やる気が出る3つの DADA

Jack Seisex

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「K・ジャックの落書きノート/私小説集」98

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「上等だ。かかってこい!」
 左手のヒダリンは懲りずにあおっている。
「おい、やめろ」
 俺は囁く。

 さらに、想像を絶する異常事態が発生する。

「うらあああ」
 顔面タトゥ野郎は、ネックハンギングツリー(プロレス技)で、俺様の首を締め上げてくる。
 こいつの目はヒロポン中毒者の目をしている。

(苦しい)
 俺は、本当に死の恐怖と闘っている。
 というより、本当に殺されそうだ。

 まさか、こんなことになるとは思わなかった。
 伝説のジャズ喫茶『ダグ』のトイレで汚らわしいオナニーをした呪いが、命の危険にさらされる事態となっている。

 前衛アーティストとして活動してきて、なぜこんな目に合わなければならないのか。
 俺の脳裏に色々な映像や音が浮かんでは消えていく。

(ああ。英国留学時代にフレンドになったアーティストたちにもう一度、会いたかったな)
 目の前にキラキラ光る川が見えている。
(……あ、天の川かな?)

 三途の川だった。
 これを渡り切れば、俺は楽になれる。永遠の幸福に包まれる、
 俺は、一歩一歩、進んでいた。
 ふわふわしているが、それは着実な歩みだった。
(これで、俺は楽になれる。永遠の命を手に入れられるんだよなあ……)

 その時だった。

「JACK。目を覚ませ、ませませ」
 左手が勝手に動いている。

 俺は我に返った。
 ネックハンギングツリーをされているので、体中が酸欠状態だ。
 だから、左手が生き生きと動くのはおかしい。

 ヒダリンだった。
「ボクチンに任せろ」
 左手の寄生したヒダリンが、俺の命を奪おうとする偽タイソン野郎に、反撃を企てようとしている。

「くたばれ」
 ネックハンギングツリーをしている手に、ヒダリンは噛みついた。
 血がほとばしっている。

 三途の川が鮮血に染まっていく。

「ぐええええ」
 偽タイソンは、両手を離した。

『ドスン』
 俺は尻から、床に落ちた。
 三途の川は消えている。

 そこは、偽美容整形外科に設置されたプロレス会場だった。

 命の危機は脱した。
 リングの上に置かれたDADA便器が神々しく輝いている。

「ぐえええ」
 偽タイソンが転げまわっている。
 ヒダリンは、タイソン野郎の皮膚をかみちぎってしまったようだ。

「よし。そろそろ試合開始だ」
 偽ブラックジャックが、リングの上でファイティングポーズをとっている。ファイティング原田。

 まじかよ。
 闘いは、永久に終わりそうになかった。
 ゴートゥーヘル、ヘルレイザー
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