ホウセンカ

えむら若奈

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おしゃべりなコデマリ

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「愛茉ちゃんのことを考えるのがー浅尾きゅんにとっていちばんの幸せなんだろうねぇー。愛茉ちゃんの名前を聞くだけでぇすぐ目がこぉんななるんだからぁ」
 
 言いながら、指で自分の目尻を下げるヨネちゃん。もう、これ以上泣かせないでほしい。桔平くんと出会ってから今までのことが、いろいろと浮かんでくる。なにこれ走馬灯?私、死んじゃうの?

「愛茉の存在って、浅尾っちにとって本当にすべてなんだね。もはや生きる意味って感じ。やば、めちゃくちゃ純愛だわ」

 頭に浮かぶのは、優しさだけ。付き合う前も、付き合ってからも、1年以上経っても、桔平くんは変わらずいつも優しい。
 私はなんて幸せ者なんだろう。桔平くんが傍にいることだけじゃない。七海やヨネちゃんや楓お姉さんが、私の感情を前に向かせてくれる。深い場所へ沈みそうな心を掬い上げてくれる。

 全部が有り難くて幸せすぎて。ああ、どうしよう。溢れて止まらない。個室のお店でよかった。

「ほらぁーお肉食べるぞぉー!デザートもあるでよー」

 ヨネちゃんが、お肉をどんどん焼いていく。私は鼻をかみながら、何度も大きく頷いた。

 ボロボロになったメイクを直して、お肉をたくさん食べて、デザートのシャーベットもしっかりいただいて。楽しくて幸せな女子トークの時間は、こうしてあっという間に過ぎていった。

 そして2人に小樽土産のお菓子を渡して、私は誕生日プレゼントを受け取る。
 七海からはスヌーピーのノートセットとメモ帳とペンケース。ヨネちゃんからのプレゼントは、入浴剤とボディクリームだった。癒されてねーって。今日さっそく使わせてもらおう。

 2人と別れて電車に乗っていると、桔平くんから『今どこ?』ってLINEが来た。もうすぐ新宿だと返事をすると、自分も新宿にいるから一緒に帰ろうだって。あれ、まだ17時過ぎなのにな。

 とりあえず新宿に着いて、桔平くんがいる中央線のホームへと向かった。
 階段を上がってホームに出ると、すぐにカラフルな人影が目に飛び込んできた。その姿を見た瞬間、思いきり抱きつきたくなる。でも人目がありすぎるし、家まで我慢しなくちゃ。

「お、スヌーピー」

 私が持っている手提げ袋を見て、桔平くんが微笑んだ。ああもう、やっぱり抱きつきたい。大好き大好き大好き。

 桔平くんは何も言わず私の荷物を持ってくれて、空いた方の手を繋いでくれる。これが自然にできるのも、素敵なところなんだよね。
 到着した電車に乗り込むと、帰宅ラッシュのピークには少し早いから、車内はそこまで混んでいなかった。席も空いていたけれど、高円寺までは2駅だからドア付近に並んで立っておくことに。
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