192 / 407
モンテスラに願いをこめて
13
しおりを挟む
好きなものに対する執着は強い。桔平くんは前にそんなことを言っていたけれど、もしかすると普段は表に出さないだけで、実はとてつもなく独占欲が強い人なのかもしれない。
まだまだ知らない顔がたくさんある。付き合いが長くなるとトキメキが減るなんて聞くけれど、私はいつでも桔平くんにドキドキしっぱなし。いつかは慣れてくるのかな?
「愛茉はいつもネットで検索するよな、そういうの」
「だって、初めてのことだらけだし。いろいろ参考にしたいじゃない」
お風呂から上がってベッドでゴロゴロしながら“カップル 9ヶ月”で検索した内容を眺めていると、隣に寝転んだ桔平くんが画面を覗き込んできた。
「9ヶ月カップルあるある……新鮮味がなくなる、自分磨きを怠るようになる、お互いの嫌な部分が見えてくる……ほぉ~」
私の右肩に軽く頭を乗せて、記事を読み上げる桔平くん。耳元で声が聞こえて、なんだかくすぐったい。
「……当てはまるの、あるかな?」
「嫌な部分が見えてくる。これはあるだろ。嫌な部分っつーか、些細な価値観の相違。ない方が不自然だわ」
「え、私のこと嫌になった?」
「なるわけねぇだろ。こまけぇな~って思うぐらいだよ。愛茉だって、オレの嫌なところ見えてきたんじゃねぇの?」
「う~ん……そんなにないよ」
「少しはあるわけね。聞こうじゃないか」
そう言って、桔平くんは仰向けに寝転がった。真面目に聞く姿勢とは思えないんですけど。でもズバッと言っちゃうもんね。
「えっと……コーヒー豆の量が毎回違うから味が一定じゃないところとか、外から帰ってきて脱いだものをすぐベッドに放り投げるところとか、ハンガーの掛け方がグチャグチャなところとか、お風呂掃除が雑なところとか、電車の時刻を調べずに出かけて無駄な時間を過ごしちゃうところとか、たまにエッチが変態チックなところとか」
「ほとんど“大雑把”の一言で済む内容じゃねぇかよ。つーか、最後のが聞き捨てならねぇんだけど。オレはめちゃくちゃノーマルだろうが。そんな変なことはしてねぇぞ、多分」
「え~……だって桔平くん、耳の後ろの匂いかぐし……変態っぽいじゃない……」
私には“ノーマル”がよく分からない。しかも桔平くんって、いつも同じパターンというわけではないから、いまだに何をしてくるか予想できないんだよね。
私の言葉に、桔平くんがいきなり半身を起こした。
「待て待て待て、好きな子の匂いをかぎたくなるのは万国共通事項だろ。それに耳の後ろってのはフェロモンが出る場所とも言われていてだな。その匂いが好きなのは相性が良いってことなんだわ」
「本当にぃ?」
「マジだって。愛茉だってオレの匂い好きだろ?」
「好きだけど……耳の後ろは、意識したことないもん」
「んじゃ、どうぞ」
桔平くんが首を傾けて、髪の毛を持ち上げた。綺麗な首筋があらわになる。
どうぞって言われても……とか思いつつも、体を起こして顔を近づけた。なんか首筋にキスするみたいで、少しエッチかも。
「うお、思ったよりくすぐってぇ」
桔平くんが軽く身をよじる。
「ちょっと、じっとしてよ」
「はい、すんません」
あ、桔平くんの匂い。あたたかい匂いというか、甘い匂いというか……。あぁ、やっぱり好きだなぁ。すごく落ち着く。
まだまだ知らない顔がたくさんある。付き合いが長くなるとトキメキが減るなんて聞くけれど、私はいつでも桔平くんにドキドキしっぱなし。いつかは慣れてくるのかな?
