ホウセンカ

えむら若奈

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色鮮やかなオオゴチョウ

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 だけど仲良くすることで、長岡さんが他の子に目を向けるのを邪魔してしまう気もして。……もしかして私、邪魔したいのかな。ずっと私のこと好きでいてほしいとか思ってる?

 私は桔平くんしか見ていないし、桔平くん以外の人とどうにかなるなんてことは絶対にないって言い切れるのに。それなのにみんなから好かれたい、私のことを好きでいてほしいって思ってしまうのは、寂しかった過去の反動なのかもしれない。

 こんなグチャグチャに汚い私の感情を、桔平くんはどう感じるんだろう。

「長岡は邪なこと考えるヤツじゃねぇし、愛茉とは普通に友達として仲良くしたいと思ってんじゃねぇかな。ただオレに遠慮してるんだろうけど」
「……私、別にヤキモチ妬かせたいわけじゃないよ」
「分かってるって。アイツは誠実なヤツだから、友達になること自体は何も思わねぇよ。むしろ、良いことなんじゃねぇの」

 桔平くんは私にもたれかかって、手を握ってきた。

「愛茉は男友達いなかっただろ?男と女イコール恋愛ってところもあったし。長岡みたいに自分の感情と上手く付き合える男なら、オレも安心」
「安心?」
「オレにだって、多少なりとも独占欲はあるんだよ」

 握った手に、軽く力がこめられる。独占欲というワードに、思わず胸がキュンとしてしまった。

「信じてないわけでも不安があるわけでもねぇけど。愛茉のこと独り占めしたいって気持ちも、少しはあるわけよ」
「ほんと?」
「こんなことで嘘つくわけねぇだろ。でも愛茉には、いろんな人間と関わってほしいって気持ちがあるのも本当。長岡も小林も個性は強いけど、そういう人間は自分の可能性をどんどん広げてくれるからさ」

 きっと、桔平くん自身がそう感じているんだろうな。なんだかんだ言いながら、小林さんのことも認めているみたいだし。

 個性的な人は自分にない視点をたくさん持っているから、いろいろと気付かされることが多い。桔平くんも、私の可能性を一気に広げてくれたもんね。

「……じゃあ、仲良くします。一佐くん……英哉くんと」
「ああ。アイツらも喜ぶよ」

 モヤッとした気持ちがなくなった。やっぱり私は狡いなぁ。みんなから好かれたいのに、桔平くんには独占されたいなんて。

 でも、そんな私もまるっと受け入れてくれるのが桔平くんなんだよね。

 人間の感情は複雑で、相反する想いが同居することもある。だから時々心が不安定になるけれど、折り合いをつけながら生きているのは、桔平くんも同じなのかもしれない。

「ねぇ、帰ったらギュッてしてね」

 なんとなく甘えたい気分になって、桔平くんの肩に頭を乗せる。そこに、桔平くんが自分の頭をコツンとぶつけた。
 
「嫌ってほどしてやるから、覚悟しとけよ」

 ちょっと雄っぽい桔平くんの声色にドキドキする。早く家に着かないかな。そんなことを思いながら、手を強く握り返した。
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