ホウセンカ

えむら若奈

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おしゃべりなコデマリ

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 自己肯定感が地の底で、人前で自分を出すのが怖かった私がこんな風になれたのは、間違いなく桔平くんのおかげ。桔平くんが私の全部を受け入れて愛してくれているっていうのを、いつもいつも感じているから。

 だけど私はこれまで、桔平くんに何をしてあげられたのかな。甘えてばかり、与えてもらうばかりで。何も返してあげられていない。何のために傍にいるんだろうって考えてしまう。

「……自分の“してあげたい”とー相手の“してほしい”はー必ずしも同じじゃないんだよねぇ」

 カルビを頬張るヨネちゃんの言葉に、私は思わずハッとする。というより、頭を打たれたような感じになった。

「“してあげたい”って気持ちは大事だけどぉ……相手の望みとズレちゃうことも結構あるからー。自分の“してあげたい”よりも相手の“してほしい”にフォーカスする方がいいかなぁって思うよぉー」
「相手の……してほしい……」

 あれ、待って。私、桔平くんが何をしてほしいのか考えてた?あれしてあげたい、これしてあげたいって、自分の“してあげたい”ばっかりじゃない?

 私がすることは全部受け入れてくれるけれど、それは桔平くんが優しいからで。もっとこうしてほしいなんて、絶対に言わない。いつも「ありがとう」って笑ってくれる。

 桔平くんはいつだって、私がしてほしいことをしてくれるのに。私、桔平くんの優しさに甘えてただけなのかもしれない。

「えっ!なに泣いてんの愛茉」

 七海がギョッとした顔で私を見る。感情と一緒に、涙が思いきり溢れてきてしまった。

「だっ、だって……桔平くんが何で優しいのか、分かっちゃったんだもんー」

 桔平くんは、私が望むことを真っ先に考えてくれている。自分がどうしてあげたいかじゃない。桔平くんの思考の真ん中にあるのは、いつも私。

「んふふぅ。浅尾きゅんはぁいつも愛茉ちゃんのことをよぉく見てるからねぇー。愛茉ちゃんが何をしてほしいのかーなんて言ってほしいのかーずっとそればっかり考えてるんだよぉ。だからとっても小さなことだって見逃さないのねぇー」
「はぁ~……浅尾っち、愛が深いわぁ……」
「たっ、誕生日だってね、私が本当にボソっと言っただけの、スヌーピー、お財布、買ってくれてっ」

 ダメだ。涙が止まらなくて、自分でも何言ってるのか分からない。

 私が頭を撫でてほしい時、ギュッとしてほしい時、喋りたいなぁって時も、桔平くんはいつもタイミングよく望んだことをしてくれる。エスパーみたいだなって思っていたけれど、それは常に私のことを考えて、よく見ているから。だから、どんな些細なサインでもキャッチしてくれるんだ。
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