物言わぬ家

itti(イッチ)

文字の大きさ
36 / 60

問い詰める

しおりを挟む

 車の中で考え込む4人。これから菅沼に会うのにどんな顔をしたらいいのか。
「取り敢えずこのぬいぐるみとカメラは車に残したままで。ただ、肝心の探す物が無くなった訳ですが、…..どうしましょう」
 祐二がみんなに答えを求める。すると佐伯が、あ、と息を吐くと「そうだ、さっき本村さんが話していて気になったんだけど」と言う。
「なんですか?」
「ほら、カーテンが派手過ぎて安眠出来ないって。あの部屋は確かグレーのカーテンだったよね。オレたちは、あの黒一色の部屋の印象が強くて色々見落としてるんじゃないかな」
 佐伯は祐二たちに言うと、「あの部屋って本当に岬さんの部屋なんだろうか」と不可思議な事を呟いた。

「確かに。菅沼さんに案内されて、何の疑いもなく岬さんの部屋だと思ってました」
祐二がそう言うと、水野も美乃利も「確かにね」と頷く。
「あの部屋の印象で、岬さんの性格が変わった人なんだって思い込んだし、失踪の要因になってるとも思った」
 水野は祐二たちに言った。

「とにかく、カーテンがあるのか探しましょう。ひょっとして、グレーのカーテンに掛け替えて派手なのは仕舞い込んでる可能性もありますからね」
「そうね、じゃあ、とりあえずは確かめてみましょう」
 佐伯と水野に言われて、祐二も美乃利も頷くと、車を降りて寮の入り口に向かって歩き出した。



「こんばんは、遅くに押しかけてすみません」
 菅沼が開けたドアから顔を覗かせた佐伯が言う。
「こんばんは。別にいいですけど…..何を探しているんですか?」
「ご家族から頼まれた物をいくつか。それを持って出ているのか気になったそうなんで」
 もちろん、これは美乃利の嘘。探したかった物はすでにあり、今は派手色のカーテンがあるのかを調べたかった。
「どうぞ」と言って、再びあの部屋に通された祐二たち。

 電気をつけて中に入れば、やはりなんとも言えない気分になる。あの華やかな岬志保がこんな暗い所を好むだろうかと。廃屋や廃墟巡りは別として、普段生活するなら自分の趣味に合ったインテリアに囲まれたいと思うものだろう。
クローゼットを開けてもう一度中の衣類を見てみた美乃利。
「あれ?…..この前はこんな服無かった気がするんですが」と言った。前回は一瞬だけしか中の服を見なかったが、殆どダークカラーというか、おとなしめの色合いが多かった。なのに、今目の前のクローゼットには、佐伯が飲み会の時に見たワンピースが目に付く場所に掛かっている。クローゼットの様子が以前とは違って見えた。

 祐二は、佐伯たちの感じ取った違和感を共有すると、前回ベッドの上に畳まれた衣類があったのを思い出してベッドを見る。
綺麗に整えられていて、洗濯物は無くなっていた。というか、なぜかこの部屋には人の出入りがある気配がした。普通に使われている感じがする。
「この前はチラッと見られただけだったから、見落としてるんじゃないですか?一体何を探しているんですか?」
 菅沼は美乃利の後ろで腕を組みながら訊ねる。前回、もの静かな言い方だった彼女が、今は少し大きめの声で威嚇しているようにも感じられる。その声を聞きながら、美乃利は「テディベアのぬいぐるみです」と言った。
祐二たちはハッとなったが、互いの顔を見合った後で菅沼に視線を送れば、さーっと青ざめていく菅沼の顔が目に入った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『続・聖パラダイス病院』

菊池昭仁
現代文学
『聖パラダイス病院』の続編です。こんな病院なら入院生活も悪くはありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!

オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ランの父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリーだった。 ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。 学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。 当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。 同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。 ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。 そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。 まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。  その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。 こうしてジュリーとの同居が決まった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...