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彼女は何を見たのか
しおりを挟む雑草が膝まで覆い、家の玄関に辿り着くまでに少し時間がかかる。
敷地の境が分からなくて、取り敢えず山里の車は道路から少し入った所に停めておいた。そこから歩くこと数十歩。美乃利はジーンズを穿いてきて良かった、と苦笑いした。
「懐中電灯持ってきて良かったー。本当にこの辺りだけ空き地になってるんだね」
水野は懐中電灯で辺りを照らすと、肩をすくめながら言った。
「足元、気を付けて下さいね。下が見えないから何が落ちてるか分からないし、不法投棄とかもあって怪我とか気をつけないと」
山里は、先頭に立って玄関の方に進みながら、後ろを振り返りつつ言うが、祐二たちはすでに嫌な予感しかない。雑草の隙間から見える電化製品の残骸とか、木片などもあって不気味さが増す。
「玄関は鍵が閉まってて、勝手口の方にまわるとドアが開いてるんで。こっちです」
山里に言われ玄関の左手に回り込んで行くと、そこだけ草が途切れていて、人の通りがあった様な感じだ。
皆、一様に口を閉ざすと、勝手口のドアノブに手を掛ける山里を見つめる。電灯の明かりが室内に向けられて、ゆっくり段差を上がると山里が足を踏み入れた。その後で、佐伯が恐る恐る踏み込むと、床がギシッと鈍い音をたてた。
「この家って一家心中があったんでしょ?なんか幽霊とか出そうじゃない。山里くんは心霊系のチャンネルもしてるの?」
水野が訊ねると、山里は「してませんよ!忌み地には行きますけど、そういった場所を紹介するだけで、…..だからこの家は来たくなかったんですよ。なのに岬さんがそういう廃墟が好きで。何本か動画は撮りましたけど、俺は気乗りしてなかったんで」と嘆く。
祐二は佐伯に続くと暗い部屋の中を見渡した。
勝手口から入った台所は、生活感をそのままに残して、立て掛けられたまな板はすぐにでも食材を調理する為の様。だが、シンクの中には光を失い錆び付いた鍋が残されている。
最後に部屋に上がり込んだ美乃利は、水野のジャケットの裾をギュッと握り締めながら付いてきた。
「この家の表札とか無かったけど、どなたが住んでいたのか知ってますか?」と、山里に訊ねると「多分、岬さんは知ってたと思いますよ。古い記事とかを調べてたみたい。……あ、そういえば2回目に来た時、2階の部屋から何かもってきてたな」と思い出した様に言った。
「持ち出したって事?」
「ええ、……..俺はダメだって言ったんだけど、何かをバッグに仕舞い込んでました。多分ぬいぐるみっぽい物」
「ええ~イヤだー、気持ち悪いじゃない」
聞いていた水野が思わず叫ぶ様に言った。その声で美乃利もゾッとしたのか、両腕で自分の身体を抱きしめる様に縮こまる。
「岬さんて、本当に掴めない性格だな。あの華やかな外見からは想像も出来ないや」
佐伯は顔を歪めると祐二に言った。懐中電灯でぼんやりと照らされた室内は重い空気に包まれる。
「2階に上がってみます?」と、山里は言うが、皆一様に渋い顔をしたままで。
祐二はフーッと息を吐くと、持っていた懐中電灯を前方に見える階段に向けて静かに歩き出す。
「岬さんが何を見たのか、僕らも行って見るしかないですね」
そういうと、山里を追い越して階段の一段目に足を掛けた。
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