やる気が出る3つの DADA

Jack Seisex

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謎の女の謎⇔二死満塁⇔逃亡からの逃亡

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「ははははは」 
 兄貴の声が、バッティングセンター内に響き渡っている。
「兄貴」
 倉橋は呟く。
 倉橋の頬を涙が、伝っていった。涙を流す感情はまだ忘れていなかったようだ。
 再び、硬球が飛んできた。硬球は膝をついている倉橋の太ももに当たった。
(泣きっ面にボール)
 硬球は、休むことなく飛んできた。球数は、さっきよりも多い。
 驚いたことに、一度に2つや3つの球が同時に飛んできている。それに、球のスピードにもかなりムラがある。
 倉橋はあることに気付いた。
 ピッチングマシーンに加えて、兄貴が手で投げてる……。 
「ふざけるな」
 倉橋はツバを吐いた。 
(人をバカにするのもいい加減にしろ。いくらなんでも、これじゃ元野球少年への冒涜だろ)
 倉橋は、剃刀の傷だらけの腕で、ボールを拾った。
「?」
 その時、ギラギラした照明の向こう側に、兄貴以外の人物の存在を感じた。
 次の瞬間、
「何で泣いてるの」女の声がした。
 あの女だ。
 前まで、この女とは毎日のようにベッドルームで(秘めごと)を行なっていた。
 あの呪われた部屋から、脱出を試みて、今日まで上手く逃げおおさせたつもりだったのだが……
 全ては勘違いだったようだ。
 照明の奥から、現れた女は、倉橋の方へゆっくりと近付いてくる。
「円形脱毛症の話が嘘なら、私がアンタの後頭部にリアルな円形脱毛症、作ってあげるわよ」
 女がニヤニヤしている。
 案の定、女の手には例の剃刀が握られている。  
(え)
 倉橋は、既に女の剃刀が真っ赤な血で染まっていることに気付いた。照明の奥側からは、物音ひとつしない。
 嫌な予感がした。
「あ、兄貴ぃぃぃいぃっ!」
 倉橋は、叫んだ。
 やがて、
「これで二死満塁ね」
 女は、倉橋の首すじに剃刀の刃を当てた。
 倉橋の叫び声は、夜のバッティングセンター内に奇怪なほど大きく響き渡った。
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