ホウセンカ

えむら若奈

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ハルジオンが開くとき

おまけのおはなし「専属スタイリストKIPPEI」

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 お天気のいい休日。今日は、桔平くんと渋谷デートです。

 最近新しい洋服を買っていなかったから、1着だけ買っちゃおうかなぁと思っています。今日は専属スタイリストがいますから!
 
「いつ来ても慣れねぇわ、ここ」

 お目当てのショップがある109に入ると、桔平くんが呟いた。まぁ確かに、桔平くんが来るような所じゃないもんね。人が多い場所、特に女子が多い場所は苦手だし。でも私のためについてきてくれるから、桔平くん大好きです。

 相変わらず、すれ違う女の子たちがチラチラと桔平くんに視線を送っている。モデル?って言ってる人もいた。かっこいいし背が高いし顔小さいし独特なファッションだもんね。しかも隣にいるのが、この私っ!そりゃ、業界人と思われても仕方ないよねぇ。
 
「いらっしゃいま……あー、愛茉ちゃん!」

 いつも洋服を買っているお店に入ると、店員さんが満面の笑みで駆け寄ってきた。顔、覚えられちゃったんだよね。まぁ私は超可愛いから、一回見たら忘れないもんね。

「わ~今日は彼氏も一緒だ!何かお探し~?」
「んっとー……ニットが欲しいなぁって思ってて」
「ニットね!新しいの、いっぱい入ってきてるよ!ほら、こういうやつとかぁ」

 店員さんが持ってきたタートルネックのハイゲージニットをじっと見て、桔平くんが首を傾げた。
 
「それだと胸が強調されるよな」

 そう。そうなのよ。目が細かいニットだと体のラインが出やすいから、胸がボーンって目立っちゃうのよ。さすが桔平くん。
 
「あ、こっちがいいんじゃね」

 桔平くんはぐるりと店内を見渡してから、ネックラインが大きく開いたブラウンのローゲージニットを持ってきた。
 
「デコルテラインが綺麗だし、これに柄物のマフラー巻くとよし」
「うん!愛茉ちゃん、めっちゃ可愛いと思う~!」
「そ、そうかな」

 私にニットを合わせながら、満足そうに頷く桔平くん。そしてさらに店内を物色して、いくつか洋服を見繕ってくれた。

「あとはこれと……これとか」

 レースをあしらったVネックのカットソーに、大きなボタンが可愛いざっくり編みのカーディガンを合わせる。うん、これも可愛い。

「ボトムスはボリューム抑えてタイトなやつだな。お、これがいい」

 お次はチェックのミモレ丈スカートをピックアップして、私に合わせる。次から次に洋服持ってくるけど……買うの、1着だけの予定なんですよ?

 とりあえず試着してみろと言われたので、桔平くんがピックアップしてくれた洋服を全部持って試着室へと向かう。

「きゃ~可愛い~!やっぱり愛茉ちゃん可愛いよ~!よく似合ってる~!」

 カットソーとカーディガン、そしてスカートを試着してカーテンを開けると、店員さんが興奮した様子で言った。確かに、自分で見てもこれは可愛い。胸が目立たないし華奢に見えるし。

「お、いいじゃん。すげぇ可愛い。あと、これも試着してみ」

 まだ店内を物色していた桔平くんに、今度はボートネックのブラウスとロングカーディガンとレースのロングスカートを渡される。

「きゃ~それも可愛い!可愛すぎる~!」

 身長が低い私だけど、桔平くんが選んだコーディネートはバランスが取れていてスッキリ見える。ワントーンでまとめているからかな。自分は派手なのにね。

「髪はアップにすると良さそうだな」
 
 私の髪の毛を持ち上げて、桔平くんがじっくり見つめる。確かに、髪をまとめている方が全体的にラインが綺麗。うーん、さすがのセンス……。

「よし、全部買おう」
「えっ!わ、私1着と思って」
「オレが買う」
「でも」
「可愛い愛茉をオレが愛でるための出費なんだから、オレが払うのは当然だろ」

 桔平くんの言葉に、店員さんが口元を押さえて「キャー!」って顔をしている。は、恥ずかしい……。でも桔平くんって、人前でこういうこと言うの全然平気な人なんだよね。

 結局このお店では6着お買い上げ。4万以上使ったんじゃないの……。

「よし、次行くぞー。今度は靴とバッグだな」

 買った洋服を担ぐように持って、桔平くんが言った。

 こんな感じで、私のクローゼットはどんどん増えていってます。決して私が贅沢しているわけではありません。すべて、専属スタイリスト次第なのです……。


***おわり***
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