116 / 407
白いアザレアを貴方へ
2
しおりを挟む
「ボロネーゼはパスタだろ。すげぇウマそうじゃん、英雄ボロネーゼ」
あ、素で間違えた。恥ずかしい。……ていうか、ちょっと笑いすぎじゃない?桔平くんって、こんなに笑いのツボが浅い人だったっけ。
「そうだ。夕飯、ボロネーゼにしようぜ」
「……こんなので夕ご飯のメニューが決まるの、なんかヤダ」
桔平くんに背を向けて、ベッドの上に座り込む。そんなに笑わなくていいじゃない。……と思いつつ、一応ボロネーゼのレシピをスマホで検索しちゃう。
「ふてくされんなよ。いいじゃん、メニューに悩む必要なくて」
「トマト缶ないもん」
「んじゃ、一緒に買い物行こう」
「外、暑いもん」
「怒んなって。ごめん、笑いすぎたよ」
後ろから抱きすくめられた。私が不機嫌になったら、いつもこうやって抱き寄せてキスをしてくれる。
桔平くんは私に甘すぎるんだよね。だから私も、わざと怒っているフリをしてみたりして。こういうずるい性格は、なかなか直らないの。
「……正解は何?英雄ボロネーゼじゃなくて」
「ポロネーズな。ショパンの曲」
「その曲聴く度にパスタ食べたくなっちゃいそう」
2人で笑い合った。
最近はこんな風に、桔平くんの前でめちゃくちゃ感情を出せている。多分お父さんと会った日が転機になったんだと思う。あの夜以来、桔平くんが近く感じるようになったから。
とってもワガママで怒りっぽい私を、いつも可愛がってくれる。漫画のヒロインにはなれない私を、全力で愛してくれている。だから桔平くんと一緒にいたら、そのままの自分を受け入れてもらえる幸せを感じるんだよ。
桔平くんと出会った春はあっという間に過ぎて、もう夏も終わる。秋も冬も、その先の季節も、ずっと一緒に過ごしたいな。
「愛茉さぁ、最近綺麗になったよね」
上野へ向かう電車の中で、七海が私の顔をまじまじと見つめて言った。
今日は藝大の大学祭。桔平くんは先に学校へ行っているから、私は七海と一緒に向かっている。
「もともと国宝級に可愛いんだけどさ、なんていうのかな……色気が出てきた感じ?やっぱり愛されてる女は違うわぁ」
「そんなに違う?」
「全然違うよ。内面からにじみ出てる感じ。心も体も満たされてますーって。やっぱり持つべきものは、エッチが上手い彼氏よね」
電車の中で、そんな話をしないでほしい。多少声のトーンは落としているけれど、周りに聞こえていないかヒヤヒヤしてしまう。
あ、素で間違えた。恥ずかしい。……ていうか、ちょっと笑いすぎじゃない?桔平くんって、こんなに笑いのツボが浅い人だったっけ。
「そうだ。夕飯、ボロネーゼにしようぜ」
「……こんなので夕ご飯のメニューが決まるの、なんかヤダ」
桔平くんに背を向けて、ベッドの上に座り込む。そんなに笑わなくていいじゃない。……と思いつつ、一応ボロネーゼのレシピをスマホで検索しちゃう。
「ふてくされんなよ。いいじゃん、メニューに悩む必要なくて」
「トマト缶ないもん」
「んじゃ、一緒に買い物行こう」
「外、暑いもん」
「怒んなって。ごめん、笑いすぎたよ」
後ろから抱きすくめられた。私が不機嫌になったら、いつもこうやって抱き寄せてキスをしてくれる。
桔平くんは私に甘すぎるんだよね。だから私も、わざと怒っているフリをしてみたりして。こういうずるい性格は、なかなか直らないの。
「……正解は何?英雄ボロネーゼじゃなくて」
「ポロネーズな。ショパンの曲」
「その曲聴く度にパスタ食べたくなっちゃいそう」
2人で笑い合った。
最近はこんな風に、桔平くんの前でめちゃくちゃ感情を出せている。多分お父さんと会った日が転機になったんだと思う。あの夜以来、桔平くんが近く感じるようになったから。
とってもワガママで怒りっぽい私を、いつも可愛がってくれる。漫画のヒロインにはなれない私を、全力で愛してくれている。だから桔平くんと一緒にいたら、そのままの自分を受け入れてもらえる幸せを感じるんだよ。
桔平くんと出会った春はあっという間に過ぎて、もう夏も終わる。秋も冬も、その先の季節も、ずっと一緒に過ごしたいな。
「愛茉さぁ、最近綺麗になったよね」
上野へ向かう電車の中で、七海が私の顔をまじまじと見つめて言った。
今日は藝大の大学祭。桔平くんは先に学校へ行っているから、私は七海と一緒に向かっている。
「もともと国宝級に可愛いんだけどさ、なんていうのかな……色気が出てきた感じ?やっぱり愛されてる女は違うわぁ」
「そんなに違う?」
「全然違うよ。内面からにじみ出てる感じ。心も体も満たされてますーって。やっぱり持つべきものは、エッチが上手い彼氏よね」
電車の中で、そんな話をしないでほしい。多少声のトーンは落としているけれど、周りに聞こえていないかヒヤヒヤしてしまう。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。



社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる