ホウセンカ

えむら若奈

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窓際のハーデンベルギア

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 つまり、抜け出すってこと?2人で?
 これはもしかして、噂に聞く“お持ち帰り”ってやつ?

 ちょっと待って。こんなにスムーズに誘うなんて、もしかしたら慣れているのかな。そうよね。浅尾さんって独特の雰囲気があって、かっこいいものね。

 え、どうしよう。つまり“そういうこと”だとしたら。私、初めてなのに。初めてが合コンでのお持ち帰りってアリ?いや、ナシ。いくらなんでも、それはナシでしょう。
 キスどころか、男の人と手を繋いだことだってないのに。いきなりそれは、絶対にナシだわ。
 
「……まぁいいや。どっちにしろ、オレは途中で抜けるって最初から言ってあるし。ついてくる気あるなら、10分後に隣のコンビニに来てよ」

 突然の誘いに、どう答えるのが正解なのか考えて沈黙していると、浅尾さんはそう言って立ち上がった。

「悪い、そろそろ帰るわ。明日早いし」

 女子たちが一瞬、驚いた表情を見せる。浅尾さんが言った通り、男性陣はあらかじめ聞いていたような反応だった。

「ごめんね。また機会があれば遊ぼう」

 幹事の男性に会費を払って、浅尾さんはあっさりと帰ってしまった。

 他のみんなは特に気にすることなく、おしゃべりを再開している。途中で帰るのって、普通なの?
 ていうか、本当に行っちゃったんだけど。

 こういうときって、どうしたらいいのかな。トイレに行く振りをして抜け出す?でも、絶対に怪しく思われるよね。
 ちょっと待って、なんで浅尾さんについていく前提で考えてるの?お持ち帰りなんて、そんな軽薄な行為ダメでしょう。それにあの人、ちょっと怖いじゃない。

 ……だけど、この機会を逃したら、浅尾さんにはもう二度と会えないかもしれない。連絡先だって知らないんだから。
 初めての合コンで一切収穫なしだなんて、それも嫌。他の男にはまったく興味が湧かないし、このまま合コンが終わるまで不毛な時間を過ごす?

 気がついたら、一番端にいた男性が私の隣に座っている。なんかいろいろと喋っているけれど、時計ばかり気にしてしまって、まったく耳に入ってこない。そもそも私、この人の名前すら覚えていないんだけど。

「ちょっと、お手洗い行ってきますね」

 浅尾さんが帰って5分くらい経ったとき、思わずそう口走っていた。
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