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しおりを挟む菅沼紗織は、祐二たちを玄関まで見送ると、みんなが車に乗り込むのをじっと見ていた。暫くそのまま眺めて、エンジンが掛かって動き出すと軽く会釈をして寮の中に入って行く。
「岬さんの部屋、ちょっと驚きました。女性の部屋であそこまで黒で統一する人、居るんですね。オレの部屋でも色はありますよ。あれで気が滅入らないのかな」
佐伯はハンドルを切りながらみんなに言う。インテリアの趣味に口を出すのは悪いと思うが、岬の見た目の印象と違いすぎて不思議だった。
「私も人の事は言えないけど、黒で統一は勇気いるわ。うちはグレーと白も入ってるからね」
水野が言うので、祐二は「水野さんのは、ただの面倒くさがりやなだけです。趣味とは違いますよ」と笑った。
「そういう言い方、奥村くん可愛くない」
頬を膨らませると、助手席に座る祐二の背もたれをトン、と叩く。
フフ、と隣の美乃利の笑い声で、佐伯もつられて笑ってしまった。
車は交通量の多い通りになだれ込み、ビルや華やかな広告が目に入ると水野のマンションに近付いて来た。
岬志保の失踪については何も分からないまま。ただ、やはり大学時代に親交のあった男性を探すしかないという事で、一旦水野のマンションで話し合う事になった。
佐伯は車を戻しに行くという事で、祐二たちと別れて帰ってしまう。
内心、祐二も一緒に帰りたいという気持ちだったが、この状況では帰りづらい。仕方なく水野に付いて部屋に上がって行った。
「取り敢えず何か飲もうか」
水野が上着を脱ぐとハンガーに掛けながら言って、美乃利が「私も手伝います」とバッグを置き水野に続く。
祐二は、そのままポツリとテレビの前の座布団に座ると二人を眺めた。キッチンにいる女性二人の姿が、なんというか平和だな、と思ってしまい、失踪を探るという事実とかけ離れた世界の様な気がした。
「もしも、岬さんの行方が分からないままだったら、この先僕らに出来る事ってあるんでしょうか」
祐二は二人に向かって言うが、水野はコップをトレイに乗せて来ると、テーブルに置きながら「最終的には警察、でしょうね。だけど、その前に彼女は自分の意思で居なくなったわけじゃ無いって事を証明しなきゃ。」と言った。
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