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出ました、好奇心
しおりを挟む水野の家に近づくと、細い路地の手前でタクシーを降りた。
丁度、交差点のところで待っていた水野が、祐二たちに気付くと手を挙げて「こっちー」と声をあげる。静かな路地に水野の声が響いて、祐二はちょっと焦った。
「こんばんは。お世話になります。」と祐二が近寄って声をかける。出来るだけ小声で言ったが、美乃利はにこやかに「すみませーん、夜分に。迷惑をかけてしまって、本当に…….」と、腰を折りながらも大きな声で言った。
「いいのいいの!どうせ独りだから。ゆっくりしてってね」
そう言うと美乃利の荷物を持ってやる。
水野の住むマンションは3階建てで、外壁は白とミントグリーンの綺麗な色合いだった。祐二も来るのは初めてで、水野に付いて行くと2階の角部屋に案内された。
「じゃあ、僕はここで失礼します」と言って、荷物だけ玄関に置いて帰ろうとしたが、「嘘でしょ!帰るつもり?色々聞きたい事あるんだから、奥村くんも上がってよ」と水野に言われてしまう。
心の中で、ハーッとため息をついたが、美乃利の事を考えると、初めて会った人と二人きりも悪いかと思った。
「じゃあ、失礼します」
「お邪魔します」
ふたりは部屋に入ると、荷物を片隅に寄せて座る。
「意外とシンプルな部屋なんですね」
祐二は悪いと思ったが、部屋をぐるりと見渡すと言った。白い壁紙にグレーのソファー、キッチンの家電も黒で統一されているし、どちらかといえば男性の部屋みたいだ。まあ、水野の性格からしたら合っているような気もするが。
「私、バツイチじゃない?引っ越すときに家具とか置いて出ちゃったから、新たに購入したんだけど考えるの面倒でさ。白とグレーと黒なら無難かなって」
テーブルにお茶を出してくれると水野は言った。
「えっ、水野さんバツイチなんですか?!」
驚いた美乃利が目を丸くして訊ねると、「そうなのよ、夫の浮気が原因なんだけどね」と、あからさまに言う。このサバサバとした性格は変に気を使わなくていいが、初めて出会う美乃利に話さなくても、と祐二は思った。
美乃利がなんとも言えない顔をしていると、水野は祐二に向かって「あの話、聞いてもいいかな?」と真面目な顔付きになる。
「あの話って?」
「例のお地蔵様の…….」
ああ、と思い出して美乃利の顔を見るが、お地蔵様と聞いて何の事か分かった様な表情だった。
「水野さんには色々とお世話になってしまって、祐二さんからの手紙で知りましたが、本当にありがとうございました」
美乃利はそう言うと、深々と頭をさげた。自分の家系に纏わる謎を解く鍵となる祖父の姉を探してくれたのは水野。正直、美乃利にとっては衝撃的だったが、知らずにいるよりは良かったと思う。
「美乃利さんの事が少し気になっていたんだけど、お地蔵様はまだそのままなんでしょ?」
「はい、今でも実家に戻った時にはお花を供えたりしますけど、私は何も願いませんから。今のところは平穏に過ごしています。あ、ただ、今回東京に来たのは先輩の行方が分からなくなって、それが心配で来たんです。いつもは年末から戻って来ていたのに、帰って来なかったし。ご両親も心配されてて……」
美乃利がそう言ったので、祐二も「4月になってから会社にも行ってなくて、寮にも戻っていないらしいんです」と言った。
どのみち、美乃利から詳しい話は聞くに違いない。
「それは心配よね、何かあったのかしら。どうせ警察は事件が起こらないと動いてくれないだろうし、出来るだけ自分たちで調べるしかないわね」
「そうなんですよ。それで、明日から知り合いの伝手で探してみようと思ってます」
お茶を飲みながら美乃利がそう言うと、横にいる水野が祐二の顔を覗き込んで「じゃあ、私たちも協力しなくちゃね」と言った。
「……..え?」
首を捻って水野の顔を見る祐二。なんだか嫌な予感が当たってしまったようだ。
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