ホウセンカ

えむら若奈

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アストロメリアのプレゼント

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「本條さんは?」
「書斎にいらっしゃるから、原田さんが呼びに行ってくれたわ。さ、愛茉ちゃん。こちらへどうぞ~」

 お母様が歌うように言って、踊るように軽やかな足取りで、奥の部屋へと案内してくれた。

 それにしても、外観だけじゃなくて内装も本当に素敵なお家。白がベースだけど、あちらこちらにお花が飾ってあって、とても華やかで明るい空間を演出している。お庭のお花も、お母様の趣味なのかな。
 
「楓ちゃんも、もうすぐ着くみたい。あ、そうそう、手土産をいただいたのよね。どうもありがとう。私、あのお店のフロランティーが大好きなのよ。後でお紅茶と一緒にいただきましょうね」

 お母様は、ゆったりとした口調で喋り続けている。やっぱり、歌っているみたい。
 お菓子を喜んでくださって良かった。楓お姉さんに訊いておいて正解だったな。まぁ、桔平くんが言ってくれたおかげだけども。
 
「楓ちゃんが着いたら、お食事の準備をするわね」

 通されたお部屋には大きなテーブルがあって、高級感のあるテーブルクロスとプレースマットがセッティングされていた。

「なんかすげぇな。レストランみてぇじゃん」
「うふふ。愛茉ちゃんがいらっしゃるって聞いて、張り切っちゃったわ」

 桔平くんの言葉に、お母様がふわりと笑った。本当に花が咲いたような笑顔で、思わず見惚れてしまう。

 テーブルの中央には、花瓶が置いてあった。そこに活けてあるのは、オレンジと白とピンクの組み合わせがとても鮮やかな切り花たち。
 
「とっても素敵です。このお花ってアストロメリア……ですよね?」
「あら、よくご存知ね!」
「アストロメリアは、4月18日の誕生日花なので……」
「あぁ。そういやオレの誕生日の時、必ず食卓に飾ってたよな」

 桔平くんが、テーブルのアストロメリアをしみじみと眺める。
 誕生日のお祝いをしても嬉しそうじゃなかったって楓お姉さんは言っていたけれど、ちゃんと思い出として心に残っているのかもしれない。

「そうなのよぉ!愛茉ちゃん、もしかして植物がお好きなの?」
「はい。あのっ、でも、そ、そこまで詳しいという訳では」
「うふふ、桔平の誕生花だからアストロメリアを知っていたのかしら?可愛いわぁ、愛茉ちゃん」

 お母様は私の両手を取って、ブンブンと上下に振った。小さな子供みたいな行動なのに、何故か自然。この天真爛漫さは、きっと天性のものなんだろうな。

 そういえば、前に桔平くんが言ってたっけ。無重量な人?とか。何となく意味が分かった気がする。
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