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貴方によく似たリンドウを
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「急なことだったわけじゃんか。お前、ゴム持ってたの?」
「持ってるわけねぇじゃん。あんなことになるなんて思ってなかったし」
「え、まさか避妊せず?」
「そこまで馬鹿じゃねぇよ。スミレが持ってた」
「用意がいいなぁ……マジに遊んでる人なんじゃないの?」
翔流はこの時から、スミレに対してあまりいい感情を抱いていなかった。ただ、オレの話を聞いただけで決めつけるようなヤツではないから、強くは言わなかったのだろう。
「まぁ、どっちでもいいけど」
「なんでだよ」
「言っただろ。人の感情なんか信用してねぇんだよ」
「ただ信じるのが怖いだけじゃん?桔平は繊細そうだから分からんでもないけどさぁ。かと言って割り切った付き合いができるようにも見えないんだよなぁ」
知り合ったばかりなのに、翔流はオレの性格をよく見抜いていた。馬が合うとはこういうことを言うのだろう。少しのコミュニケーションで、お互いのことが理解できる。
それなのに寂しさが拭えないのは何故なのか。翔流のような友人がいても、まだ足りないのか。自分が何を求めているのか、よく分からなかった。
「1回ヤッちゃうと情が出てくるって言うじゃん。特に桔平は優しいしさ。情だけでズルズルとセフレ関係になったら、後で傷つくだけだと思うんだけど」
翔流がコーンクリームのピザを口いっぱいに頬張る。どうやらこいつは、味覚がかなり幼いようだ。
「セフレになるつもりはねぇよ」
「じゃあ付き合うわけ?スミレさんと」
「だから、恋愛感情が分かんねぇの。そんなもんなくてもセックス自体はできるわけだろ。好きとかじゃなくて、ただそれだけって気もするんだよ」
「ヤリたいから付き合うってのでもいいじゃん。俺らまだ16なんだし、一生の恋をするわけじゃないんだからさぁ」
こんな風に割り切れる性格だったら、その後苦しむことはなかったと思う。ただこの時のオレは、相手を受け入れることに対して慎重になっていた。
一生の恋をするわけではない。確かにそうだ。しかしそれは、いつかお互いを受け入れられなくなる時がくるということでもある。
その時に感じる寂しさを想像すると、安易に踏み込めない。スミレを抱いたことに後悔はないものの、これ以上深い関係になるのは怖かった。
返す言葉が見つからず黙々とピザを口に運んでいると、オレのスマホが鳴った。
「お?噂をすれば、スミレさん?」
画面に表示された名前を見て、翔流がやたらと嬉しそうな顔を見せる。結局他人事だから、面白がっているだけだろ。
「あ、今いい?」
出ろ出ろと翔流に促されて応答すると、いつも通りのスミレの声が聞こえてきた。
「家にいるの?それなら、これから行っていい?」
「あー……今、友達が来てて」
「面白い画集を見つけたから、渡したいだけ。すぐに帰るから」
「スミレさん来るの?俺も会いたいな~」
わざと大きな声で翔流が言うと、それを聞いたスミレが電話口で吹き出した。本当に、図々しいにもほどがある。
「10分くらいで着くから。じゃあ、後でね」
オレの返事を待たず、スミレはそう言って電話を切ってしまった。
「持ってるわけねぇじゃん。あんなことになるなんて思ってなかったし」
「え、まさか避妊せず?」
「そこまで馬鹿じゃねぇよ。スミレが持ってた」
「用意がいいなぁ……マジに遊んでる人なんじゃないの?」
翔流はこの時から、スミレに対してあまりいい感情を抱いていなかった。ただ、オレの話を聞いただけで決めつけるようなヤツではないから、強くは言わなかったのだろう。
「まぁ、どっちでもいいけど」
「なんでだよ」
「言っただろ。人の感情なんか信用してねぇんだよ」
「ただ信じるのが怖いだけじゃん?桔平は繊細そうだから分からんでもないけどさぁ。かと言って割り切った付き合いができるようにも見えないんだよなぁ」
知り合ったばかりなのに、翔流はオレの性格をよく見抜いていた。馬が合うとはこういうことを言うのだろう。少しのコミュニケーションで、お互いのことが理解できる。
それなのに寂しさが拭えないのは何故なのか。翔流のような友人がいても、まだ足りないのか。自分が何を求めているのか、よく分からなかった。
「1回ヤッちゃうと情が出てくるって言うじゃん。特に桔平は優しいしさ。情だけでズルズルとセフレ関係になったら、後で傷つくだけだと思うんだけど」
翔流がコーンクリームのピザを口いっぱいに頬張る。どうやらこいつは、味覚がかなり幼いようだ。
「セフレになるつもりはねぇよ」
「じゃあ付き合うわけ?スミレさんと」
「だから、恋愛感情が分かんねぇの。そんなもんなくてもセックス自体はできるわけだろ。好きとかじゃなくて、ただそれだけって気もするんだよ」
「ヤリたいから付き合うってのでもいいじゃん。俺らまだ16なんだし、一生の恋をするわけじゃないんだからさぁ」
こんな風に割り切れる性格だったら、その後苦しむことはなかったと思う。ただこの時のオレは、相手を受け入れることに対して慎重になっていた。
一生の恋をするわけではない。確かにそうだ。しかしそれは、いつかお互いを受け入れられなくなる時がくるということでもある。
その時に感じる寂しさを想像すると、安易に踏み込めない。スミレを抱いたことに後悔はないものの、これ以上深い関係になるのは怖かった。
返す言葉が見つからず黙々とピザを口に運んでいると、オレのスマホが鳴った。
「お?噂をすれば、スミレさん?」
画面に表示された名前を見て、翔流がやたらと嬉しそうな顔を見せる。結局他人事だから、面白がっているだけだろ。
「あ、今いい?」
出ろ出ろと翔流に促されて応答すると、いつも通りのスミレの声が聞こえてきた。
「家にいるの?それなら、これから行っていい?」
「あー……今、友達が来てて」
「面白い画集を見つけたから、渡したいだけ。すぐに帰るから」
「スミレさん来るの?俺も会いたいな~」
わざと大きな声で翔流が言うと、それを聞いたスミレが電話口で吹き出した。本当に、図々しいにもほどがある。
「10分くらいで着くから。じゃあ、後でね」
オレの返事を待たず、スミレはそう言って電話を切ってしまった。
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