ホウセンカ

えむら若奈

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赤いツツジのブーケ

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「……連れて帰ってくれてもいいのに」
「だから煽るなって。言っとくけど、オレかなり我慢してきたんだからな。連れて帰って何もしないわけねぇだろ。今でもギリギリなんだぞ」

 キス以上は、まだちょっと不安。でも一緒にいたくて。もっともっと、くっついていたくて。今日は離れたくない。

「そんな顔すんなよ……」
「だって」

 あ、なんか涙が出てきた。これじゃ、ただの駄々っ子じゃない。

 でも感情のブレーキはとっくに壊れていて、今は桔平くんと一緒にいたくて仕方がない。だってひとりになったら、夢から醒めてしまいそうなんだもん。

 困らせたくはない。だけど行かないで。唇をかみしめて、なんとかその言葉を飲み込んだものの、代わりに涙がボロボロ零れてしまう。ほら、やっぱり面倒くさい女でしょ?

「……ウチ来る?」

 少し困った表情で涙を拭ってくれながら、桔平くんが言った。
 
「オレは課題があるし、相手出来ねぇから何も楽しくはないと思うけど。それでもいいなら、ウチにおいで」
「い、いいの?」
「本当はよくねぇよ。どんだけオレの忍耐力試したいんだよ」

 今度は、めちゃくちゃ不機嫌そうな顔。桔平くんがこんなにコロコロと表情を変えるのを見たのは初めてで。ちょっと可愛いとか思ってしまった。

「でも一緒にいたいのはオレも同じだから、仕方ねぇわ。精神修行だと思って課題やってやる」
「ごめんなさい……ワガママ言って」
「言えって言ったのはオレだし、責任は取るよ。まだキス以上はしねぇから安心しな。ここまできたらいくらでも待てるわ、多分」
 
 “多分”のところ、妙に声が小さかったんだけど。そういうことを我慢するのって、やっぱり大変なのかな。好きな人に触れたいって思うのは自然なことだもんね。

 とても酷なことを強いているのかもしれない。でも今日はどうしても桔平くんと一緒にいたかったから、甘えることにした。

 桔平くんの家からそのまま学校へ行けるように、服だけじゃなくて教科書や参考書もバッグに詰め込む。コスメ一式はいつもポーチに入れているし、歯ブラシと歯磨き粉は買い置きの物を持っていこう。

「服とか、ウチに少し置いとけば?クローゼット広いから、愛茉用のスペース作れるよ」

 それはつまり、いつでも泊まれるようにってことだよね?いきなり幸せすぎて、ちょっと感情が追いつかない。

 桔平くんに言われて何着か見繕って、借りていたホキ美術館コレクションも持って……なんだか大荷物になっちゃったけど、桔平くんが呼んでくれたタクシーで一緒に家へと向かった。
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