211 / 407
アストロメリアのプレゼント
3
しおりを挟む
その翌日。もうすぐ学校の授業が始まるから、その前にたくさん遊んでおこうということで、七海と渋谷へ出かけた。
「なんかいいなぁ、愛茉たちは」
抹茶パフェに突き刺さっていたチョコブラウニーを頬張りながら、七海が物憂げにため息をつく。
ちなみにここは、渋谷駅近くに新しくオープンしたカフェ。パフェが評判なんだって。
「めちゃくちゃ順調っていうか、夫婦感あるもんねぇ」
「七海だって、翔流くんと順調なんでしょ?」
「そうだけどさぁ。なぁんか足りないんだよねぇ。愛茉と浅尾っちみたいに、出会った瞬間、恋に落ちた!ってのが羨ましいわ」
「べ、別に私は、出会った瞬間ってわけじゃ」
「またまたぁ。合コンで抜け駆けしたくせにぃ」
「あ、あれは……その……」
今考えると、我ながらとんでもないことをした気がする。初めての合コンだったのに、誘われたからって、途中でコッソリ抜け出すなんて。
「愛茉って慎重なタイプに見えたからさぁ。そんなことしちゃうんだって、ビックリしたんだよね」
七海の言う通り、自分の性格からすると信じられない行動かも。でもあの時は、行かなきゃって気持ちが強くて。もう桔平くんに会えなかったらどうしようって、そればかり考えていたような気がする。
「でもあの合コンで、私の中の愛茉好感度メーターは急上昇したかも」
「え、なんで?嘘ついて抜け出したのに?」
「ちょっといい子ぶってる感あったからね。なのに、意外とやるじゃんって」
「いい子ぶってる……」
「あはは、最初はそう思ってたんだよ。でも結構行動力あるのに結局ラーメン食べただけっていうのも、めっちゃ可愛い。ていうかラーメン屋に行くつもりが、変な店だったらどうするのよ」
そんなこと、全然頭になかった。でもそうだよね。ホテルじゃないからって安全なわけじゃないもんね。よくついて行ったな、私。
「でも愛茉はさ、ついて行きたくなる何かを浅尾っちに感じたってことでしょ?だから2人は運命の人なんだよ。本能で惹かれ合ってるんだし。それに比べてさぁ、私は翔流のこと、友達としか見てなかったわけじゃん?」
七海は翔流くんのことを、ニックネームじゃなくて名前で呼ぶようになった。もちろん、翔流くんも同じ。恋人になったんだなぁって感じで、何故か私が嬉しくなる。
「付き合いはじめても、なぁんか新鮮味なくてさ。ノリが変わるわけでもないし。ただキスとかエッチするようになっただけって感じ」
「でも穏やかに過ごせているなら、それでいいんじゃないの?」
「そうなんだけど!足りないのよ!トキメキが!愛茉たちみたいに、トキメキを経たうえで熟年夫婦になりたいの!」
「……熟年夫婦じゃないし」
まだ新鮮な気持ちは持ってるもん。朝採れ野菜みたいに瑞々しいもん。
「なんかいいなぁ、愛茉たちは」
抹茶パフェに突き刺さっていたチョコブラウニーを頬張りながら、七海が物憂げにため息をつく。
ちなみにここは、渋谷駅近くに新しくオープンしたカフェ。パフェが評判なんだって。
「めちゃくちゃ順調っていうか、夫婦感あるもんねぇ」
「七海だって、翔流くんと順調なんでしょ?」
「そうだけどさぁ。なぁんか足りないんだよねぇ。愛茉と浅尾っちみたいに、出会った瞬間、恋に落ちた!ってのが羨ましいわ」
「べ、別に私は、出会った瞬間ってわけじゃ」
「またまたぁ。合コンで抜け駆けしたくせにぃ」
「あ、あれは……その……」
今考えると、我ながらとんでもないことをした気がする。初めての合コンだったのに、誘われたからって、途中でコッソリ抜け出すなんて。
「愛茉って慎重なタイプに見えたからさぁ。そんなことしちゃうんだって、ビックリしたんだよね」
七海の言う通り、自分の性格からすると信じられない行動かも。でもあの時は、行かなきゃって気持ちが強くて。もう桔平くんに会えなかったらどうしようって、そればかり考えていたような気がする。
「でもあの合コンで、私の中の愛茉好感度メーターは急上昇したかも」
「え、なんで?嘘ついて抜け出したのに?」
「ちょっといい子ぶってる感あったからね。なのに、意外とやるじゃんって」
「いい子ぶってる……」
「あはは、最初はそう思ってたんだよ。でも結構行動力あるのに結局ラーメン食べただけっていうのも、めっちゃ可愛い。ていうかラーメン屋に行くつもりが、変な店だったらどうするのよ」
そんなこと、全然頭になかった。でもそうだよね。ホテルじゃないからって安全なわけじゃないもんね。よくついて行ったな、私。
「でも愛茉はさ、ついて行きたくなる何かを浅尾っちに感じたってことでしょ?だから2人は運命の人なんだよ。本能で惹かれ合ってるんだし。それに比べてさぁ、私は翔流のこと、友達としか見てなかったわけじゃん?」
七海は翔流くんのことを、ニックネームじゃなくて名前で呼ぶようになった。もちろん、翔流くんも同じ。恋人になったんだなぁって感じで、何故か私が嬉しくなる。
「付き合いはじめても、なぁんか新鮮味なくてさ。ノリが変わるわけでもないし。ただキスとかエッチするようになっただけって感じ」
「でも穏やかに過ごせているなら、それでいいんじゃないの?」
「そうなんだけど!足りないのよ!トキメキが!愛茉たちみたいに、トキメキを経たうえで熟年夫婦になりたいの!」
「……熟年夫婦じゃないし」
