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アサギリソウをリースにして
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スミレさんの話を思い出しながら桔平くんのことを考え続けて、いつもより質素な夕ご飯を食べる。自分だけだと気合いが入らなくて、茹でて和えるだけの明太子パスタにした。
桔平くんは、私のご飯を食べたら必ず「すげぇウマい」って口に出してくれる。だから嬉しくて、いつも張り切っちゃうんだよね。
一緒にご飯を作ったり、桔平くんがひとりで作ってくれたり。同棲して1年以上経ったけれど、2人で協力しているのは全然変わらない。そして、前よりもっと桔平くんを好きになっている。
だから、ずっと一緒にいたい。ずっと隣にいさせてほしい。そして桔平くんを支え続けたい。
そんな事を考えながら洗い物をしていたら、スマホが鳴った。桔平くんからの着信だ。
「ハイサーイ」
聞こえてきた声に思わず吹き出す。桔平くんのこういうところ、可愛いな。結構おちゃめなんだよね。
「ハイサーイ!今どこにいるの?」
「今日は津堅島にいるよ」
「つけんじま……って、どのあたり?」
「うるま市の平敷屋港から、高速船で南に15分のところ。今、泊まってる民宿の近くにあるトゥマイ浜ってビーチにいるんだけど、気がついたら1時間以上ボーっとしてたわ」
電話をしながら、ノートパソコンで調べてみた。ターコイズブルーやエメラルドグリーンが混ざった海に、眩しいほど白い砂浜。同じ日本とは思えないくらい綺麗。
「砂浜に寝転がって空を見上げてたら、星が落ちてきそうでさ。そんで、愛茉に会いたくなったんだよ。1日顔を見てねぇだけなのにな。愛茉中毒が抜けねぇわ」
「愛茉中毒は、一度なったら二度と抜け出せませんよ」
そうだな、と桔平くんが笑う。そう言う私も、桔平くん中毒です。
同棲開始直後に桔平くんが大学の古美術研究旅行に行って2週間会えないことはあったけれど、こんなに離れるのはそれ以来。毎日顔を見て「おはよう」と「おやすみ」が言えるのって、本当に幸せなことなんだな。
「目を閉じても、星の海が見えるよ。いつか愛茉と泳ぎてぇな」
「うん」
「一緒に溺れようぜ」
「……うん」
頷きながら、涙がこみ上げてくる。どことなく哀愁を感じる優しい声が、涙腺を刺激するのかな。こんなキザなセリフも、桔平くんが言うとすごく様になるのが不思議。
たった4泊5日。だけど私にとっては、とても長い5日間。
その間、桔平くんが必ず夜に電話をしてくれたのは、私に寂しい思いをさせないためじゃない。きっと自分が寂しいからなんだろうと思った。
桔平くんは、私のご飯を食べたら必ず「すげぇウマい」って口に出してくれる。だから嬉しくて、いつも張り切っちゃうんだよね。
一緒にご飯を作ったり、桔平くんがひとりで作ってくれたり。同棲して1年以上経ったけれど、2人で協力しているのは全然変わらない。そして、前よりもっと桔平くんを好きになっている。
だから、ずっと一緒にいたい。ずっと隣にいさせてほしい。そして桔平くんを支え続けたい。
そんな事を考えながら洗い物をしていたら、スマホが鳴った。桔平くんからの着信だ。
「ハイサーイ」
聞こえてきた声に思わず吹き出す。桔平くんのこういうところ、可愛いな。結構おちゃめなんだよね。
「ハイサーイ!今どこにいるの?」
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「うるま市の平敷屋港から、高速船で南に15分のところ。今、泊まってる民宿の近くにあるトゥマイ浜ってビーチにいるんだけど、気がついたら1時間以上ボーっとしてたわ」
電話をしながら、ノートパソコンで調べてみた。ターコイズブルーやエメラルドグリーンが混ざった海に、眩しいほど白い砂浜。同じ日本とは思えないくらい綺麗。
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「愛茉中毒は、一度なったら二度と抜け出せませんよ」
そうだな、と桔平くんが笑う。そう言う私も、桔平くん中毒です。
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「目を閉じても、星の海が見えるよ。いつか愛茉と泳ぎてぇな」
「うん」
「一緒に溺れようぜ」
「……うん」
頷きながら、涙がこみ上げてくる。どことなく哀愁を感じる優しい声が、涙腺を刺激するのかな。こんなキザなセリフも、桔平くんが言うとすごく様になるのが不思議。
たった4泊5日。だけど私にとっては、とても長い5日間。
その間、桔平くんが必ず夜に電話をしてくれたのは、私に寂しい思いをさせないためじゃない。きっと自分が寂しいからなんだろうと思った。
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