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小さなイベリス
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「草食用の消化器ではないから、竹食っても2割ぐらいしか消化できねぇんだってさ。だから大量に食う必要があって、1日の大半を食って過ごしてるんだよ。その姿を人間の見世物にされるなんて、なんか虚しくねぇ?」
……冷めているというか、とても現実的なことを言う時も多い。男の人って、こんなもの?あんなに可愛い姿を、虚しいだなんて。
「……桔平くん、夢がない」
「そう?オレがパンダなら、現実を知ってくれって思うけどな」
「桔平くんが、パンダ……」
思わず、パンダの着ぐるみを着た桔平くんを想像してしまった。目つきの悪いパンダ……あ、ダメだ。笑いをこらえきれない。
「……そこで笑う?」
桔平くんが呆れ顔で言う。
「だって、想像しちゃって」
「パンダになるとか嫌だわ」
「パンダ嫌い?」
「好きでも嫌いでもねぇけど地味じゃん。白と黒のみ」
「じゃあ、桔平くんの好きな動物って何?」
「ヒノドハチドリとかエボシカメレオン」
馴染みのない単語に、思わず目を瞬かせる。
桔平くんは、スマホで検索して画像を見せてくれた。ヒノドハチドリもエボシカメレオンも、緑やオレンジや赤や青といったカラフルな色合いで、まるでアートみたい。
「うわぁ、すごい色。綺麗だね」
「だろ?自然界の色って奇跡だよな」
それにしても、犬とか猫じゃなくて、全然身近にいない生き物を挙げるあたりが桔平くんっぽい。生き物も派手なのが好きなんだ。
「桔平くんって、カラフルなものが好きなんだね。やっぱりモノトーンの洋服は着ない?」
「せっかく人間には3原色を識別する目があるのに、わざわざ白やら黒だけ着るのはもったいなくね?」
なるほど。少しずつ、桔平くんの価値観が分かってきた気がする。見た目は派手だし、怖いというかチャラいというか独特だけど。人の目を引きたいとか目立ちたいなんて気持ちは、まったく感じない。
ああ、そっか。桔平くんは、自分が持っているものをいつも最大限に表現しているだけなんだろうな。だからすごく魅力的に映るのかもしれない。
軽そうとかチャラそうとか、そんなことを思っていたのが申し訳ないな。
……冷めているというか、とても現実的なことを言う時も多い。男の人って、こんなもの?あんなに可愛い姿を、虚しいだなんて。
「……桔平くん、夢がない」
「そう?オレがパンダなら、現実を知ってくれって思うけどな」
「桔平くんが、パンダ……」
思わず、パンダの着ぐるみを着た桔平くんを想像してしまった。目つきの悪いパンダ……あ、ダメだ。笑いをこらえきれない。
「……そこで笑う?」
桔平くんが呆れ顔で言う。
「だって、想像しちゃって」
「パンダになるとか嫌だわ」
「パンダ嫌い?」
「好きでも嫌いでもねぇけど地味じゃん。白と黒のみ」
「じゃあ、桔平くんの好きな動物って何?」
「ヒノドハチドリとかエボシカメレオン」
馴染みのない単語に、思わず目を瞬かせる。
桔平くんは、スマホで検索して画像を見せてくれた。ヒノドハチドリもエボシカメレオンも、緑やオレンジや赤や青といったカラフルな色合いで、まるでアートみたい。
「うわぁ、すごい色。綺麗だね」
「だろ?自然界の色って奇跡だよな」
それにしても、犬とか猫じゃなくて、全然身近にいない生き物を挙げるあたりが桔平くんっぽい。生き物も派手なのが好きなんだ。
「桔平くんって、カラフルなものが好きなんだね。やっぱりモノトーンの洋服は着ない?」
「せっかく人間には3原色を識別する目があるのに、わざわざ白やら黒だけ着るのはもったいなくね?」
なるほど。少しずつ、桔平くんの価値観が分かってきた気がする。見た目は派手だし、怖いというかチャラいというか独特だけど。人の目を引きたいとか目立ちたいなんて気持ちは、まったく感じない。
ああ、そっか。桔平くんは、自分が持っているものをいつも最大限に表現しているだけなんだろうな。だからすごく魅力的に映るのかもしれない。
軽そうとかチャラそうとか、そんなことを思っていたのが申し訳ないな。
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