ホウセンカ

えむら若奈

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ホワイトカーネーションの便り

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「愛茉、水」

 桔平くんが、コップに水を入れてきてくれた。受け取るために体を起こそうとしたけれど、力が入らなくて、またベッドへと倒れ込む。

「口移しで飲ませてやろうか?」

 にやりと笑いながら桔平くんが言う。
 あ、ダメだ。薄暗い中で上半身裸の桔平くんを見たら、さっきまでのアレコレを鮮明に思い出してしまう。熱くなる顔を、枕へと押し付ける。でもそこからは大好きな桔平くんの匂いがして、思わず足をジタバタさせた。

「なにしてんの」
「だ、だって……」

 さっきまで夢と現実の狭間にいるような感覚だったけれど、意識がハッキリしてくると、桔平くんに抱かれた実感がこみ上げてきて。嬉しくて恥ずかしくて全身がむずむずする。ていうか、なんだかすごいことを経験してしまったような感じ。

「汗かいただろ。水飲んだら、シャワー浴びようぜ」
「うん……え、一緒に!?」
「そりゃそうだろ。終わった後に別々で浴びるとか、寂しいじゃん。それか風呂溜めて入る?」
「う、うん。お風呂の方がいいかな……」

 入浴剤入れたら、少しは視界をごまかせるよね……。

 私はまだ動ける状態じゃなかったから、桔平くんがお風呂を溜めてくれた。多分、全身に力が入っていたんだろうな。そこから一気に脱力したら、動かせなくなっちゃった。

 なんとか立ち上がったものの、ふわふわした感覚のままバスルームへ向かう。幸いバスルームの照明は照度が変更できるものだったから、桔平くんは少し不満げな表情で、できるだけ暗めに設定してくれた。

 でもハッキリ見えなくなったのはいいんだけど、逆に桔平くんが色っぽく見える。

「体、痛くねぇ?」
「うん、痛くはないけど……なんか、変な感じ。自分の体じゃないような……」

 桔平くんに後ろから包み込まれる形で、湯船に浸かる。恋人って、本当にこんな風にして入るんだ……。でも今はコンタクトをつけていて視界良好だから、後ろ向きで良かったかも。
 
「偉そうなこと言っときながら、オレもあんま余裕なかったからさ」
「そうなの?」
「好きな子が可愛い格好してたら、普通に宇宙まで理性飛ぶだろ。だから、ちゃんと優しくしてやれたんかなって」
「や、優しかったよ。すごく……」

 ていうか思い出すと、頭がのぼせそう。
 こういうことも、いつかは慣れるのかな。新鮮さがなくなっていくのって、良いことなのか悪いことなのか。どちらにしても、今の気持ちを忘れたくないと思う。
 
「はぁ、なんかすげぇ幸せ」

 桔平くんにギュッと抱きしめられて、体だけじゃなく心まで温まってくる。慣れてしまわずに、いつまでも嬉しい、幸せって思っていたいな。

「私も、すっごく幸せ」

 普段は猫被って建前ばっかりだけど、桔平くんへの言葉には嘘なんてない。
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