純情なる恋愛を興ずるには

有乃仙

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未発達なボクらの恋

四ー3

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                  □□□


 そして、
(やっぱ正座なのか)
 純と興は並んで床に正座させられていた。
いつかと同じ状況だが、そのいつかと違うのは、二人の前に立っているのが西町ではなく、この学校の代表者ということだ。場所も校長室だ。
「やっぱり」
 興が小さく呟くが、嫌な予感とはこれを予期してのことだったらしい。
「話では、君たちは見張っているということだったが、なぜ加わっていたんだい?」
 穏やかな口調ではあるが、校長は偉い立場の人という意識もあってか、いるだけでも純らにのしかかる重圧は大きかった。もっとも、興は〝校長〟というだけでなく〝親戚〟というのも加わっているだろうが。
 校長によって校舎に連れて行かれることになった純たちは、校長直々に聞き取りをされることになった。大会が近く、教師たちの手を少しでも和らげようという心配こころくばりかららしいが、生活指導の教師よりも緊張させられる。島山たちも予想外の展開に動じていた。そうして、島山たちを一人一人あちこちの部屋に置き、自分たちが先に聞き取りということで、何故か校長室に連れてこられたのだ。
「それは、俺が悪いんです」
 校長の質問に、純は素直に申し出た。
「島山が危なさそうで、気付いたら飛び出してて殴ってました。すみません」
「――彼らのような素行が良くない者たちの喧嘩なんてものは、そういうものだろう?」
「そうなんですけど……なんで出てったのか、自分でもよく分からなくて……」
 校長の指摘はもっともなことだ。でも純も、言った通り気付いたら飛び出していたのだ。しかも、自分を嫌っている島山相手に。あの時の自分は、もう少し考えないと推測ができない。
「興がいたのは?」
 校長は純の隣に瞳を移した。
「純が危なかったから。俺も気付いたら殴ってました」
 興も素直に認める。
「進んで喧嘩に加わったわけではないんだね?」
「「はい」」
 肯定する二人の返事が重なった。
「そう。それを聞いてひとまず安心したよ」
 校長は微笑を浮かべた。もしかしたら、そこのところが気になったから、自分たちが先に聞き取りになったのかもしれない。ただ、どうして自分も一緒で正座なのかが気になるところではあるが。
「それじゃあ。詳しく聞かせてもらおうかな」
「詳しくも何も、今言った通りだけど……」
 興の言うように、状況を語るなら発言通りだ。他に言いようがない。
「全員から聞いて、合ってるかどうか確かめるんだよ。警察の聞き取りみたいなものだね」
「はあ」
 警察で例えられるくらい、そこまでするらしい。それとも、人数がいるぶん自然とそうなるのか。
「君たちを疑うわけじゃないが、話を合わせられるのも困るからね。別々に聞かせてもらうよ」
「はい……」
「…………」
 純が返事をするのに対し、興は無言で返した。あまりいい展観と見ていない面持ちをしているが、また何か予感でもしたのだろうか。
「じゃあ、まずは興からにしようか」
「……はい……」
 校長の指名に、興は気が沈んでしまっていた。
「君は、どこでもいいから校舎の中にはいるように」
「はい」
 了承すると、純は立ち上がった。
「興はそのままだ。いいね?」
「はい……」
 まるで、説教をされるような気の沈み具合を興はしていた。
「…………」
 校長も、聞き取りだというのに正座を続けさせるなど、親戚の子にも拘わらずなかなかに厳しい。西町も正座をさせていたし、興の親戚は床に正座をさせるのが好きなのだろうか。
 いや、もしかしたら、聞き取りが終わった後、そのまま説教にいくのかもしれない。
 興には悪いが、校長と西町の親戚でなくてよかったと思いながら、純は校長室を出て行った。
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指圧のことは、有乃にとっても何でその情報を得たのか、聞いたことがある気がするなあ……というくらいおぼろげな記憶です
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