物言わぬ家

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子供部屋に

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 祐二たちは2階に上がると、部屋がどうなっているのか見渡した。
まず見えるのはすぐ前の部屋の扉。その左隣にもう一つの扉。そして左後方に一つ。計三つの部屋が2階にはあったが、廊下の窓から漏れて入った明かりが不気味に静かな空間を照らすと、一同の顔も曇った。
「じゃあ、奥の部屋から見て行きますか」
 祐二が言って、みんなは後に付いた。床がギシッという鈍い音を立てるたび、美乃利は一々肩を上げて水野の服の裾を握った。
佐伯も山里も言葉が出て来なくて、微かな息遣いだけが聞こえる。

 ガチャリ、とドアノブを回して開けた奥の部屋。とはいえ、ここは道路側に面した部屋になっていて、剥き出しの窓ガラスから外の景色が見える。今は夜なので暗いが、昼間は明るく陽の光が入るのだろうと想像できた。
 室内はベッドがふた組。全身の映る鏡があって、箪笥の横に立て掛けられている。床には布団やシーツが乱雑に落ちていて、元々この状態だったのか、それとも誰かが入ってこんな風にして行ったのか分からない。懐中電灯で照らして見える壁や床は築年数の古さを物語る。

「ここ、十何年か前には人が住んでいたんだよね。亡くなった後で家具とか処分する人は居なかったのかな。親戚とかさ」
 水野がため息混じりで言った。
「そういう遺品整理ってお金も掛かるし、いくら親戚が居てもやりたくないでしょうね。」
 祐二は自分が母の遺品を整理した時の事を思い出していた。ダンボール箱をいくつか捨てるだけでも、思い入れのある品を手放す切なさを味わった。未だにタンスなどは処分出来ていない。

「次の部屋に行ってみる?」と佐伯が言って、皆は顔を見合うとそこから出て行く。
 隣の部屋を開けると、ムッとしたカビ臭い匂いに祐二と佐伯は鼻と口を手で塞いだ。
「何これ、この部屋カビ臭い」と、水野は後退り。美乃利も廊下に立ったまま祐二と佐伯を見ていた。
「ちょっと、あれ」
 そう言って山里が懐中電灯を向けた先には、白木で出来た祭壇の様な物があった。何か見たことのない模様の描かれた布が貼ってあり、その前に燭台や白い陶器の器がいくつか置かれている。燭台は溶けた蝋がこびりつき歪な形で、敷かれた布の上には埃が積もっていた。
「ここは窓が無いのか?」
 確かに佐伯が言った通り、この部屋には窓がない。部屋の広さは6畳ぐらいなのに、祭壇の他には隅の方に布団のような敷物が無造作に畳まれたまま。壁にも何か文字の書かれた紙が貼ってあるだけ。ちょっと不気味に感じると、祐二たちは部屋を後にした。

「最後にこの部屋。ちょっと開けるのが怖いですね」と、2階に上がった突き当たりの部屋のドアに手を掛ける山里は言った。
 隣のカビ臭い部屋を想像すると、祐二もそう思う。
「開けます」と言って山里が部屋のドアを開けると、そこは誰が見ても分かる子供部屋だった。
カーテンは千切れているが、ピンクの花柄の模様が目に映る。シングルのベッドに背の低いタンス。机はないが折り畳みのテーブルが脚の壊れた状態で隅に置いてある。そして、開け放たれた押入れの中には、布団やランドセル、ぬいぐるみなどが入っていた。

「ぬいぐるみ、ゲーセンで取るような物じゃないね。ちゃんと手作りしいてあるっぽい。ほら、足の裏に刺繍とか」
 水野がそう言うと、ひとつを手にとって見せた。
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