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アストロメリアのプレゼント
おまけのおはなし「彼女の好きなもの」
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母親から何度も電話が来ていた。あまりにしつこいので、何かあったのかと思って渋々応答する。
「桔平!何が好きなのか教えてくれない!?」
第一声が、それだった。やはり出ない方が良かったかもしれない。
「何の話だよ」
「愛茉ちゃんが好きな食べ物よ!アレルギーとか嫌いなものとかないかしら?何が好きなのかしら?味付けは濃い方がいいのかしら?薄い方がお好みかしら?メニューが決められないのよぉ!」
母親の口調は、ゆったりとしている。ただ普段と比べると、これでもかなり早口な方だ。どうやら相当焦っているらしい。
オレの誕生日前日、愛茉と実家へ行くことになっていた。一緒にランチをしようと楓が誘ったらしい。そのランチを作るのは、当然母親と原田さんなわけで。何を作ればいいのか、悩みまくっているようだ。
まぁ、愛茉のためにいろいろ考えているのなら、協力してやらないとな。
「食物アレルギーはないな。嫌いなものは……苦いものとか辛いものぐらい」
「苦いものと辛いものはダメなのね~!分かったわ!それで、好きな食べ物は?」
「好きな食いモンねぇ……」
真っ先に浮かんだのは、塩ラーメン。ただそれを言うわけにはいかないだろう。作ったことはないはずだから、ラーメン屋へ修行にでも行きかねない。絶対に麺から作りそうだ。
あとは何があったか……愛茉がもぐもぐと咀嚼している顔を思い浮かべて、思わず顔が綻んでしまった。ウサギっぽくて可愛いんだよな。
いや、そうじゃない。好きな物だ。
「あ、生ハムかな」
前にイタリアンの店へ行った時、オレの分まで食べていたのを思い出した。
「生ハムね~!他には?」
「あとは……イチゴ」
「メモしたわ!」
「牛肉の赤ワイン煮込みも好きだな」
「牛肉は、ほほ肉かしら?」
ほほ肉なんて、近所のスーパーには売っていない。庶民のスーパーへ行ったことがない人には、分からないとは思うが。
「まぁ、いいんじゃねぇの。ほほ肉で。滅多に食わねぇし」
「分かったわ!ありがとう、桔平!」
通話が切れる。いつもなら次から次へと話題が飛んで長々と話してくるくせに、珍しくすぐにぶった切られた。
かと思ったら、また着信があった。何なんだよ。
「あと、お魚もお好きかしら~?」
「あー、白身の方が好きっぽいけど、小樽出身だから魚の味にはうるせぇよ」
「そうなのね!厳選しなくちゃ~!」
それだけで、通話は切れた。
これは、かなり金をかける気だな。まぁ、愛茉のためなら、いくらでもかけてやってほしい。いつも節約してくれているし、たまには思いきり贅沢なものを食べさせてやりたい。
母親の手料理なら味は確かだし、きっと喜んでくれるだろう。
……また電話がかかってきた。
「今度はなに」
「スープは何がいいかしら!?」
「ヴィシソワーズで」
間髪入れずに答える。
これは、オレの好み。ひとつぐらい良いだろう。愛茉も好きなはずだし。
「分かったわ!ありがとう!」
「あ、デザートはイチゴのショートケーキな」
先に言っておかないと、また電話がかかってきそうだ。
「そうね、デザートも大事よね。さすが桔平だわ、ありがとう!愛しているわ!」
一方的に言って、通話を切った。これでもう大丈夫だろう。コース料理なら、全部網羅したはずだ。
……と思いきや、30分後にまた電話がきた。
「イチゴの品種って、何が良いのかしら!?さくらももいちご?美人姫?それとも越後姫かしら!?」
……もうそんなん、知らねぇよ。
***おわり***
「桔平!何が好きなのか教えてくれない!?」
第一声が、それだった。やはり出ない方が良かったかもしれない。
「何の話だよ」
「愛茉ちゃんが好きな食べ物よ!アレルギーとか嫌いなものとかないかしら?何が好きなのかしら?味付けは濃い方がいいのかしら?薄い方がお好みかしら?メニューが決められないのよぉ!」
母親の口調は、ゆったりとしている。ただ普段と比べると、これでもかなり早口な方だ。どうやら相当焦っているらしい。
オレの誕生日前日、愛茉と実家へ行くことになっていた。一緒にランチをしようと楓が誘ったらしい。そのランチを作るのは、当然母親と原田さんなわけで。何を作ればいいのか、悩みまくっているようだ。
まぁ、愛茉のためにいろいろ考えているのなら、協力してやらないとな。
「食物アレルギーはないな。嫌いなものは……苦いものとか辛いものぐらい」
「苦いものと辛いものはダメなのね~!分かったわ!それで、好きな食べ物は?」
「好きな食いモンねぇ……」
真っ先に浮かんだのは、塩ラーメン。ただそれを言うわけにはいかないだろう。作ったことはないはずだから、ラーメン屋へ修行にでも行きかねない。絶対に麺から作りそうだ。
あとは何があったか……愛茉がもぐもぐと咀嚼している顔を思い浮かべて、思わず顔が綻んでしまった。ウサギっぽくて可愛いんだよな。
いや、そうじゃない。好きな物だ。
「あ、生ハムかな」
前にイタリアンの店へ行った時、オレの分まで食べていたのを思い出した。
「生ハムね~!他には?」
「あとは……イチゴ」
「メモしたわ!」
「牛肉の赤ワイン煮込みも好きだな」
「牛肉は、ほほ肉かしら?」
ほほ肉なんて、近所のスーパーには売っていない。庶民のスーパーへ行ったことがない人には、分からないとは思うが。
「まぁ、いいんじゃねぇの。ほほ肉で。滅多に食わねぇし」
「分かったわ!ありがとう、桔平!」
通話が切れる。いつもなら次から次へと話題が飛んで長々と話してくるくせに、珍しくすぐにぶった切られた。
かと思ったら、また着信があった。何なんだよ。
「あと、お魚もお好きかしら~?」
「あー、白身の方が好きっぽいけど、小樽出身だから魚の味にはうるせぇよ」
「そうなのね!厳選しなくちゃ~!」
それだけで、通話は切れた。
これは、かなり金をかける気だな。まぁ、愛茉のためなら、いくらでもかけてやってほしい。いつも節約してくれているし、たまには思いきり贅沢なものを食べさせてやりたい。
母親の手料理なら味は確かだし、きっと喜んでくれるだろう。
……また電話がかかってきた。
「今度はなに」
「スープは何がいいかしら!?」
「ヴィシソワーズで」
間髪入れずに答える。
これは、オレの好み。ひとつぐらい良いだろう。愛茉も好きなはずだし。
「分かったわ!ありがとう!」
「あ、デザートはイチゴのショートケーキな」
先に言っておかないと、また電話がかかってきそうだ。
「そうね、デザートも大事よね。さすが桔平だわ、ありがとう!愛しているわ!」
一方的に言って、通話を切った。これでもう大丈夫だろう。コース料理なら、全部網羅したはずだ。
……と思いきや、30分後にまた電話がきた。
「イチゴの品種って、何が良いのかしら!?さくらももいちご?美人姫?それとも越後姫かしら!?」
……もうそんなん、知らねぇよ。
***おわり***
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