ホウセンカ

えむら若奈

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貴方によく似たリンドウを

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「検査薬……陽性だった」
「病院は?」
「……行ってない」
「付き添うから。今すぐ行くぞ」

 躊躇うスミレの手を取って、駅の近くにある産婦人科へ向かう。その間、スミレはまったく口を開かなかった。待合室でも黙り込んだまま。不安を感じているのか、それとも別のことを考えているのか。

 本当はいろいろと訊きたかった。それよりも、スミレの体調が最優先だと思っていただけだ。
 検査薬で陽性だったのであれば、ほぼ間違いなく妊娠しているだろう。おそらくオレの子供ではない。そう思ってはいたが、口に出すべきことじゃないのは分かっていた。

 スミレにはオレ以外の彼氏が何人かいたし、性に対してかなり奔放になっていたのを知っている。いつかはこうなるかもしれないと、どこかで感じていた。

「最終月経開始日を0週0日としますから、今は6週目に入ったところですね」

 医師の説明を聞きながら、スミレはぼんやりとエコー写真を眺めている。産むのか、産まないのか。まだその決断はできず、中絶を希望するのであれば早めにと念押しされて病院を出た。

 そのままオレのマンションへ帰ると、スミレが吐き気を催して洗面所へと駆け込んだので、背中をさすった。
 少し瘦せたな。ただでさえ細いのに、体はもつのだろうか。心配で仕方なかった。

「なんで」

 しばらくして口をゆすいだ後、スミレがポツリとこぼす。

「なんで、そんなに優しいのよ」
「なんでって……具合悪そうなのに、放っておけるかよ。それにこれからどうするか、ちゃんと考えねぇと」
「桔平には関係ないじゃない!あなたの子じゃないんだから!」

 口に出した直後、ハッとした表情に変わる。それでも、もう遅い。その言葉はオレの心に突き刺さってしまった。
 じゃあどうしてオレのところに来たんだ。その言葉を飲み込んで、スミレの顔を見つめる。

「……ごめんなさい、帰る」
「ちょっと待てよ、具合悪いんだろ。無理すんな」
「大丈夫だから!」

 止めようとするオレの手を振り払い、スミレは逃げるように部屋を出て行った。

 関係ない。オレの子供でないのなら、確かにそうなのかもしれない。いや、恋人の人生に関わることだ。まったく関係ないわけがないだろう。それとも、もうスミレの人生にオレは必要ないということなのか。

 呼吸が浅くなる。最近よく出てくる症状がまた襲ってきて、胸に手を当てながら深く呼吸しようとした。それでも、まともに息が吸えない。肺まで空気が届かない。苦しさで眩暈がする。

 インターホンの音が聞こえる。そういえば翔流が来ると言っていた。なんとか応答してオートロックを開けたものの、目の前がチラチラしてきて、その場に倒れ込む。そこで、オレの意識は途絶えた。
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