ホウセンカ

えむら若奈

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ホワイトカーネーションの便り

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 そして週明けの月曜日。お父さんと会う日。
 私は新しい洋服を買って、目いっぱいオシャレをしていた。

「めちゃくちゃ気合い入ってんじゃん」

 洗面所で髪を巻いていると、桔平くんが顔を覗かせてきた。
 
「だって、お父さんに会うの久しぶりだもん」
 
 大人っぽくなったなって、少しでも思ってもらいたい。だからホワイトのミモレ丈スカートに薄いブルーのシフォンブラウスっていう、いつもとはちょっと違うコーデにしてみた。メイクや髪型も、子供っぽくないように意識して。もちろん、桔平くんがくれたネックレスもつけている。

 桔平くんが、じっと私を見つめてきた。この癖は相変わらずだけど、これは私のことが大好きな証拠なんだもんね。だから全然嫌じゃない。
 
「綺麗だよ」

 そして、こういうことサラって言う。これにはまだ慣れなくて、顔が赤くなってしまうんだけど。
 
「あ、ありがとう。桔平くんも、すごくかっこいいよ」
「でも柄がないと落ち着かねぇや」
 
 桔平くんは爽やかなブルーのギンガムチェックのシャツ、ネイビーのテーラードジャケット、ライトベージュのスラックスという服装。そして髪は低い位置で、すっきりひとつにまとめている。宣言通り清潔感があって好感度高そうな格好なんだけど、完璧にかっこよすぎて胸がキュンキュンしてしまう。

「そういう服も持ってたんだね」
「一応、TPOはわきまえてるんでね。普通にスーツも持ってるし」

 多分全然着ることがないから、クローゼットの奥にあるんだろうな。私のスペースは手前の方だから、そこは未開の地なんだけど。
 桔平くんが、また凝視してくる。そして私の首筋に手を伸ばして、ネックレスに触れた。慈しむような優しい視線に胸の奥が疼く。

 桔平くんの、無言の愛情表現。最近はこういうのが増えたように思う。もともとは言葉よりも態度で表す人なんだろうな。触れられるだけで、不思議と感情が流れ込んでくる。

「……あと10分くらいで出ねぇと、遅れるよ」

 そう言って、優しく頬を撫でてくれた。

 お父さんの話が何なのか、怖さはあるけれど。大好きな人を紹介できることは嬉しい。

 勉強も頑張っているし、良い友達にも恵まれて、優しい彼氏が傍にいてくれる。だから東京に来て良かった。幸せなんだって、ちゃんとお父さんに伝えたい。
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