ホウセンカ

えむら若奈

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赤いツツジのブーケ

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 二度と会いに来ない?ここで私が拒絶したら、もう桔平くんに会えなくなるってこと?
 
「……ホントにキスするよ?」

 息がかかるほどの距離で言われる。

 キスしてほしい。本当は、そう言いたい。だって、会えなくなるなんて嫌だもん。

 でも自分の気持ちを口にしたら、同時に失ってしまうような気がして。だから言いたくない。言わせないでほしい。自分の気持ちを伝えずに桔平くんを繋ぎ止められないかって、ずるいことばかり考えてしまう。

 桔平くんの目を見つめた。綺麗なグレーの中に、吸い込まれそうになる。

「いいよ」

 それだけ言って、瞼を閉じた。

 柔らかい唇が、そっと触れる。まるでシャボン玉に触れるような、すごくすごく優しいキス。それはほんの一瞬で、触れたのが唇だとは分からないくらい。

 それなのに、火がついてしまった。もっと求めてほしい。息ができないくらい、桔平くんに求められたい。

 涙が出てくる。どうしてかは分からない。ただ、胸の奥から何かが溢れてきて、どうしようもなくなった。ブレーキが、ついに壊れてしまった。

「好き」

 涙と一緒に、言葉が零れる。

「桔平くんが、大好き」

 言い終わらないうちに、唇を塞がれた。今度は触れるだけじゃなくて、さっきよりも深く、長く。甘い何かが、体に流れ込んできた。

 一瞬離れても、想いと一緒に、また重なる。その度に、大好きだって言われているように感じた。

 桔平くんのことが、好きで好きで仕方がない。とっくに気がついていたのに、その2文字が口に出せなかった。私にとっては、すごく重たい言葉だったから。

 桔平くんの大きな手が私の頬を優しく撫でて、涙を拭ってくれる。そしてまた、唇を重ねた。

 どうしてこんなに温かくて心地いいんだろう。ドキドキするけど、安心できる。こんな風に感じるのは、絶対に桔平くんだけ。

 大好き、大好き、大好き。何回言っても足りないよ。言葉なんかじゃ表現できないくらい、桔平くんが大好き。

「……全然足りねぇんだけど、もっとしていい?」

 その熱を帯びた瞳の艶めかしさに、頭の中が沸騰しそうになる。
 
「もっと?な、なに、何を?」
「だから、キスを」
「あ、そ、そっちね」
「……それ以上のこと、してほしいわけ?」

 桔平くんが、いつもの意地悪な表情になった。
 
「ち、ちがっ、違うから!いろいろ準備できてないし!」
「オレは別に、下着が上下別でも気にしねぇけど。どうせ脱がせるんだし」
「違う!こ、心の準備とか!」
 
 桔平くんが笑いをかみ殺している。多分、私の顔は真っ赤になっているんだろうな。
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