ホウセンカ

えむら若奈

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アストロメリアのプレゼント

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 その翌日。もうすぐ学校の授業が始まるから、その前にたくさん遊んでおこうということで、七海と渋谷へ出かけた。

「なんかいいなぁ、愛茉たちは」

 抹茶パフェに突き刺さっていたチョコブラウニーを頬張りながら、七海が物憂げにため息をつく。
 ちなみにここは、渋谷駅近くに新しくオープンしたカフェ。パフェが評判なんだって。
 
「めちゃくちゃ順調っていうか、夫婦感あるもんねぇ」
「七海だって、翔流くんと順調なんでしょ?」
「そうだけどさぁ。なぁんか足りないんだよねぇ。愛茉と浅尾っちみたいに、出会った瞬間、恋に落ちた!ってのが羨ましいわ」
「べ、別に私は、出会った瞬間ってわけじゃ」
「またまたぁ。合コンで抜け駆けしたくせにぃ」
「あ、あれは……その……」

 今考えると、我ながらとんでもないことをした気がする。初めての合コンだったのに、誘われたからって、途中でコッソリ抜け出すなんて。
 
「愛茉って慎重なタイプに見えたからさぁ。そんなことしちゃうんだって、ビックリしたんだよね」

 七海の言う通り、自分の性格からすると信じられない行動かも。でもあの時は、行かなきゃって気持ちが強くて。もう桔平くんに会えなかったらどうしようって、そればかり考えていたような気がする。

「でもあの合コンで、私の中の愛茉好感度メーターは急上昇したかも」
「え、なんで?嘘ついて抜け出したのに?」
「ちょっといい子ぶってる感あったからね。なのに、意外とやるじゃんって」
「いい子ぶってる……」
「あはは、最初はそう思ってたんだよ。でも結構行動力あるのに結局ラーメン食べただけっていうのも、めっちゃ可愛い。ていうかラーメン屋に行くつもりが、変な店だったらどうするのよ」

 そんなこと、全然頭になかった。でもそうだよね。ホテルじゃないからって安全なわけじゃないもんね。よくついて行ったな、私。

「でも愛茉はさ、ついて行きたくなる何かを浅尾っちに感じたってことでしょ?だから2人は運命の人なんだよ。本能で惹かれ合ってるんだし。それに比べてさぁ、私は翔流のこと、友達としか見てなかったわけじゃん?」

 七海は翔流くんのことを、ニックネームじゃなくて名前で呼ぶようになった。もちろん、翔流くんも同じ。恋人になったんだなぁって感じで、何故か私が嬉しくなる。

「付き合いはじめても、なぁんか新鮮味なくてさ。ノリが変わるわけでもないし。ただキスとかエッチするようになっただけって感じ」
「でも穏やかに過ごせているなら、それでいいんじゃないの?」
「そうなんだけど!足りないのよ!トキメキが!愛茉たちみたいに、トキメキを経たうえで熟年夫婦になりたいの!」
「……熟年夫婦じゃないし」

 まだ新鮮な気持ちは持ってるもん。朝採れ野菜みたいに瑞々しいもん。
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