「愛茉はいつもネットで検索するよな、そういうの」
「だって、初めてのことだらけだし。いろいろ参考にしたいじゃない」
お風呂から上がってベッドでゴロゴロしながら“カップル 9ヶ月”で検索した内容を眺めていると、隣に寝転んだ桔平くんが画面を覗き込んできた。
「9ヶ月カップルあるある……新鮮味がなくなる、自分磨きを怠るようになる、お互いの嫌な部分が見えてくる……ほぉ~」
私の右肩に軽く頭を乗せて、記事を読み上げる桔平くん。耳元で声が聞こえて、なんだかくすぐったい。
「……当てはまるの、あるかな?」
「嫌な部分が見えてくる。これはあるだろ。嫌な部分っつーか、些細な価値観の相違。ない方が不自然だわ」
「え、私のこと嫌になった?」
「なるわけねぇだろ。こまけぇな~って思うぐらいだよ。愛茉だって、オレの嫌なところ見えてきたんじゃねぇの?」
「う~ん……そんなにないよ」
「少しはあるわけね。聞こうじゃないか」
そう言って、桔平くんは仰向けに寝転がった。真面目に聞く姿勢とは思えないんですけど。でもズバッと言っちゃうもんね。
「えっと……コーヒー豆の量が毎回違うから味が一定じゃないところとか、外から帰ってきて脱いだものをすぐベッドに放り投げるところとか、ハンガーの掛け方がグチャグチャなところとか、お風呂掃除が雑なところとか、電車の時刻を調べずに出かけて無駄な時間を過ごしちゃうところとか、たまにエッチが変態チックなところとか」
「ほとんど“大雑把”の一言で済む内容じゃねぇかよ。つーか、最後のが聞き捨てならねぇんだけど。オレはめちゃくちゃノーマルだろうが。そんな変なことはしてねぇぞ、多分」
「え~……だって桔平くん、耳の後ろの匂いかぐし……変態っぽいじゃない……」
私には“ノーマル”がよく分からない。しかも桔平くんって、いつも同じパターンというわけではないから、いまだに何をしてくるか予想できないんだよね。
私の言葉に、桔平くんがいきなり半身を起こした。
「待て待て待て、好きな子の匂いをかぎたくなるのは万国共通事項だろ。それに耳の後ろってのはフェロモンが出る場所とも言われていてだな。その匂いが好きなのは相性が良いってことなんだわ」
「本当にぃ?」
「マジだって。愛茉だってオレの匂い好きだろ?」
「好きだけど……耳の後ろは、意識したことないもん」
「んじゃ、どうぞ」
桔平くんが首を傾けて、髪の毛を持ち上げた。綺麗な首筋があらわになる。
どうぞって言われても……とか思いつつも、体を起こして顔を近づけた。なんか首筋にキスするみたいで、少しエッチかも。
「うお、思ったよりくすぐってぇ」
桔平くんが軽く身をよじる。
「ちょっと、じっとしてよ」
「はい、すんません」
あ、桔平くんの匂い。あたたかい匂いというか、甘い匂いというか……。あぁ、やっぱり好きだなぁ。すごく落ち着く。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
恋とキスは背伸びして
葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員
成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長
年齢差 9歳
身長差 22㎝
役職 雲泥の差
この違い、恋愛には大きな壁?
そして同期の卓の存在
異性の親友は成立する?
数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの
二人の恋の物語
律と欲望の夜
冷泉 伽夜
大衆娯楽
アフターなし。枕なし。顔出しなしのナンバーワンホスト、律。
有名だが謎の多いホストの正体は、デリヘル会社の社長だった。
それは女性を喜ばせる天使か、女性をこき使う悪魔か――。
確かなことは
二足のわらじで、どんな人間も受け入れている、ということだ。

社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
めぐる鍵、守護するきみ-鍵を守護する者-
空哉
恋愛
世界は鍵によって均衡を保っていた。
その鍵を所有する者、守る者、狙う者。
それぞれが交錯するとき、歯車は動き出す。
都内郊外に暮らす中学3年生の月代美都(つきしろ みと)。彼女はただ、普通の少女だった。あの日、ピアノの音に導かれるまでは。
これは一人の少女が宿命に立ち向かうお話。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる