ホウセンカ

えむら若奈

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モンテスラに願いをこめて

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「桔平くんは?私のこと好き?」
「好きだよ」
「大好き?」
「すっげぇ大好き」
「どのくらい?」
「……宇宙くらい?」
「宇宙って、どのくらい大きいの?」
「どのくらい大きいか分かんねぇくらい、大きいの」

 我ながら子供っぽいのは分かっている。はたから見れば、いわゆるバカップルなのかもしれない。でも、いいんだもん。桔平くんにさえ可愛いって思ってもらえたら、私はそれだけで生きていけるから。

「とりあえず、頑張らねぇとな。愛茉を世界一周旅行に連れてってやんなきゃ」
「うん、楽しみにしておくからね」

 計画書をサイドテーブルに置いて、桔平くんがキスをしてくれた。

 お金には無頓着でも、私との将来はちゃんと考えてくれている。

 クリスマスの時、5年以内にプロポーズすると宣言してくれてから、前よりも絵を描く時間が増えたし。大学卒業後は藝大の大学院へ進学して、更に絵の道をつきつめるみたい。5年と言ったのは、それも考えてのことだった。

 ちなみに明日からは、米田さんや小林さんたちと企画したグループ展がはじまる。それも将来に向けた動きのひとつらしくて、新宿のアートギャラリーで1人4作品ずつ展示するんだって。

 そして翌日、桔平くんは朝から出かけて行った。
 開館が12時だから、私はお昼前にひとりでギャラリーへと向かう。東京の街にも慣れてきたけれど、ひとりで新宿に行くのは初めてで、少しドキドキした。

「あー愛茉ちゃんだー!」

 東口から徒歩15分ほどのところにあるコンクリート打ちっぱなしのモダンなギャラリーへ入ると、独特な口調で米田さんが迎えてくれた。相変わらず丸メガネにベレー帽で、癒しのオーラを放っている。

「わーい、学祭ぶりだねぇー」

 米田さんは私の両手を取って、ギュッと握ってきた。こんなにフワフワ可愛くて癒し系なのに、おどろおどろしい妖怪を描いているんだもんね。
 
「米田さん、お久しぶりです」
「やだもー、ヨネって呼んでよう。敬語もやめやめー!私と愛茉ちゃんの仲なんだしー」
「じ、じゃあ……ヨネちゃん……」

 なんだか友達が増えたみたいで嬉しくて、ちょっと照れてしまった。
 
「いやっ!可愛い!撃ち抜かれたっ!」

 オーバーリアクションで左胸に両手を当てながら、小林さんが登場した。こちらも相変わらず、真っ赤な坊主頭。
 
「あ、小林さんも、お久しぶりです」
「やだもー、一佐って呼んでよぉー」

 ヨネちゃんの口調を真似する小林さん。本当に面白い人だなぁ。でも、ずっと一緒にいたら疲れそうだけど……桔平くんは大丈夫なのかな。
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