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火星からの物体DÀ⇔ モダンアート✕タダの落書き⇔アンドロイドの涙
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「うわっ」
倉橋は声を上げた。
体育館や、教室に通じる廊下の至るところに、軟体動物のような『火星人』がウヨウヨしていた。
初めてマルセル・デュシャン少年を見た日から、半年ほどたっていた。
あれから、デュシャン少年(=校長)を、目にすることは無かった。理由は不明だ。
兄貴も、もう「『校長室』に行こう」とは言わなくなった。
もしかしたら(デュシャンやDADAの悪口を言うと処刑される)という、例の噂話が関係しているのかもしれない。
だが、今はそれどころではない。
倉橋は、目の前の光景に釘付けになっていた。
(どういうことだろう?)
倉橋は、物陰に隠れた。
しばらく様子を、見た方が良いだろう。
ヌルヌルして不気味な『火星人』は、幼い頃に、SFマンガで見た敵役とそっくりだった。
(アイツら、確か地球を侵略に来たんだっけ。マンガでは、鉄腕アトムみたいなヒーローが、異星人を残らず倒して、人類の危機を救うというハッピーエンドだったはず)
倉橋は、首を傾げた。
たが、なぜ、この学校(=DADAの王国)に、バケモノたちがやってきたのだろう。
倉橋が風邪をこじらせて、保健室で横になっている間に、この有り様だった。
保健室で寝ていたのは、ほんの数分だったはずだ。DADAの王国は、時間の感覚が掴みづらい。
だが、こんなに一瞬のうちに、学校が『火星人』に占領されるなんて。
(なるほど)
これは、自分に与えられた試練かもしれない。
倉橋は、自分がアンドロイドであることを思い出した。
以前、相撲会場で投げたフンドシが、驚くほどの勢いで飛んでいき、ビリビリに破けて粉砕してしまった。
精神面では、人間と変わらないつもりだが、腕力はもう『殺人機械』と一緒だ。
「やはり、アンドロイドである俺は、侵略者『火星人』と闘わねばならないようだ」
倉橋は、腕まくりした。
剥き出しになった両腕は、お世辞にも強靭とは言えなかった。小学生の肉体のまま、あのヌルヌルした『火星人』を倒すことはできるだろうか。
だが、その時、目にしたグラフィティアートが、倉橋の闘争心に火をつけた。
ここから、教室の黒板が見えている。
その黒板の片隅に『ジュニア、王国を救え』と、殴り書きしてあった。
下手くそで、アートいうより「落書き✕落書き」といった趣だったが、それは、まさしく兄貴の筆跡だった。
兄貴の稚拙な文字が、倉橋に、底知れぬ勇気を与えようとしていた。
「そもそも、鉄腕アトムだって、見ためは小学生と変わらないじゃないか?」
倉橋が立ち上がった。
倉橋は、全身に力が漲っていく気がしていた。
倉橋は声を上げた。
体育館や、教室に通じる廊下の至るところに、軟体動物のような『火星人』がウヨウヨしていた。
初めてマルセル・デュシャン少年を見た日から、半年ほどたっていた。
あれから、デュシャン少年(=校長)を、目にすることは無かった。理由は不明だ。
兄貴も、もう「『校長室』に行こう」とは言わなくなった。
もしかしたら(デュシャンやDADAの悪口を言うと処刑される)という、例の噂話が関係しているのかもしれない。
だが、今はそれどころではない。
倉橋は、目の前の光景に釘付けになっていた。
(どういうことだろう?)
倉橋は、物陰に隠れた。
しばらく様子を、見た方が良いだろう。
ヌルヌルして不気味な『火星人』は、幼い頃に、SFマンガで見た敵役とそっくりだった。
(アイツら、確か地球を侵略に来たんだっけ。マンガでは、鉄腕アトムみたいなヒーローが、異星人を残らず倒して、人類の危機を救うというハッピーエンドだったはず)
倉橋は、首を傾げた。
たが、なぜ、この学校(=DADAの王国)に、バケモノたちがやってきたのだろう。
倉橋が風邪をこじらせて、保健室で横になっている間に、この有り様だった。
保健室で寝ていたのは、ほんの数分だったはずだ。DADAの王国は、時間の感覚が掴みづらい。
だが、こんなに一瞬のうちに、学校が『火星人』に占領されるなんて。
(なるほど)
これは、自分に与えられた試練かもしれない。
倉橋は、自分がアンドロイドであることを思い出した。
以前、相撲会場で投げたフンドシが、驚くほどの勢いで飛んでいき、ビリビリに破けて粉砕してしまった。
精神面では、人間と変わらないつもりだが、腕力はもう『殺人機械』と一緒だ。
「やはり、アンドロイドである俺は、侵略者『火星人』と闘わねばならないようだ」
倉橋は、腕まくりした。
剥き出しになった両腕は、お世辞にも強靭とは言えなかった。小学生の肉体のまま、あのヌルヌルした『火星人』を倒すことはできるだろうか。
だが、その時、目にしたグラフィティアートが、倉橋の闘争心に火をつけた。
ここから、教室の黒板が見えている。
その黒板の片隅に『ジュニア、王国を救え』と、殴り書きしてあった。
下手くそで、アートいうより「落書き✕落書き」といった趣だったが、それは、まさしく兄貴の筆跡だった。
兄貴の稚拙な文字が、倉橋に、底知れぬ勇気を与えようとしていた。
「そもそも、鉄腕アトムだって、見ためは小学生と変わらないじゃないか?」
倉橋が立ち上がった。
倉橋は、全身に力が漲っていく気がしていた。
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