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貴方によく似たリンドウを
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「そう。知ってる?」
ポリアモリーとは、同意の上で複数人と関係を持つ恋愛スタイルのこと。意味は知っていたが、スミレがそうだというのは寝耳に水だった。
どうやら昔から好きな人が複数いて、そのうちのひとりと付き合っても、他の人間への気持ちが断ち切れなかったらしい。
「そのことを打ち明けると浮気性って罵られて、今までのパートナーとは全然上手くいかなかった。それでずっと悩んでたんだけど、この前ポリアモリーって言葉を知って。これ、私だって思ったの」
スミレと付き合うようになって感じたのは、絵には執着しているものの、オレ自身への執着は一切ないということ。独占欲や嫉妬心も、微塵もなかった。
どうもそれがポリアモリーの特徴らしい。ひとりの恋人に所有されたり、相手が所有されたがったりする状態に息苦しさを覚える。スミレが束縛を極端に嫌っているのは、1年間見てきてよく分かっていた。
「今も、オレ以外に好きな人がいるわけ?」
スミレは遠慮気味に頷いた。
「……同級生の、女の子」
つまりスミレはバイセクシュアルでもあるということ。そういえば、ポリアモリーの約半数がそうだと聞いたことがある。
性的マイノリティについて、個人的には何も偏見はない。世界を旅していたらいろいろな人間と出会ったし、その中で男に口説かれたことも何度かある。単にオレの恋愛対象は女というだけで、それが“普通”と思っているわけでもなかった。
子供の頃から“普通”ではないと言われてきたから、スミレの気持ちは何となく分かる。マジョリティの輪に入れない人間の多くが、世間一般の感覚との乖離に苦しむ。だが傍に理解者がいれば、自分らしく生きることだってできるはずだ。
「桔平も、軽蔑する?私のこと」
スミレが不安そうに見上げてくる。
「桔平を好きな気持ちに嘘なんてない。絶対に別れたくないの。私には、桔平が必要だから」
100の気持ちを分割して複数の人間を愛するわけではない。全員に対して100の気持ちを抱くのがポリアモリーのようだ。オレと一緒にいる時はオレのことしか考えていないはずだし、それは痛いほど感じていた。
「軽蔑なんてするわけねぇよ。オレもスミレが好きなんだから」
安心させるように頬を撫でると、スミレは少し涙を浮かべながらキスをせがんだ。
100%納得して受け入れたわけではない。ただ自分が拒絶することで、スミレを失うのが怖かった。それに受け入れてもらえない寂しさや苦しみは、オレ自身がよく知っている。スミレにそんな想いをさせるのは嫌だった。
ポリアモリーとは、同意の上で複数人と関係を持つ恋愛スタイルのこと。意味は知っていたが、スミレがそうだというのは寝耳に水だった。
どうやら昔から好きな人が複数いて、そのうちのひとりと付き合っても、他の人間への気持ちが断ち切れなかったらしい。
「そのことを打ち明けると浮気性って罵られて、今までのパートナーとは全然上手くいかなかった。それでずっと悩んでたんだけど、この前ポリアモリーって言葉を知って。これ、私だって思ったの」
スミレと付き合うようになって感じたのは、絵には執着しているものの、オレ自身への執着は一切ないということ。独占欲や嫉妬心も、微塵もなかった。
どうもそれがポリアモリーの特徴らしい。ひとりの恋人に所有されたり、相手が所有されたがったりする状態に息苦しさを覚える。スミレが束縛を極端に嫌っているのは、1年間見てきてよく分かっていた。
「今も、オレ以外に好きな人がいるわけ?」
スミレは遠慮気味に頷いた。
「……同級生の、女の子」
つまりスミレはバイセクシュアルでもあるということ。そういえば、ポリアモリーの約半数がそうだと聞いたことがある。
性的マイノリティについて、個人的には何も偏見はない。世界を旅していたらいろいろな人間と出会ったし、その中で男に口説かれたことも何度かある。単にオレの恋愛対象は女というだけで、それが“普通”と思っているわけでもなかった。
子供の頃から“普通”ではないと言われてきたから、スミレの気持ちは何となく分かる。マジョリティの輪に入れない人間の多くが、世間一般の感覚との乖離に苦しむ。だが傍に理解者がいれば、自分らしく生きることだってできるはずだ。
「桔平も、軽蔑する?私のこと」
スミレが不安そうに見上げてくる。
「桔平を好きな気持ちに嘘なんてない。絶対に別れたくないの。私には、桔平が必要だから」
100の気持ちを分割して複数の人間を愛するわけではない。全員に対して100の気持ちを抱くのがポリアモリーのようだ。オレと一緒にいる時はオレのことしか考えていないはずだし、それは痛いほど感じていた。
「軽蔑なんてするわけねぇよ。オレもスミレが好きなんだから」
安心させるように頬を撫でると、スミレは少し涙を浮かべながらキスをせがんだ。
100%納得して受け入れたわけではない。ただ自分が拒絶することで、スミレを失うのが怖かった。それに受け入れてもらえない寂しさや苦しみは、オレ自身がよく知っている。スミレにそんな想いをさせるのは嫌だった。
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