ホウセンカ

色鮮やかなオオゴチョウ

2

「はぁ、いいなぁ。浅尾さん、めっちゃかっこいいもんね。すっごく色気あるし、あの個性的な服装もクセになるし、スタイルも声もいいし。ねぇー、なんで今年の学祭は来てくれなかったのよー！」
「桔平くん、卒業制作で忙しいから……」

　っていうのは、建前。去年来てくれた時、女の子にキャーキャー言われたのが嫌だったみたいで。今年は七海たちと楽しみなって、やんわり断られたんだよね。そもそも桔平くんは人が多い場所に行くの嫌いだし。女の子の相手をするのは、更に嫌いだし。女子大の学祭なんて地獄でしょう……。

「たまにはいい男眺めて目の保養したいんだよぉ！ここもバ先もオッサンばっかだもん！若い男に飢えてるの！」
「まぁ結衣のその気持ちは分かるわ。浅尾っちみたいな人って、なかなかいないもんね。見るだけで御利益ありそう」
「だよねぇ！？結衣さ、最近気づいたんだよ。葵とも話してたんだけど、やっぱり男は個性出していかないとねって。そして個性と言えば、藝大じゃない？」

　結衣が、ずいっと身を乗り出してくる。……なんか、嫌な予感。

「そこで、愛茉にお願いがあるんだけどぉ……」

　私の予感は、よく当たる。案の定、結衣の“お願い”を断ることが出来なくて、重大な任務を任されてしまった。
　そして帰宅後。桔平くんに、その任務のことを話した。

「はぁ？小林たちと合コン？」

　桔平くんが、これでもかというほど顔をしかめる。予想通りの反応。帰ってきた瞬間は、いつも通りニコニコしてくれたんだけどな。

　そう。重大な任務とは、結衣たちと藝大生との飲み会というか合コンというか、とにかくそのセッティングを頼まれたのです。頼まれたというか、押し切られたというか。とにかく、果たさなければならない任務なのです。

「合コンじゃなくて……ふ、普通の飲み会かなぁ？七海と翔流くんも来るし」
「なんでオレまで行かなきゃなんねぇんだよ」

　言いながら、上着をベッドへ放り投げた。もう、ちゃんとハンガーに掛けてって、いつも言ってるのに。

「……ば、場を和ませ」
「オレが和ませられると思ってんの？」

　ベッドサイドのひとりがけソファにどっかり座って、桔平くんがふんぞり返る。
　思いません。まったく、思いません。不機嫌な様子で、ひたすら食べ続ける姿しか想像できない。

　本当は、結衣と葵が桔平くんに会いたがってるんだよね……。でもそんなこと本人に言ったら、絶対断るだろうしなぁ。
　
「えっと……覚えてる？私たちが出会った合コンに来てた、結衣と葵……」
「まったく覚えてねぇな。そんな太古の昔のこと」

　あ、これは不機嫌スイッチ入ってる。めちゃくちゃ顔に書いてあるし。“すげぇ面倒”って。そしてオーラが怖い。

　七海と翔流くんの一件でもそうだったけれど、桔平くんは他人の恋愛に首を突っ込むのを極端に嫌っている。特に合コンなんて聞くと、関わりたくないって思っちゃうんだろうな。