ホウセンカ

えむら若奈

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白いアザレアを貴方へ

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 仲良さげにじゃれあう七海と翔流くんを横目に見つつ、絵画科の展示をしている校舎内へと入る。

「あんま首突っ込むなよ?」

 私が2人の様子を気にしているのを察した桔平くんが、ボソッと言った。

 桔平くんは他人の恋バナが嫌いだもんね。嫌いというか、周りがあれこれ手出し口出しするものじゃないって思っている感じ。

 それは分かるんだけども。七海にはたくさん話を聞いてもらって、たくさん背中を押してもらったから、何かできることはないのかなって思っちゃって。

 でも桔平くんの言う通り、大人しくしておこう。気にはなるけれど、私が首突っ込んでこじれさせる方が嫌だし。それに本当に縁があるなら、自然と落ち着くところに落ち着くはず。
 こんな風に考えられるのも、桔平くんがいるからなんだけどね。

「あ!浅尾先輩!お疲れ様です!」
 
 絵画科の展示スペースの入口に立っていた女の子が声をかけてきた。腕章をしているから、係の学生さんかな。

「お疲れ」

 ほとんど顔も見ずに、素っ気なく返事をする桔平くん。でもその女の子は、キラキラした目で頬を赤らめていた。

 浅尾先輩、かぁ。桔平くんは、後輩の子にとって憧れの存在なんだろうな。いろいろ賞を取ってるって言ってたし。

「オレのは真ん中ぐらいにあるから。ゆっくり回ろうぜ」

 私にはいつも、こうやって優しい表情を見せてくれるんだよね。後輩の女の子に対する態度の違いを目の当たりにして、つい優越感に浸ってしまう。本当に性格悪いなぁ、私。でも嬉しいんだもん。桔平くんの優しい笑顔は、私だけのものなんだから。

「人多いし、ほら」

 桔平くんが左手を差し出す。七海たちはマイペースに歩いてきているから、私は桔平くんと手を繋いで展示を見て回ることにした。

 米田さんと小林さんの絵もあった。桔平くんが言っていた通り、米田さんの絵は妖怪の百鬼夜行を描いたもの。不気味なんだけれど、それぞれの妖怪の表情がとっても細かくて。思わず、細部までじっと見てしまった。

 小林さんの絵は、水面に浮かぶ睡蓮とカワセミを描いたもの。あの賑やかな人柄からは想像ができないぐらい繊細な絵で、やっぱり人って分からないものだなぁって思った。桔平くんの絵も、派手で奇抜な見た目とは全然結びつかないもんね。

 たくさんの絵がある中で、他と比べて立ち止まっている人が多い場所があった。多分あそこかな、桔平くんの絵は。

「……あれ、楓?」

 絵の前の人だかりを見て、桔平くんが声を上げた。か、かえで?まさか元カノ?
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