やる気が出る3つの DADA

【緊急事態（５）】環境保護中毒の少女⇔ウイルス中毒の兄貴⇔泣いてばかりの倉橋

「ウソだろ」
　倉橋が呟いた。
　世界の悲劇的な、状況を喜んでいる少女がいるというニュースは、倉橋を異様なほど暗い気持ちにさせた。
　新聞には、【ほぼ、トラコーマ新聞】という名前の表記がある。
（思想的に歪んでいるだろっ）
　倉橋は、立ち上がった。
　新聞を用水路に投げ込むと、ふらふらと歩き出した。歩いているうちに、頭が痛くなって、吐き気がして、アンドロイドとして生きていることにさえ疑問を抱き始めた。
　最大の理由が、この世界的なパンデミックの原因が、兄貴のまいた【ダチュラ】にあるかもしれないという疑惑からだった。
　あの日以来、兄貴とは会っていなかった。
　兄貴は、あのまま空の旅を続けているのだろうか。もしかしたら、隣の大国にかえってしまったのかもしれない。
「疑惑を放っておけない」
　倉橋は、久しぶりに地上に出てみることにした。
　兄貴が見つかる保証はないが、フェイクニュースや、ウイルスによる死者があふれかえっている世の中に終止符を打ちたいという激情に逆らうことはできそうになかった。