ホウセンカ

えむら若奈

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貴方によく似たリンドウを

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「スミレさん、なんて?来るって?」
「来るらしいけど……お前なぁ」
「いいじゃん、別に。友達の彼女見たいのは当然だろ~」
「彼女じゃねぇよ」

 呑気にティラミスをかき込む翔流を、無性に張り倒したくなった。ただそんなことをしても、こいつは馬耳東風だろう。まったくもって羨ましい性格だ。

 10分ほどして、インターホンが鳴る。ドアを開けると、スミレはハンカチで額の汗を拭っていた。
 とっくに夜の帳が下りているものの、気温は一向に下がっていない。さすがに玄関先でさっさと追い払うのは気が引けるので、部屋へ上がってもらった。
 
「うわ!綺麗なお姉さん!」

 スミレを見た瞬間、翔流は大きな声を上げて目を見開いた。

「桂木スミレです。桔平にも、ちゃんと友達がいたのね」
「あ、楠本翔流です。まぁ、まだ知り合って1ヶ月ぐらいなんだけど。なんか仲良くなっちゃった」
「そうなの。桔平って、ほとんど自分のこと話さないから……友達がいるなら良かったわ」

 この状況に居心地の悪さを感じているのはオレだけなのか。自分の家なのに、何故こんな気持ちにならなきゃいけないんだ。

 ひとまずストックしてあったペットボトルの麦茶を差し出すと、スミレはそのままゴクゴクと喉に流し込んだ。何故かその姿が妙に艶めかしく見えて、思わず視線を逸らしてしまう。やはりあの日から、自分はどうかしているのだと思った。

「スミレさんも、ピザ食う?」

 相変わらず、翔流は初対面から馴れ馴れしい。ただこいつがこういう性格じゃなければ、仲良くなることはなかっただろう。

「ありがとう。でも大丈夫。お昼遅かったから、お腹減ってないの」
「そっか。んじゃ、全部食べちゃおっと」

 そう言って、翔流はまたコーンクリームピザにかじりついた。普通はデザートが最後だと思うが、ピザとティラミスを交互に食べている。胸やけしないのか。

 スミレはオレの隣に座ると、いつも持っている大きめのバッグから書店の袋を取り出してオレへ差し出した。

「これ西洋美術の画集なんだけど、解説が面白いの。いろいろと参考になると思うから、良かったら読んでみて」
「ああ、ありがとう」

 やはり、今まで通りだ。オレにこういうことをしてくれるのは、ただ絵描きとして成長してほしいと願っているから。それ以上でもそれ以下でもないはず。
 じゃあ、あの箱根の夜は何だったのか。なかったことにするべきなのか、それともオレから何か言うべきなのか。よく分からなかった。

「スミレさんってさぁ、桔平のことどう思ってんの?」
 
 ピザとティラミスを平らげた翔流が、探るような視線をスミレに向けた。
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