ホウセンカ

えむら若奈

文字の大きさ
上 下
280 / 407
色鮮やかなオオゴチョウ

1

しおりを挟む
「みんなグラス持ったー?それじゃあ……カンパーイ!」

 翔流くんの号令の後、カチンとグラスを合わせる音が響く。私の隣では、桔平くんが無表情のままサラダを食べ始めた。やっぱり少し、ご機嫌ななめ。

 すっかり秋めいてきた10月中旬。今日は4対4の合コン……ではなく、飲み会?です。場所は東京駅近くの個室バル。もちろん、翔流くんチョイスのお店。

 そして今日のメンバーは……

「いやっ!こない可愛い女の子たちと飲み会やなんて、ドキがムネムネやん!なぁ、ヒデ!」
「あ……う、うん……そうだね……」

 最初からテンションMAXな小林さんと、少々困惑気味の長岡さん。更に、一言も発することなく、ひたすら食べ続ける桔平くん。メンズの中でまともなコミュ力があるのは、翔流くんだけだなぁ……。

「藝大ってどんな感じなのか興味あって、愛茉にお願いしたんですよぉ。時間作ってもらって、ありがとうございますー!」

 小林さんの赤坊主とTシャツに若干引きつつ、その向かいに座る結衣が愛嬌を振りまく。長岡さんの正面にいるのは、葵。葵はどちらかというと大人しい子だから、あまり喋らず、ただニコニコしていた。

 そして葵の横が私、更にその横に桔平くん。で、私たちの向かい、つまり長岡さんの隣に翔流くんと七海……という感じです。

 どうしてこのメンバーで飲み会をすることになったかというと、話は10日ほど前に遡ります。

「結衣も彼氏ほしい!」

 ある日の昼休み。七海と学食でご飯を食べていたら、日替わり定食をドンとテーブルに置きながら結衣が叫んだ。
 ちなみにそのトレーには、定食以外にも惣菜パンが3つ。結衣は細いのに、とっても大食いなのです。もちろん定食のご飯も大盛り。すぐにプクプク肉がついてしまう私からすれば、すごく羨ましい。

「愛茉と七海は、ちゃっかり合コンで彼氏作っちゃってるし。ずるい!」
「愛茉は別として、私は合コンがきっかけってわけじゃないしー。翔流とは、合コン前から知り合いだもん」
「大体さぁ、遊び人だった男が運命の人と出会って一途になって溺愛彼氏になるなんて、どこの少女漫画よ。愛茉、ずるい!」
「そ、そんなこと言われても」

 そういえば桔平くんが遊んでいたって話をしてきたの、結衣だったよね。私、少し根に持ってるんだぞ。性格悪いもので。

 結衣はお調子者というか、軽はずみな言動がちょいちょいあるから、適度に距離を保って付き合っている。もちろん友達としては大好きなんだけど、七海みたいに何でも話せる感じではない。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

あなたの婚約者は、わたしではなかったのですか?

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:284pt お気に入り:3,980

この世界じゃ本気出してないだけー異世界冒険録ー

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:4

June bride.

BL / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

泣き虫殿下はクールを装いすぎている

恋愛 / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:39

【奨励賞】呑めない酒呑童子は京都男子の‪✕‬‪✕‬がお好き

キャラ文芸 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:45

結婚六カ年計画

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:263pt お気に入り:6

知らない異世界を生き抜く方法

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:533pt お気に入り:51

ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない

恋愛 / 完結 24h.ポイント:113pt お気に入り:193

処理中です...