早いね? 君には妨害目的で魔獣を三十体も送ったのはずだ。すべて片付けて来たのか?」

「もちろんだ。お前を目撃した奴らが何人もいる。さて、ここでお縄に付いてもらおうか?」

「さすがにこの場で戦うと周りに被害が及ぶんじゃないの? それでも戦うのなら、僕は逃げることにするよ」

「させねぇよ。この一撃で決める!」

「これでもか?」

 すると、一瞬にして辺りが暗闇に包まれた。しかし、それでもすぐに光が放たれることで辺りを照らさせる。

「くそっ! 逃げ足が早いな!」

 その時、そこで照らされた下に立っていたのはさっきの男だった。彼はすぐに俺の下に駆け付けてから安否を確認をして来る。

「大丈夫か? 悪いな。現着が遅れて二人も死者が出てしまったようだ。だが、誘拐される前で良かった。お前だけでも助けられたのは幸いだ」

「貴方は……?」

「俺は輝王天斗。本来なら俺が来るはずだった魔術師だ。生憎だけど、お前の両親は亡くなった。けど、お前から溢れる魔力を見る限りだと、俺と同じ魔術師になれるよ」

「え? 俺も魔術師に?」

「あぁ。取り敢えずお前を保護する。一緒に来ると良いよ」

「はい!」

 俺は何だかよく分からなかったが、彼に付いて行くことにした。俺が連れて来られた先は東京都にあるタワーマンションで、そこには多くの魔術師が住んでいると彼から教えられる。

「ここが俺の部屋だ。お前は少しの間だけここに泊まってもらう。俺はまず本部に行って来るから、この部屋で待っていろ。誰か来た時には開けても大丈夫だから、返事だけはしておいて? じゃあ行って来る」

「え? ちょっと待って!」

「ん? 何?」

「俺はこれからどうなるの?」

「それはお前が決めることだ。しかし、素質がある以上はうちに来るのが妥当だろう。だから、その時は俺を頼りな」

 それだけ言うと、天斗は部屋から出て行ってしまった。しかし、俺が連れて来られたのは部屋はどう見ても高級マンションの一室にしか思えないところに思える。なので、少し居座りづらかったが、それでも彼の言うことは聞くべきだと思って待つのであった。

 すると、五分ぐらいして誰かがインターホンを押したみたいで、ベルが部屋中に響く。

(行ってみるか?)

 そう決心した俺は部屋のドアを開けると、そこに立っていたのは一人の女性だった。彼女は俺よりも身長が高くて多分百七十センチ以上はあるだろう。だが、問題はそこじゃなくて何の用事があって来たのかだった。

「どうしましたか?」

「君を見張るように言われて来た。大丈夫だ。私は君の安全を守る正術師でもある。どこかの邪術師とは違う」

「正術師とか邪術師とか良く分からないんですけど?」

「なら、ついでに教えてやるよ。中に入っても良いかな?」

「はい」

 そこで俺は彼女を入れると、俺よりも先に平気で中に行った。そしてベッドの上に座ると、その後で彼女の口からは自己紹介と魔術師やそれらに関連している話である。それがされることで俺の謎に思っていた内容がよく分かって来るところが何よりも助かったと思えたのだ。

「まず私の名前は鳥崎翔子。天斗と同じで魔術師をしている者だ。これから話ことは君がうちに入ることを期待した上でする。そこで君の意向がどうするのかは勝手だ」

「は、はい……」

 そうやって俺は翔子さんの話を聞くことになった。

「魔術師とは、世間では狭い業界になるわ。それも【魔術協会】が運営している上にそこで所属する魔術師は任務を与えられて活動に励む。そこで任務と呼ばれるのは運営側が私たち魔術師に課せて来る仕事になる。それをこなせば毎月百二十万円は稼げるわ。内容は【魔獣】と呼称された魔力を宿した獣のことで、それらは自然発生するか魔術師の召喚によって現れる。それを退治するのが私たちの仕事にもなっているわ。それ以外にも邪術師と呼んでいる不正を働く魔術師の逮捕協力などが主な仕事よ。大した内容じゃないけど、こう見えても命を張ったお仕事になるわ。だから、君が入るのかは自分で決めなさい」

「まだ術式について話されてませんが、一体何のことですか?」

「術式とは私たちが扱う魔術のことになるわ。それは一人一つが原則で、運が良ければ術式を二つ以上も所持できる正術師がいる。しかし、それにはエデンズゲートをくぐって適性検査に合格した正術師だけが発現する仕組みよ。ま、大体は分かったかしら?」

「はい」

 俺が知っている魔術と言えば、呪文を唱えて効果を発揮させる奴が主流だがら天斗さんはそれを無詠唱で使っていた。それとはどう言った関係にあるのか尋ねてみる。

「術式って無詠唱でも扱えるんですかね?」

「まぁな。基本的に一般の架空世界で扱われる魔術とは違うからな。主に術式は魔力を消費して駆使することになる。だから、詠唱はいらないよ」

「俺にはどんな術式が使えると思いますか? それによっては歯切らないこともありませんけど!」

「それは鑑定してみないと分からない。そこで付いて来るなら鑑定させてやっても良いぞ」

「分かりました! 是非ともお願いします!」

「了解。それでは少しこの部屋を留守にしよう。連絡なら私がしておく。付いて来い」

 そうやって俺は翔子さんの後を付いて行くことにした。まずはその鑑定が必要みたいだが、俺にはどんな術式を扱えるようになるのか楽しみだ。
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