物言わぬ家

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乗りかかった船

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 祐二は佐伯が話しを聞きたそうだと思ったが、明日も仕事だしと、適当にかわして買い物を続けようとした。が、佐伯が山里の人柄を聞きたがり、小声で会話をするのが面倒になる。
「あの、岬さんを心配しているのはわかるんですが、あとは僕らでなんとかしますから」と言うと佐伯から遠ざかった。

「オレ、今日会社の女の子達に岬さんの事を聴いて回ったんですよね」
 そう言うと、佐伯は祐二の背後に立った。
つまり、佐伯の情報も聞かせてくれるという事か、と思った祐二は、「佐伯さんの部屋にお邪魔しても?」と訊ねる。
「勿論ですよ。情報は共有しないと。それに乗り掛かった船ですからね」
 佐伯は嬉しそうに口角を上げると、祐二の買い物が済むのを待った。


 先日も来たばかりの佐伯のマンションに向かうと、玄関のドアを開けて中に入れてくれる。
部屋の様子は昨日のまま。佐伯は取り敢えず着替えを済ませると、買ってきた弁当をレンジに投入してから祐二にお茶を出してくれた。
マグカップにティーパックを入れてお湯を注ぐだけのものだが、ほうじ茶の香ばしい香りがして、祐二の心も和む。

「すみません、弁当食べながら聴いてもいいですか?」
「いいですよ、どうぞ食べてください。お茶、頂きます」
祐二は、目の前で弁当を広げて食べる佐伯の様子を見ながら先程まで一緒だった山里の事を話し始める。

「岬さんは行動力のある女性だった様ですね」
 祐二がそういうと、佐伯も頷きながら「そうらしいですね。まあ、見た目も華やかだし、彼女のやる事に意見をする人はいなかったみたいですよ。うちの課でも岬さんに目をかけている社員は大勢いました。ただ、一部の女子社員からは批判的な意見も」と言う。
「性格に問題でも?それともやっかみとか?よく、女の敵は女って言いますよね」
 祐二がお茶を一口飲んだ後で佐伯に言った。

「そういう事ですかね。上司や同僚に対して凄く気遣い出来て人も良さそうなんですが、インターンシップで来た人には結構不評だったらしい」
「え、そうなんですか?まあ、社員ではないし、彼らも体験入社って感じでくるから……ちょっと厳しいと嫌われるのかも」
 祐二が佐伯に言うと、フフッと笑いながら「そうかも」と返した。
祐二の勤める中小企業には来ないが、大手の企業だと大学生がインターンシップで仕事を学んだり会社の雰囲気を知る場となっている。

「そういえば、菅沼さんにも愚痴をこぼしてましたね。失敗を自分のせいにされるとかって。でも、それで悪く言われたからって、失踪するでしょうか。そんな事を気に病む人柄には思えませんけど」
 祐二は、天井を見ながら岬志保という女性像を思い描いた。インターンに対してどんな態度だったのだろうかと。
「ところで、その山里って人は」と、佐伯が食べ終わった弁当の器を手にして立ち上がると聞いてきた。
 祐二は、佐伯がキッチンに行った後で戻ってくるのを待つと、重い口を開く。

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