まだ新鮮な気持ちは持ってるもん。朝採れ野菜みたいに瑞々しいもん。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
愛しの婚約者は王女様に付きっきりですので、私は私で好きにさせてもらいます。
梅雨の人
恋愛
私にはイザックという愛しの婚約者様がいる。
ある日イザックは、隣国の王女が私たちの学園へ通う間のお世話係を任されることになった。
え?イザックの婚約者って私でした。よね…?
二人の仲睦まじい様子を見聞きするたびに、私の心は折れてしまいました。
ええ、バッキバキに。
もういいですよね。あとは好きにさせていただきます。
イケメン御曹司、地味子へのストーカー始めました 〜マイナス余命1日〜
和泉杏咲
恋愛
表紙イラストは「帳カオル」様に描いていただきました……!眼福です(´ω`)
https://twitter.com/tobari_kaoru
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私は間も無く死ぬ。だから、彼に別れを告げたいのだ。それなのに……
なぜ、私だけがこんな目に遭うのか。
なぜ、私だけにこんなに執着するのか。
私は間も無く死んでしまう。
どうか、私のことは忘れて……。
だから私は、あえて言うの。
バイバイって。
死を覚悟した少女と、彼女を一途(?)に追いかけた少年の追いかけっこの終わりの始まりのお話。
<登場人物>
矢部雪穂:ガリ勉してエリート中学校に入学した努力少女。小説家志望
悠木 清:雪穂のクラスメイト。金持ち&ギフテッドと呼ばれるほどの天才奇人イケメン御曹司
山田:清に仕えるスーパー執事
【完結】側妃は愛されるのをやめました
なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」
私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。
なのに……彼は。
「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」
私のため。
そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。
このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?
否。
そのような恥を晒す気は無い。
「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」
側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。
今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。
「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」
これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。
華々しく、私の人生を謳歌しよう。
全ては、廃妃となるために。
◇◇◇
設定はゆるめです。
読んでくださると嬉しいです!
【完結】この運命を受け入れましょうか
なか
恋愛
「君のようは妃は必要ない。ここで廃妃を宣言する」
自らの夫であるルーク陛下の言葉。
それに対して、ヴィオラ・カトレアは余裕に満ちた微笑みで答える。
「承知しました。受け入れましょう」
ヴィオラにはもう、ルークへの愛など残ってすらいない。
彼女が王妃として支えてきた献身の中で、平民生まれのリアという女性に入れ込んだルーク。
みっともなく、情けない彼に対して恋情など抱く事すら不快だ。
だが聖女の素養を持つリアを、ルークは寵愛する。
そして貴族達も、莫大な益を生み出す聖女を妃に仕立てるため……ヴィオラへと無実の罪を被せた。
あっけなく信じるルークに呆れつつも、ヴィオラに不安はなかった。
これからの顛末も、打開策も全て知っているからだ。
前世の記憶を持ち、ここが物語の世界だと知るヴィオラは……悲運な運命を受け入れて彼らに意趣返す。
ふりかかる不幸を全て覆して、幸せな人生を歩むため。
◇◇◇◇◇
設定は甘め。
不安のない、さっくり読める物語を目指してます。
良ければ読んでくだされば、嬉しいです。
お飾り公爵夫人の憂鬱
初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。
私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。
やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。
そう自由……自由になるはずだったのに……
※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です
※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません
※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる